俺の世界になにしてくれてんの〜?
第14話です。宜しくお願いします。
活動報告に設定や登場キャラクターのまとめがありますので良ければどうぞ。
瘴気に沈む戦場。誰もが動けず、ただ終わりを待つような時間の中。
その沈黙を、狂気が裂いた。
「俺の、俺だけの、俺の為の世界に──なぁにしてくれてんの〜?」
高らかに、艶やかに、甘く歪んだ声。
瓦礫の山からゆっくりと姿を現したのは、虎威蓮二だった。
禍々しい紫黒のオーラが渦を巻き、腰には血液の入った小瓶が無数にぶら下がっている。
その笑顔は、限りなく嬉しそうで、限りなく異常だった。
「死ぬだけじゃ、終わらせないよぉ〜?」
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「……蓮二……」 世界が呻くように名を呼ぶ。
その瞬間、背筋を冷たいものが撫でた。 寒気。
兄が来た。 それだけで、恐怖が走った。
ライドが蓮二を見下ろすように立ち、眉をひそめる。 「……何だ? 貴様は……」 (気配が……まるで感じ取れん……これは……)
だが次の瞬間には、冷笑。 「まあいい。貴様も私の許しの糧となれ」
そして、ライドが瞬間移動のような高速移動で一気に間合いを詰める──
──ガンッ!!!
拳が止まった。
蓮二が、片手でその一撃を受け止めていた。
「ありがとな♪ お前から来てくれて、楽できたわ」
にやりと笑い、ナイフでライドの腕をスッと切る。
血液が飛び散り、小瓶に吸い込まれる。
「そんな攻撃、全然効かぬぞ!!」 ライドが叫ぶ。
「効かせる気? あるわけないじゃ〜ん♪」
蓮二が腰の小瓶を取り出し、パチンと指を鳴らす。
「《完全変身》」
ライドの姿に部分変身。
右腕だけが、ライドそっくりの瘴気に染まる。
そのまま倒れていた公爵クラスの一体に触れ、無理やり操作。
「ほいっと、代わりに前立っといてね〜」
盾代わりに突き飛ばすと同時に、別の小瓶を投げて割る。
「お次は、我が愛しの世界♥の血で──っと」
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世界の結界能力を半分だけ再現。
ライドの瘴気が拡がるのと同時に、逆に霧が晴れていく。
「……何……? あの瘴気を……制御している……?」 ライドが明らかに困惑した表情を見せた。
蓮二は笑う。 「“兄”ってのはなぁ、弟のためならなんでも出来んのよぉ♪」
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戦いは激化。
蓮二はライドの攻撃をかわしながら、トリッキーに立ち回る。
爆破を誘導して回避、瘴気の流れを逆操作、斬撃と衝撃波を血液の組み合わせで再現。
異能の連結による多重応用──それはもはや、芸術にすら見えた。
「お前、誰の血使ってるか分かるか〜?」
「弟のだよ〜〜ん♥」
ライドがついに苛立ちを露わにする。 「なぜだ……なぜここまで……貴様は……」
蓮二はぴたりと動きを止めた。
そして、狂気に染まった瞳で、真っ直ぐに言い放った。
「決まってんだろ──弟が、好きすぎて、たまんねぇんだよぉ!!♥」
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ライドの瘴気が暴走。 暴風となり、辺りの瓦礫を巻き上げる。
蓮二の表情が、少しだけ冷たくなる。
「……オレの世界に、指一本でも触れた罰──ちゃんと受けてもらわないとね」
小瓶を一気に砕く。
世界、大我、ライド──3つの血を融合し、構築された一撃。
光と瘴気と筋力強化が混ざった“結界穿通破撃”。
それは、真っ直ぐに、ライドの胸を貫いた。
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瘴気が崩れ、夜の支配が静かに消えていく。
昇子、柚璃、羽仁、そして世界が、蓮二の姿を見つめる。
誰もが声をかけられない。
蓮二は、そっと倒れかけた世界のもとへと歩み寄る。
「……世界、世界ぁ……♥ まだ、痛い?」
「っ……来るな……」
「照れんなってぇ〜♥ 兄弟だろ〜?」
笑顔はあくまで優しく、だがその優しさが何より怖かった。
狂気的な愛は純粋な悪をも勝るくらい怖い時があります。




