番外編 ヴェルリアSide Ⅲ
「お前剣術苦手なんだろ?」
そうリランに声かける。今朝はなぜフィナーズさんが来ているの疑問に思ったが…。
リランは少し驚いたようで、間を開けてから答えた。
「心配ですか?」
想像し得なかった答えに思わず鼻で笑う。
「流石に3日で辞めるのは可哀想だからな」
「…」
不躾に思えるほど、じっくりと見られる。あまり向けられることのない視線にたじろぐ。
「何だ…」
「心配してるんですね!」
「は?」
どんな思考回路をしていたらそうなるのか。
「何を言って…」
何か言い返そうと思って口を開くが…何も浮かばない。
「ヴェル様〜!!」
「げっ…」
レティノーラの声が聞こえてきた。
どうやら時間切れらしい。
「まあ、いい」
俺は腰を下ろしていた机から降りる。
「ま、頑張りなよ…せんせ」
どうやらリランはフィナーズさんと仲がよいようだったし…これもリランを見極めるいい機会だろう。
「先生は強いんだな!」
試合を終え帰ってきたリランとフィナーズさんにレナルドがそう声かける。頬を紅潮させ、興奮しているようだ。
「でも剣術とかは詳しくないのでそこはお父さんに聞いてくださいね」
汗一つかかず、涼しげな顔でそうリランは返す。
「なんで負けたんだよフィナーズさん…」
何でだ…剣術は苦手だと言ってただろ。
それなのに近衛騎士団長に勝つとか…信じらんないだろ。
俺は不満気にフィナーズさんを見る。
フィナーズさんも困ったように顔をかく。
「なんでって言われてもなぁ、俺はリランに勝ったことないし…」
言われた言葉の意味を上手く飲み込めない。
(まじか…)
「勝ったことないって今まで何回か戦ってるってことですか」
ナリアの質問はみんなの意見の総意だろう。
「ん?そうだぞ。なかなか手強くてな」
あっけらかんと言い放たれた。
「学園に押しかけるとかやめてくださいね」
驚きの静寂の中、2人だけがテンポよく会話を繰り広げていく。
「その、まあ、俺は保護者だし?」
「関係ないです」
「むう、そうか。あっ、でもプリンは家まで取りに来いよ」
「ええ」
ん?プリン?何がどうなったらそんな話になったんだ。
「プリンって、どういうことだ?」
レナルドの突っ込みは当然だと思う。
「いや、何か奢れって言うからバルドナにプリン作ってもらおうかと思って」
「何でわざわざ家まで行くんです?」
エディールも突っ込む。
「バルドナが会いたいって言ってたからな。いやぁ、懐かしいな。バルドナはリランに懐いてたから」
「バル兄さんが?」
これも意外だ。バルドナさんは物静かで、思慮深い性格で、レナルドとは真逆のタイプだ。誰かに懐く先輩はイメージ出来ない。
「ああ、リランは名付け親だしな」
…さっきから、情報が濃すぎる。本人たちは軽く話しているのが、また温度差を感じる。
「えっ、先生て何歳なんです…?」
「えと、今年で32ですね」
「「………!!!」」
もう、今日で一番驚いた。