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番外編 ヴェルリアSide

今回の担任はどんなヤツなのか。

かろうじてジェシカの知り合いだと聞かされているだけ。

(前の担任はクソだったからな)

前の担任ジョビタン・ダッグラドは子爵家出身でプライドの高く、目に見えて媚を売ってくるやつだった。

俺にすり寄ってくる人間は多い。

特にジョビタンは酷い方だった。まず貴族と平民に対する態度の違い。

あからさま過ぎて見ていて気分が悪い。

リュースやエディールなどはよくアイツの雑用を押し付けられてた。

そして女子に対する言動。

男尊女卑の思考が強いのか女子というだけで下に見ている感じだ。それに気持ち悪い目で舐め回すように見てくるとレティノーラも愚痴をこぼしていた。

アイツは外面だけは良いようで、学園の教授に取り入りほぼ、コネで入ったらしい。

そうでなければジェシカあたりが弾いているだろう。

何より煩わしかったのは、アイツの娘を俺に自慢してくるとこだった。

もう二十歳を超えていて、売れ残ってるということに危機感を抱いているらしく娘の方も積極的だった。

ねちっこい視線や口調、行動に精神疲労が溜まっていった。

何より年が離れすぎてるし、派手な女は嫌いだ。

親子揃って心根が透けて見えて、気持ち悪い。


段々とクラスの中でも不満が募り、とうとうヤツを追い出す作戦が決行された。

簡単なことだ。

アイツの普段の行動を他の先生方に見せればいい。

作戦は思ったよりも簡単に成功し、呆気ないものだった。


ジョビタンが抜けたため1学年の残りの学期は担任を担当していない先生方が交代で来た。

まだ、大人に対する不信感が残っているのか、みんな信用出来ない先生に対しては警戒心を持って接していた。


そんなこんなで2学年に上がり、新たな担任が正式に決定したらしい。

俺もそのことを知ったのはわずか三日前だった。

「今回の担任はどんな人だろうね」

エディールがにこやかに言うが、目の奥が笑っていない。エディールは割と苛烈で、相手にそれを悟らせないタイプ…。いざとなればまた担任の排除に動くだろう。

「そうですよ!しかも新任の先生らしいじゃないですか!」

俺の近くに座っている、ヘルザが言う。ヘルザは伯爵家の次男で実質的な被害には遭ってないが、ジョビタンに対する不満は人一倍あった。

「また、ジョビタンみたいだったらみんなで追い出そうぜ!」

レナルドがそう言う。その言葉にみんなが頷く。

そして一斉に俺を見た。

「新しい担任は学園長の推薦らしい。その点に置いては一応信用出来る」

「確かにね…でも、分からないよ?」

エディールの言葉にみんな同調した。

「じゃあ試せばいいんじゃない?」

そう声を上げたのはナリアだ。

「最初のホームルームで、怒らせればいいのよ。そしたらどんな人かある程度分かるわ」

ナリアの案は受け入れられ、その実行役にヘルザ、レナルド、リュースが選ばれた。 


そして当日、新たな担任が教室に入って来た。

「みなさん初めまして。今日からみなさんの担任になる、リリラン・ヴァーメインです」

新しい担任はあまり年の変わらなそうな女だった。

人好きなするような笑顔でみんなの顔を見回していた。

「先生はいつまでいるの〜?」

リュースが仕掛けた。

「ジョビタンみたいにすぐ辞めるんでしょ」

ヘルザが言う。それにクラスのみんなが笑う。

「今度は何ヶ月続くか賭けようぜ!!」

レナルドが言う。また、それにみんなが笑う。

担任の顔は驚きに満ちているようだったが、まだ笑みを浮かべている。なかなかに手強いらしい。 

「おい、みんな先生が困ってるじゃないか」

そういった時、さも救いを見つけたとばかりに期待の目で担任が視線をよこしたのが分かった。

「まあ、みんなの気持ちも分かるけどね」

「「「あはははははは!!」」

だが次の瞬間張り付けていた笑みも無くし、驚きに固まっていた。

その後も気丈に振る舞っていたが、少し萎縮しているようだった。

エディールと目配せする。

今回の担任はジョビタンみたいなクズじゃないだろう。

クラスからもそう言った雰囲気を感じる。

もういいかと思いつつ、いまだに涙目で出席を取っている担任に喝を入れようと声を掛ける。それが決定打となった。

「はっ、情けない。いい大人が何怖気づいてるんだよ」

担任は下を向き震えだしたので、流石に言い過ぎたことに気づき立ち上がった時、確かな魔力の奔流を感じた。

疑問に思ったときはすでに担任の魔力が爆発していた。

泣きながら何かをつぶやいている担任は魔力を上手く制御するのを忘れているらしい。

(何なんだ…!!この魔力!?人間じゃないだろ!!)

思わず悪態をつく。ビリビリとした波動を感じ、俺でも悪寒を感じるということは中には言葉を発せないクラスメイトもいるはずだ。

まずいと思ったが、担任はジェシカがなだめにかかっており、ひとまずは大丈夫そうだった。

どうやら落ち着いたらしく魔力が収まっていく。


担任が顔を上げた。

そこではたと気づいた。

(目の色が変わってる?)

先程までは緑色だった目が微かに光りを放つ青色に変わっている。

(もしかして…)

その後のジェシカの説明により疑問は確信に変わる。

(もしかしなくても、破滅の御子の血筋か)

髪色は黒ではないが、色彩が変わる瞳はフリージア家の直系に近いという証だ。

信用出来るやつかもしれないとその日思った。



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