地獄に眠る理由
第10話です。宜しくお願いします。
――地獄界。
黒き大地に、溶岩が脈打つように流れる。
その中心、崩れかけた王座に座る一人の男。
銀の長髪、高くそびえる角、折れた黒い羽根。
彼は細く鋭い眼光で、水晶玉を静かに見つめていた。
玉に映るのは、異世界の少年――虎威世界。
「……立派に育っているのだな……メイソン」
彼は静かに、寂しげに微笑んだ。
「こちらも……頑張らねばな……」
誰にも名乗られぬ男。 だがその眼差しには、どこか深い情が宿っていた。
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――地上界 第3部隊拠点・朝。
訓練場に集められた第3部隊の面々。 獅堂の声が響き渡る。
「新しい任務が下った。第21区域の廃墟ビル街に、公爵クラスの夜が多数発生している」
ざわ……と空気が揺れる。
「行くのは──世界、大我、昇子。それに香坂と羽仁の5人」
「ま、また爆発できるのね!」 柚璃が跳ねるように喜ぶ。
羽仁は眉を寄せながら短く返す。 「十数体……正確なら、確かに異常だ」
昇子が手を挙げて質問する。 「公爵クラスって、改めてどれくらいのレベルなんでしたっけ……?」
羽仁が静かに応える。
「夜のランクはこうだ」
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【夜のランク一覧】
騎士クラス:一般人でも対処可能な低級個体
総裁クラス:武装警備隊レベルの装備で討伐可能
伯爵クラス:D階級複数で対処
公爵クラス:C階級複数、またはB階級1人で討伐可
君主クラス:B複数、A階級で単独討伐可
王クラス:A階級複数、またはS階級1人対応
皇帝クラス:理論上の存在。確認例なし
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羽仁:「今回、確認されているのは“公爵クラス”十数体。常識的に言えば、1つの区域にこれだけの数が集まるのは異常だ」
獅堂:「初の実戦連携任務だ。お前ら、気を引き締めろ」
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――第21区域・廃墟ビル群。
乾いた風が吹き抜ける瓦礫の街。 かつては活気のあったビジネス街だったが、今や崩壊した鉄骨と焦げ跡だけが残る。
世界が光で足元を照らし、仲間の進行を支える。
「ここが……任務地か」
大我が鼻をクンと鳴らし、しかめっ面をする。 「夜の匂いが濃すぎる……五体どころじゃねぇな」
羽仁が壁に触れ、ゆっくり語る。 「ここは、3年前に放火事件があった。ビルは崩れ、死者は30名以上……犯人は捕まっていない」
昇子:「だから……こんなにも“夜”が……」
彼女が呟くと同時に、ビルの奥からぞろりと“それ”が現れた。
甲冑を纏い、人間の形を保ったまま黒い瘴気を纏う。
十数体の“夜”たちが、沈黙のまま出現する。
柚璃:「あっちゃー……あれ全部、公爵クラス?」
羽仁が表情を引き締める。
「確認……十五体以上。これは通常の発生ではない」
昇子:「こっちの気配に気づいてる……来るわ!」
世界が結界を構えようとしたその時。
前に出たのは、羽仁だった。
「……油断するな。これは──本物の戦場だ」
夜たちが、一斉に動き出す直前。 5人の隊員が、静かに構えを取った――。
因みに神界、地上界、
地獄界の3つの世界に分かれています。
冒頭で出たのは地獄界になります。




