蹂躙と傲慢
第13話です。宜しくお願いします。
活動報告に設定と登場キャラが書かれているので、よければどうぞ。
廃墟の中心に立つ、王。
ライド。
その存在を前に、空気が歪む。重力が狂う。
目の前で“操られた公爵クラス”が、瘴気の糸に引かれながら、再び動き出す。
「っ……くるよ!」 世界が叫ぶと同時に、四方から黒い影が跳躍した。
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昇子が水分を操り、モイスチャーボンバーを炸裂させようとする。
「湿度操作──最大火力で……!」
しかし、ライドの瘴気が空気中の酸素濃度を歪ませ、爆発は不発に終わる。
「えっ……? 爆発、しない……?」
直後、操られた夜が背後から突進し、昇子を瓦礫に叩きつけた。
「ぐっ……!!」
ライドの声が響く。
「力なき者が、力を振るう振りなど──笑止千万」
昇子はその言葉に、心の奥を抉られたような錯覚を覚える。
「わたし……何も……できてない……」
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柚璃も火花を起こそうと両手を構える。
「じゃあこっちは、超近接火花で──ぶっ飛ばすよっ!」
だが、その一帯にだけ“瘴気の壁”が張られ、起爆点が崩壊する。
「……爆発が、逃げた……!? そんなバカな……っ!」
直後、背後から鉄骨が飛来し、柚璃の右腕に激突。
「うっぐぅ……!!」
骨が軋む音。右腕が垂れ下がる。
「腕……やばいかも……これ……っ」
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世界は結界を構えようとする。
「光紋結──くっ、また崩れる……!」
展開した瞬間、瘴気がその情報構造を崩し、結界がねじれて消える。
「……結界が効かない。俺の力じゃ……」
操られた夜が迫る中、世界は咄嗟に飛び退いて仲間を庇うことしかできない。
「……守ることすら、できねぇのかよ……」
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羽仁だけが冷静に動こうとする。
「……動きの軌道が読めないわけじゃない。だが、タイムラグが存在しない……」
だが、考えた瞬間。
「……っ」
頭の中に、微かな“熱”が走る。
思考が干渉されている。
「なるほど……これは、“思考そのもの”を読み取って……抑え込んでいる……」
羽仁が、唇を噛む。
「考えることすら、縛ってくるのか……これが王……」
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一人、また一人と倒れ伏す。
昇子は瓦礫に半身を埋め、柚璃は肩で息をして震え、世界は膝をつき、羽仁は手を握りしめるだけ。
ライドは、ゆっくりと歩き出す。
「理解できたか? これが、王という存在だ」
「力を振るう必要などない。ただ、在るだけで──貴様らなど、屈する」
その声は、地を這うような静けさと共に、全身を侵食するようだった。
「さあ、誰から──殺してやろうか」
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世界が、崩れる意識の中で必死に前を見る。
「っ……まだ……まだ、やれる……俺は……」
だが、その声が、空しく霧に溶ける。
──その時だった。
“気配”が変わった。
誰も気づいていなかった“瓦礫の影”のひとつ。
黒い、影のような人影。
「…………」
歪に微笑むその口元。
まるで、すべてが“面白くて仕方がない”と言わんばかりに。
──視線が世界を捉えた。
王クラスを名乗るのも伊達じゃないですね。




