表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

模擬戦 VS近衛騎士団長

第二訓練場に着くとステージの中央でフィナーズは剣を振るっていた。

生徒たちは少し離れたところにあるベンチに座ったり、その周りに立ったりしている。ヴェルリアはレティノーラちゃんとともにベンチに座っている。

「よしっ」

気合を入れ直すために、髪をハーフアップから一括りにする。

「お待たせしました」

「おう、武器は何にするんだ?」

「…模擬剣じゃないんですか」

流石に駄目だろう、真剣は。ただでさえこの訓練場を使うのには数日前の予約が必要なところを、空きがあったのと、無理を言って使わせてもらってるのだ。

レナルド君との模擬試合はクラス用の訓練場で事足りるため予約なんぞしていない。

それにこの人は手加減なんかせず全力で挑んでくるだろう。そんなんじゃこのステージは保たない。

「まず、ルールを決めましょう」

「…?お前そんなこと気にするタイプだったか?」

今のはムカッときた。まるで私が常識無いみたいに聞こえるじゃないか。

まあ、この距離なら生徒たちには聞こえてないだろう。魔法もちょっぴり使う予定なので結界を張って遠ざけている。

「ここで全力で戦ったらステージが壊れますよ」

「それもそうか」

納得したように顎に手を当てて頷いている。

「まず使うのは模擬剣。魔力で強化すれば問題ないですよね?」

「おう!任せとけ!」

「じゃあ、次に試合の勝敗は降参とどちらかが言うか、あなたの剣が折れた時、あと、どちらかが戦闘不能になった時ですね」

もし私の剣が折れたとしても魔法があるので戦闘は継続だ。

「いいぞ、じゃあ速くやろう!」

「待ってください」

フィナーズは不思議そうな顔をする。

「まだ何かあるのか?」

「私のことどれだけ知ってます?」

「あ?う〜ん」

しばらく逡巡した後口を開く。

「名前はリ…なんだったっけか?リランってのは分かるんだけど長かったよなぁ」

「リランでいいですよ」

確かに私の名前はここらでは珍しい響きだ。

「あとは…そうだ!学園長んとこの坊主と結婚したろ!?」

「そうですけど、そのこと黙っててくれません?」

「なんでだ?」

どこまで話すべきだろうか。そこまで深く言わずとも大丈夫な気はするが。

「えと、ヴェルリアはわかりますよね?」

「ああ、リランの息子だろ?」

「ええ…だから」

「あっ、そうだ!」

突然拳をポンと手のひらに打ちフィナーズが叫ぶ。

「お前死んだんだろ?なのにどうして生きてんのかって聞こうと思ってたんだよ」

(今さらなの…)

思わずため息をつく。普通は忘れないだろう。

でも、まあ今回ばかりは助かったとも言える。もし他の誰かだったらその場で言われてたかもしれない。

「死んだことになってたんです。なので私が生きているってことは秘密にしていて欲しいんです」

「うん、まあ、よく分からんが秘密にしてほしいならそうするぞ」

「ありがとうございます。あっ!誰かにどうして私と知り合いかと問われたらリランの親戚だからと言ってくださいね」

「ん?お前のことを、その…本人じゃなくて親戚だってことにするってことで合ってるよな?」

「そうです!」

やけに物わかりが良くて助かる。

「よし、じゃあやるぞ!試合」

「ええ」

もしかしたらただ模擬戦を早くしたかっただけかもだけど…。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ねえ、どっちが勝つと思う?模擬戦」

「ん、そりゃあフィナーズさんだろ」

隣でべったりと引っ付いてくるレティノーラを鬱陶しく思いつつエディールの問いに答える。

「じゃあ賭けない?」

「お前アイツに賭けるのか?」

「そりゃあ、大陸級だしね」

確かに魔導師としてはレベルが高いのだろうが相手はこの国最強と謳われる近衛騎士団長フィナーズ・フォン・ガルフファウンだ。フィナーズさんは魔法を剣で切ることが出来るし、今回は剣術中心の模擬戦だ。有利なのは間違いなくフィナーズさんだろう。

「まあいい。乗ってやろう」

「じゃあ、賭けの内容どうする?」

「…」

何がいいだろうか。しばらく頭を悩ませる。

「なら、負けたやつは学園長の部屋にイタズラにしよう」

「いいの…?」

「まあ、何とかなるだろ」

怒られはするだろうが、一線を越えなければ大丈夫なはず。

「あっ、始まるみたいですわ」

レティノーラがそう言ったので視線を向かい合う二人に向ける。

どうやらコインを試合の合図に使うらしい。リランが投げたコインが宙を舞い、そして床に落ちる。


次の瞬間俺たちは目を見開き、驚きの表情を浮かべた。


「み、見えた?今の始まり」

「…見えませんでしたわ」

意外にレティノーラは動体視力が良い。エディールもなかなかなはずだが、俺も含めて皆二人の剣がいつ交差したのか分からなかった。

もうコインが落ちたと思った瞬間には二人は肉薄し、幾度も剣を交差させていた。

「す、すげぇ!!」

一人驚きよりも興奮が勝るのか、レナルドが声を上げ一瞬たりとも見逃せないとばかりに目を開いている。


気を取り直し改めて二人を観察し始める。

フィナーズさんは力技もさることながら、剣技も上手い。どちらかと言うとリランの方が力任せのような気がする。

(これは…) 

「これ、どっちに転ぶか分からないね…」

いままさに思っていたことがエディールも呟く。

でも、やっぱりフィナーズさんが勝つだろうと心の底で俺は思っていた。

所詮は魔導師だと。剣士有利なこの場でフィナーズさんの負けはないと。

それが覆されるなんて少しも考えていなかった。


暇な日があれば不定期で週に数回投稿するやもしれません。(* ̄(エ) ̄*)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ