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水華、咲き乱れて

第20話です。宜しくお願いします。

活動報告に設定や登場人物のまとめがあるので良ければどうぞ。


──前話までのあらすじ──


約30日の厳しい訓練を終えた第3部隊の新人たち──鈴菜すずな 昇子しょうこ丹羽たんば 大我たいが虎威とらい 世界せかい──は、異能力の制御と応用に磨きをかけ、大きな成長を遂げた。 その成果を証明するため、3人だけで“君主クラス”が複数潜むという危険任務へ挑むこととなる。


──そして今、彼らは関東南部の廃都市『スモッグシティ』にて、3体の君主クラスのライルと対峙する。


巨大な牛頭の筋肉巨人、ガルマ・モールス。 優雅な羽根を持つ毒舌仮面の女、リュディア・レイヴン。 寡黙な甲冑の炎騎士、トラウド・ヘルグリム。


それぞれが個性的な威圧感を放つ中、3人はそれぞれ1対1の戦闘に挑もうとしていた──。




「君が私の相手?ふぅん……悪くないわ」


毒のように甘ったるい声が空を滑る。


リュディア・レイヴン。 漆黒の翼と鳥の仮面。彼女の周囲には常に細かな羽根のような光の粒子が舞っている。 それはただの飾りではない。


「この“幻羽”に触れた瞬間、君の五感は鈍っていく。そうやって、ゆっくりと潰してあげるのが私の流儀なの」


まるで舞踏のような動きで、リュディアは空中に舞い上がり、羽根の粒子を広範囲に撒き散らす。 その一つ一つが神経を鈍らせ、動きに遅れをもたらすという。


「幻羽……」


昇子は静かに目を細めた。 その空気の揺らぎ、水分の流れ、すべてを読み取っていく。


「悪いけど……“触れさせない”から」


そう呟いた瞬間、昇子の周囲に無数の“水分”が発生する。 湿気、大気中の霧、さらにはリュディアの羽根に含まれる微細な水分までも。


「《水分爆発モイスチャーボンバー》」


高温による瞬間的な膨張。 爆発が次々に連鎖し、リュディアの“幻羽”をすべて弾き飛ばす。


「なっ──!?」


思わず距離を取るリュディア。その優雅な身のこなしが、一瞬だけ乱れる。


「……ふん、制御に自信があるようね。でもそんなもの──私の前じゃ無意味よ。」


リュディアが驚愕を漏らすが、昇子はすでに次の手を打っていた。 彼女の足元、舞い散る水蒸気の粒子が一斉に蒸気爆発を起こす。


「この程度、戦場じゃ通じない……!」


爆発の勢いを利用して跳躍する昇子。 その手には、水蒸気を固めた“刃”のようなものが握られていた。


「喰らえッ!」


振り下ろされたその斬撃は、まさに水と熱の暴力。 仮面の片側が砕け、リュディアの頬に紅い筋が走る。


「……ふふっ……やるじゃない……」


リュディアは仮面の破片を払い、口元を吊り上げる。


「でも、これで私の“遊戯”が終わると思わないことね」


だが──その時、昇子の足元が再び爆ぜた。 そこに残された水分は最初から伏線だった。


爆風が再びリュディアを襲い、翼ごと吹き飛ばす。


「な……っ!?」


吹き飛ばされた先にも、霧と水蒸気の罠。 無数の微爆発がリュディアの羽ばたきを封じ、地面へと叩き落とす。


「認識してなかった場所から……爆発……!」


リュディアが地を這うように立ち上がろうとしたその瞬間、昇子の冷たい声が届く。


「もう終わりにしよう。あなたが空を舞うには、この地は湿りすぎてる」


最後の一撃。


高度な制御による一点爆発が、リュディアのすぐ足元で炸裂する。 爆風が彼女の動きを完全に封じ、地に伏せさせた。


──リュディア・レイヴン、戦闘不能。




「ふぅ……終わった……」


昇子は額の汗を拭いながら、小さく息をついた。 その瞳には、確かな成長の証が刻まれていた。


──戦いは、まだ終わらない。


大我と世界、それぞれの戦場も今、火蓋が切られようとしている──。




とうとう20話まで来ました。

ここまで見て頂いてる方が居るだけで本当に感謝です。

ありがとうございます。

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