光を超えて
第23話です。宜しくお願いします。
活動報告に設定や登場人物のまとめがありますので良ければどうぞ。
──燃え盛る瓦礫の山。その中央で、炎を背に一人の少年が立ち上がった。
虎威 世界。
彼の足元には、激しい戦闘の爪痕──焼け焦げた地面、抉れた壁、そして無数の爆裂痕。
その正面には、甲冑をまとった炎の騎士──トラウド・ヘルグリム。 彼の身体からは未だ黒煙が立ち昇り、赤黒い火炎が身体を包んでいる。
「今の攻撃……避けたか」
トラウドが低く呟く。 確かに、世界の身体には火傷の痕が広がっていた。 だがその目には、確かな光が宿っている。
「……勝ちを望むなら、先に“弱さ”を認めろ」
静かに、しかし強く。世界は言葉を紡いだ。
「俺は……そうしてきた“誰か”に、救われてる。だからこそ、俺はもう──折れない」
その瞬間、地面が光に包まれる。
世界の能力《光紋結界》が展開され、足元から幾何学模様が無数に広がっていく。 しかもそれは、ただの防御陣形ではなかった。
「“導きの紋章”──展開開始」
新たな結界が天井、左右、そしてトラウドの足元にも現れる。 すべては誘導式に繋がっており、トラウドの動きに応じて結界が即時移動・再配置される。
「高速制御……! 面白い!」
トラウドが火炎の槍を生み出し、空間ごと灼き払おうと突撃する。
──だが、その瞬間。
「──封鎖」
世界の指先が動くと、トラウドの周囲に結界が閉じる。 動きを止めた一瞬を狙い、地面から“反射式光矢”が跳ね上がる。
ズドォン!!
一条の閃光がトラウドの側頭部に命中し、爆炎が迸る。
「っ……ぐ、ぬ……!」
仮面にひびが入り、炎が一瞬揺らぐ。 しかしトラウドはまだ崩れない。いや、むしろ口元が笑っていた。
「貴様……まだ“芯”を隠しているな?」
「だったら……見せてやるよ、俺の光の全部を!」
叫ぶと同時に、世界の全身からオーラがあふれ出す。
その光は、ただの“防御”ではない。 “殴れる結界”──そう言えるほどに、攻撃性を増した光の矢が、次々と上空から降り注ぐ。
トラウドが突撃してきた瞬間、世界は敢えて一歩踏み込んだ。
「お前が強いのは分かってる……でも!俺の光は、誰かの未来を照らすためにあるんだ!」
真下から展開された結界が反転し、トラウドの背後から追尾式の光矢が直撃する。
「──っ!!」
トラウドの仮面が砕け、甲冑が一部崩れ落ちた。 そして、ついに──
「……見事だ。貴様の光、その矛先に迷いはない……!」
炎の騎士が、膝をつき、静かにその場に崩れた。
──戦いは、終わった。
世界は膝をつき、激しく息を吐く。 額から汗が滴り落ち、結界の光も徐々に消えていく。
「……俺は、誰かに守られてきた。だから今、誰かを守れる強さを……証明したかった」
その言葉は、誰に向けてでもなく、ただ空に投げかけるように呟かれた。
「世界──終わったか」
声がして、振り返ると昇子と大我が立っていた。
世界は少しだけ笑いながら言う。
「遅ぇよ」
昇子が安堵の笑みを浮かべ、大我が拳を突き出す。
「やったな、世界」
「……おう」
3人の拳が、静かに重なった──。
かなり話数を使って描かせて頂きました。
新人みんなの成長が見れたと思います。




