運命の胎動
第27話です。宜しくお願いします。
活動報告に設定や登場人物のまとめを載せているので良ければどうぞ。
──まだ空が白み始める前、静まり返った本部屋上。 虎威 世界は、誰もいないその場にぽつりと立ち尽くしていた。
昨夜、自分が拾われた子であったという事実。 角の生えた男に"メイソン"と呼ばれたこと。 そして自分の異能力が、本当は別にあるかもしれないという謎。
そのすべてが胸の奥に黒い靄のように渦巻いていた。
「……はぁ」
吐き出したため息とともに風が髪を揺らす。 そんな世界の背後に、音もなく忍び寄る人影があった。
「気配ゼロ、背後1メートル……さすがだな、兄貴」
振り返ると、そこには虎威 蓮二がいた。
「心配しなくてもいい……今は何もしないよ」
相変わらずの無音移動に世界は警戒心を解かない。 しかし、蓮二は穏やかに微笑みながら続ける。
「それより……あの角が生えた男、何者なんだ? 父さんとは何を話していたんだ……って、聞こうと思ったんだけどさ」
一拍置いて、蓮二は目を細めて言った。
「お前の顔を見て、やめておくことにしたよ」
「……たまには兄貴も、俺のパーソナルスペースを守ってくれることがあるんだな」
「フフフ♪ もちろんだよ、弟くん」
「まぁ、当たり前のように今日俺に起こったこと全部知ってる辺り、相変わらず監視してたって考えると、パーソナルスペースはやっぱり守れてないけどな」
「いや、お前のことを今すぐ監禁しないだけ、兄として我慢してる方じゃない?♪」
「……はぁ」
ため息をつく世界だったが、どこかその顔には安心したような色が浮かんでいた。
──場面転換。訓練場。
鈴菜 昇子、丹羽 大我、そして世界の3人が軽い訓練を行っていた。
「リュディア、意外と口の悪さだけだったかも」
昇子が小さく笑いながら言い、大我がそれに応じる。
「筋肉ゴリラ、名前忘れたけど、良い的だった」
「……あのトラウド、強さしか見てない目をしてたな」
世界がぽつりと呟いたその時、先輩たちの姿が現れた。
香坂 柚璃、羽仁 真嵐、鵜飼 真介、栗花落 彩芽、野呂 晴臣。
「おー、英雄様たち。随分と派手にやってきたじゃないか」 鵜飼が軽口を叩き、香坂が表情を引き締める。
「でも、慢心は禁物。次の任務は“新人”だけじゃ済まないらしいわよ」
空気が一変する中、獅堂 声司が姿を見せる。
「遠征任務の準備に入れ。S階級含め、全戦力で動くことになる」
その言葉に全員が息を呑む。 世界はふと、自身の異能力について、そして自分が何者なのかという疑念が再び頭をよぎる。
──場面は変わり、神界。
光の雲海に浮かぶ巨大な神殿。
その玉座に座す男──ゼウスは、眼下の地上界を眺めていた。
「……あの男が、動いたか。実に、鬱陶しい……」
握られた拳から雷が走る。
その前に跪いているのは、黒き装束をまとった6人の影。
七罪──七つの欲望を司る、王クラスの夜。
※ライド(傲慢)はすでに敗北しており、今は6人のみ。
「分かっているな、お前たち……?」
ゼウスの言葉に、6人の七罪は一斉にニヤリと笑みを浮かべる。
「罪を、許して欲しければ。“何を”すべきか……分かっているな」
地上・地獄・神界。三界の歯車が、ゆっくりと音を立てて動き始めていた。
昨日は1話しか投稿できずにすみませんでした。
今日は複数話投稿出来るように頑張ります。




