激突、交差する意志
第17話です。宜しくお願いします。
活動報告に設定や登場人物のまとめがあるので良ければどうぞ。
十日間の訓練は、まさに地獄のようだった。
基礎から始まり、異能力の反復、精神の持久、連携シミュレーション──それぞれが己の弱さと真剣に向き合ってきた日々だった。
そして今、朝日の特設訓練区域に、再びその面々が集まっている。
S階級の3人──黒鋼一漢、真野銃菜、姫宮真癒が前に立ち、訓練生たちを見渡した。
「今日からは“模擬実戦”だ」 黒鋼が静かに言い放つ。
「ここからは、力の出し方だけでなく、“力の合わせ方”も問われる。生き残るための実戦を、ここで学べ」
「チーム戦でいっくよ〜♪」 銃菜が笑顔で手を振る。
「本気でやらないと、全部バレるからね♪」
「怪我は回復できる。でも、命は一つだけ。油断しないで」 姫宮の穏やかな声が緊張を和らげた。
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訓練生たちは、4チームに編成された。
Aチーム:世界、栗花落、伊良部
Bチーム:大我、羽仁、篠原
Cチーム:昇子、鵜飼、御剣
Dチーム:柚璃、香坂、野呂
この日の模擬戦は、AチームとBチームの対戦から始まる。
「いよいよか……」 世界が小さく呟く。
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【Aチーム:開始前】
伊良部陸──第8部隊、B階級。
筋骨隆々で笑顔が眩しい男。 「任せてくれよ、ドーンといくぜ!」
異能力《重剛拳》 拳を叩き込んだ相手の質量を上げ、地面に縫いつける。
栗花落依音は小型の道具を腰に下げながら、冷静に装備を確認している。
世界は《光紋結界》の展開範囲をイメージしながら呼吸を整えていた。
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【Bチーム:開始前】
篠原希沙──第6部隊、A階級。
無口で冷静な少女。観察力が異常に高く、瞬間ごとの状況判断に長けている。
異能力《心音模写》 相手の行動の“リズム”を一度だけ模倣し、先読みしてトレースする。
羽仁真嵐は静かに端末を操作している。空間把握と味方の支援に特化。
大我は手首を回し、脚部を豹に変化させて地面を蹴った。
「今日は一発、やってやる……」
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【模擬戦 開始】
サイレンが鳴り響いた。
Aチームが先手を取る。世界が即座に《光紋結界》を展開。
「前を固める!」
伊良部が雄叫びと共に突撃。
「ドリャアアッ!!」
栗花落が側面から閃光弾を投げ、視界を攪乱する。
だが──
「甘い」 篠原の視線が世界の足の動きに重なった。
次の瞬間、世界の剣──いや、結界の内角を読んで動いた。
「ッ!」
世界の防御の内側に、篠原の掌が突き出される寸前、大我が突っ込む。
「世界、下がれッ!」
豹の脚による加速で世界を弾き、篠原と交差した。
「……なるほど」 篠原の口がわずかに動いた。
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伊良部がそのまま篠原へ肉弾戦を仕掛けようとした瞬間、世界が制止の声を上げる。
「待て、まだ囲めてない!」
「やっちまえばいいんだよ、細けぇことはあとだ!」
ドゴォ!
伊良部の拳が地面を割るが、篠原は一歩後退してかわす。
→その間に、羽仁が索敵データを大我へ送る。
→大我がそれに気づかず別ルートに飛び出す。
→Bチーム側も一瞬連携ミス。
「おい、篠原!もう少し連携して──」
「あなたの突撃、無意味だった」
「はあああ!?何だとッ!?」
モニター越しに黒鋼が叫ぶ。
「連携とは意志の共有だと言っただろうが!!」
真野が笑いながら言葉を被せる。
「でもでも〜♪ちゃんと喧嘩できる仲間っていいよね〜♪」
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戦闘はいったん中断。
世界が歯を食いしばりながら小さく呟く。
「……俺、一人で全部やろうとしてた……」
伊良部が肩で息をしながら。
「悪ぃ……つい突っ込んじまった」
大我も遠くを見つめながら言う。
「……冷たいけど、アイツ(篠原)……ちゃんと見てるんだな……」
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夕日が訓練場を染める頃、訓練の一日目が終わりを迎える。
姫宮が空を見上げる。
「……来るわ。また、きっと。あの“罪”たちは」
こういう連携って難しいですよね。
もし自分がいて異能力も使えてってなっても頭回らなくなる自信しかないです。




