傲慢なる支配者、ライド
第12話です。宜しくお願いします。
活動報告に設定やキャラクター載せてますのでそちらも良ければお願いします。
崩れた廃墟の空間に、沈黙が落ちる。
──はずだった。
倒れたはずの“夜”たちが、ピクリと身体を震わせた。
「うそ……倒したはずじゃ……」 昇子の声が震える。
「……匂いが、変わった」 大我が顔をしかめ、鼻を利かせる。 「腐ってる……血と、燃えた鉄と……人の……」
その時だった。 ビルの最上階、崩れた屋上に現れた漆黒の影。
長いコートを風になびかせ、赤と黒が混じる異様なオーラを放つその男は、ゆっくりとこちらを見下ろしていた。
「……我が名は、ライド」
その声は、空間に直接響くように聞こえた。
「傲慢の罪を背負いし、王のひとり」
「“七罪”……その存在を、貴様らが知ることは叶わぬだろうが──」
「感謝しろ。お前たちを、“我が許し”への供物としてやる」
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羽仁が目を見開いた。 「……王……クラス……」
「いや、違う……明らかにオーラの量も質も……異常だ」
昇子と柚璃が息を呑む。
「そんな……何この圧……足が……動かない……」
ライドはゆっくりと右手を掲げた。
倒れ伏していた公爵クラスたちの身体に、赤黒い紋様が浮かび上がる。
瘴気が地を這い、彼らの四肢へと絡みつき、糸のように引き上げられるように立ち上がる。
> 《傀王律》
「これは……操ってる……いや、死体そのものを……」 羽仁の声が震えながらも冷静だった。 「命令を“刻んだ”……異能力……」
「まさか……こんな力が……」 世界が咄嗟に結界を張ろうとする。
しかし、空間そのものが歪み、瘴気が結界の構造を崩してしまう。
「っ、張れない……?」
ライドは静かに、片足を一歩踏み出した。 その瞬間、空間が“ねじれた”。
「……!」 世界が目を見開く。だが視えなかった。
その場にいた誰よりも速く、ライドは大我の前にいた。
「まずは──一人♪」
大我は即座に反応した。
「《ボディアンスロ》──アルマジロ化……っ!」
しかし、その防御を貫くほどの拳が、大我の腹に突き刺さった。
「ぐはっ……!!」
鋼鉄のような腕が、内臓を揺さぶる。 大我の身体が吹き飛び、鉄骨の柱を折り曲げながら、瓦礫の山へと叩きつけられる。
「大我くんっ!!」 柚璃の叫びが、張り詰めた空間に響く。
大我は意識が薄れる中、歯を食いしばった。
(これ……ガードしてなかったら……死んでた……) (怖い……これが……死ぬって……こと……か……)
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昇子が硬直する。 「ダメ……怖くて……足が……」
世界も震える手で結界を再構築しようとするが、ライドの瘴気が構造を崩す。
「……っ……張れない……防げない……」
羽仁だけが、唯一理性を保っていた。
「皆、落ち着け……あの拳の軌道、ほんの一瞬だけ“軸が揺れた”」
「……操作系の癖がある。ならば、隙がゼロではない」
その言葉に、世界が顔を上げる。 「……通じるのか……?」
ライドはくすりと笑った。 「……抵抗するのか。ならば、次も──“殺す”ぞ」
公爵たちの操り人形のような身体が、ぴたりと全員こちらを向いた。 瘴気が脈動し、跳躍準備の動作。
「囲まれてる……」 昇子が唇を噛む。
「動けるか?」 羽仁が問いかける。
「……動くしかないわ」 昇子が構えた。
「じゃあ、爆発させちゃうかぁ……!」 柚璃が歪な笑顔を作る。
「……大我の分も、やってやる……!」 世界が歯を食いしばって叫んだ。
跳躍する公爵たち。包囲される5人。
真の戦いは、今ここに始まる──。
ライドの名前ってプライドから来てます。しょうもない語呂合わせですね。すみません。




