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挑むもの

投げたコインが宙を舞い床に落ちる。

その瞬間地面を蹴り肉薄する。剣を交えた一瞬フィナーズのいかにも脳筋らしい笑みが見えた。嬉々として、それでいて猟奇的な笑み。

幾度も剣を交差させる。

(つば迫り合いでは埒が明かなそうね)

30回くらい剣を交えた後そう考える。

一回距離を取るために後ろに飛ぶ。一拍も置かずにフィナーズは突っ込んでくるが上へ跳躍し避ける。

勢いを利用しそのまま上から剣を振り下ろす。瞬時に反応したフィナーズも剣を振り上げた。

しばらく力を拮抗させどちらも動かない。

(馬鹿力ね)

「やっぱ馬鹿力だな!」

何やら嬉しそうにフィナーズが言う。

乙女に向かってなんだその言い草は!少しばかりの意趣返しと、ふっと力を抜きフィナーズがバランスを崩したところで横から胴へ叩きつける。

「くっ…!」

また阻まれた!!見かけによらず力に頼りきりじゃないから割と防がれてしまう。

まあ、近衛騎士団長という肩書はそう安いもんじゃない。

気を取り直しつつ死角への連撃を加える。

(まだ防がれる!なら…)

私は連撃のスピードを上げた。少し苦しそうにフィナーズが顔を歪める。その頬には赤い血が薄く飛ぶ。模擬剣と言えどもこんなスピードで切られればかすり傷の一つや二つ簡単に出来る。

さらに力を込めフィナーズを弾き飛ばす。

迎撃の準備が整う前に畳み掛けようと地面を蹴りフィナーズの前に躍り出る。

「…!」

その時魔力の波動を感じた。

「炎よ!!」

フィナーズが腕を振り下げる。この脳筋は家柄的に魔力も強い。いかんせん魔法の才能はなかったらしいが簡単な基礎魔法くらいなら撃ててしまうらしい。その威力は一般的な基礎魔法からかけ離れている。この距離で防げなければ戦闘不能もおかしくはないほどだ。

でも…

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切迫した魔法を模擬剣で切り裂く。

「な!お前ずるいぞ!」

「何言ってるんですか…あなたも出来るでしょ」

「お前のは無理だ!」

別に実際に剣で魔法をぶった切った訳ではない。そんな人外は目の前にいるフィナーズぐらいだ。

私は単に模擬剣にかなり強めの魔力を纏わせ、魔法を相殺させたのだ。

フィナーズが魔法をぶった切るのを見て着想を得た代物で結構気に入っている。

一度仕切り直しに二人で向かい合う。

何も言わずとも両者同じタイミングで地を蹴る。全力で振り切った私の剣によってフィナーズの剣が折れた。

勝負ありだ。

一息つこうとしたところでフィナーズが叫ぶ。

「まだだ!」

なんと拳一つで向かって来た。思わずガラ空きの胴に一発入れる。すると面白いくらいにフィナーズが飛んでいった。が、結界に阻まれ地面に落下する。

(まあ、あの人タフだし大丈夫よね)

ろくに確認もせず私は折れた模擬剣を拾いに行く。これは怒られないよね?たまに折れることぐらいあるだろう。

「いやぁ、さすがだなリラン!」

いつの間にか回復したらしい。

肋骨くらいいっちゃったかもと思っていたが大丈夫なようだ。

「今度なんか奢ってください。プリンでもいいですよ」

「ああ、いいぞ。あっ、バルドナに頼んだらいいぞ!アイツは料理が得意だからな」

「次男くんですか?」

「そうだ、お前の付けてくれた名前だったな」

そう談笑しつつ生徒たちのもとに歩いてゆく。


結界を解除し、少しフィナーズより遅れて生徒たちの所へ辿り着く。

「先生は強いんだな!」

一番最初にレナルドがそう声を掛けてきた。

「でも剣術とかは詳しくないのでそこはお父さんに聞いてくださいね」

取り敢えず念押しをしておく。私のはほぼ力技だしね…。

「なんで負けたんだよフィナーズさん…」

何やらヴェルリアが不満気に呟く。

「なんでって言われてもなぁ、俺はリランに勝ったことないし…」

生徒たちの間に衝撃が走る。

「勝ったことないって今まで何回か戦ってるってことですか」

ナリアちゃんが目を見開いて尋ねる。

「ん?そうだぞ。なかなか手強くてな」

「学園に押しかけるとかやめてくださいね」

一瞬フィナーズが動きを止め視線を逸らす。

「その、まあ、俺は保護者だし?」

「関係ないです」

「むう、そうか。あっ、でもプリンは家まで取りに来いよ」

「ええ」

私たちの会話に目の前でレナルド君がはてなマークを浮かべていた。

「プリンって、どういうことだ?」

「いや、何か奢れって言うからバルドナにプリン作ってもらおうかと思って」

「何でわざわざ家まで行くんです?」

エディール君がそう訊く。

「バルドナが会いたいって言ってたからな。いやぁ、懐かしいな。バルドナはリランに懐いてたから」

「バル兄さんが?」

「ああ、リランは名付け親だしな」

確かに懐かしい。あんなに小さかったあの子ももう17歳に、なっているのだろう。

「えっ、先生て何歳なんです…?」

エディール君、それは禁断の質問と言うやつだよ。でも、まあ私は実年齢と肉体年齢は比例していないから普通に答える。

「えと、今年で32ですね」

「「………!!!」」

みんな驚きで声が出ないようだ。

「先生、今度美容法教えてください」

いち早く衝撃から回復したナリアちゃんがそう言ってきた。

美容法…魔法で眠ること。なんて洒落にならないわね。


その後フィナーズを仕事に戻らせ、生徒たちを教室に帰らせた。

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