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兄弟と、痛みと、これから

第15話です。宜しくお願いします。

活動報告に設定と登場キャラクターのまとめがあるので良かったら是非どうぞ。



夜が明けきらない空の下、第3部隊のメンバーは拠点へと搬送された。


あの圧倒的な王──ライドとの戦い。


その余波は肉体にも精神にも深く刻まれていた。



---


治療室。


世界はまだ眠っている。


ベッドの周囲には、治療を終えた昇子・柚璃・羽仁・大我が、それぞれの思いを抱えながら座っていた。


そこに、姫宮真癒が再び姿を現す。


「みんな、落ち着いてきたみたいね」


彼女は微笑み、胸の前で手を組む。


再び展開される《祝福祈環グローリア・サークル》。


光の輪が仲間たちの身体を優しく包み、完全には癒しきれなかった深部の傷や精神的疲労をも静かに溶かしていく。


「……ありがとう、姫宮さん」 昇子が静かに礼を述べる。 「前に見た時も思ったけど……やっぱりすごい力ね」


柚璃も頷きながら、ほっとしたように微笑む。 「これがS階級の力かぁ……ありがたいよ」



---


その後ろから、獅堂声司がゆっくりと入ってくる。


いつもの堂々とした姿とは違い、少し顔を伏せている。


「……悪かった」


全員の視線が彼に集中する。


「こんな任務に、お前たちを送り出して……結果的に、王クラスにまでぶつけてしまった」


「俺の見通しが甘かった。想定の範囲じゃなかった……本当に、すまなかった」


深く、頭を下げた。


沈黙ののち、柚璃がぽつりと口を開いた。


「でも、蓮二さんがいなかったら……あたし達、本当に終わってた」


昇子も続ける。 「そう。隊長が悪いってわけじゃない……私たちも、もっと強くならなきゃいけないだけ」


大我は無言で頷き、ベッドに寝る世界をちらりと見た。


獅堂は少しだけ顔を上げて、短く、安堵のように微笑んだ。


「……ありがとう。そう言ってくれるだけで……救われる」



---


一方、別室のベッド。


目を覚ました世界は、天井を見上げていた。


(蓮二……来たんだな) (また……俺の前に現れて、全部、持っていった)


兄が自分を守るために戦った。


それは分かっている。 だが、感じたのは「恐怖」だった。


あの禍々しいオーラ。 あの狂気に満ちた執着。


(……ありがとう、なんて……言えなかった) (だけど、俺は……)


拳をゆっくりと握る。


(誰かの“守られる”だけの存在には……もう、戻らない)


その心の誓いだけが、世界の中に小さく灯った。



---


時間を少し遡る。


──戦場、決着直後。


蓮二は、崩れ落ちたライドの瘴気が霧散していくのを見届けながら、静かに息をついていた。


世界は、意識を取り戻した直後だった。


「蓮二……」


「よっ、世界〜♥ ちょっと心配したぞぉ〜?」


「……ありがとう。助かった」


世界のその言葉に、蓮二は目を細めて笑った。


「今さら感謝とか言わなくていいって〜……どうせ俺が勝手に来たんだし?」


「でも……」


「でも〜〜〜……なに? まさか、離れててくれとか言わないよねぇ?」


世界が一瞬、言葉に詰まる。


「……蓮二。俺は、蓮二の弟だ。でも……」


「でも?」


「少し……距離は、置かせてほしい」


蓮二は、しばらく黙って世界を見つめていた。


やがて、ほんの少し、寂しそうに笑った。


「そっか……まぁ、いーや」


「それでもさ、世界は俺の弟でしょ?変わらないじゃん?」


「ま、兄ちゃんはいつでも見守ってるから……♥」


ふわりと、蓮二は振り返り、そのまま戦場から去っていった。


その背中を見送った世界は、重く息を吐いた。


(……やっぱり、怖ぇよ)


(でも、あれが“兄”なんだ)



---


数日後。


朝日・本部、最高会議室。


虎威玄道を中心に、数名のS階級幹部が顔を揃えていた。


神代鏡華、風間忍、姫宮真癒、鷹峰迅。


各自が資料に目を通しながら、沈黙が支配している。


「……ライド。王クラスの夜が現れた」


神代が静かに口を開いた。


ライルの王クラスは、古代神ゼウスによって創られ、七つの感情核を持つ存在。七罪──“ナナザイ”と呼ばれている」


風間が頷く。 「それが目覚めた。誰かが封印を……意図的に解いたか、あるいは──」


「これで終わりじゃないってことね」 姫宮が目を細めた。


虎威玄道が、深く静かに言う。


「ここから先は、少年たちの“試練”では済まん」


「これは──もう、戦争だ」



七つの大罪って色々な小説や漫画にホントに多く使われててもうちょっと考えたらいいのに…と思っていたら自分も使ってました。

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