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自己紹介(再)


「では出席を取りまーす」

 昨日と同じ言葉を発した。今日は記念すべき教師就任二日目。悲しいかな、昨日見せた失態を無かったことにすべく何事も無かったかのように教壇の上でにこにこと笑うことしか出来ない。

 生徒たちの反応はと言うと…敵意は昨日より和らいでいるけどあんまり歓迎した感じではない。というより警戒されている気もするが…まあ、大丈夫だろう。中には興味なしといった感じに窓の外を見ている子もいる。

 (でも出席は取らなきゃ…じゃないと私人の顔覚えるの苦手だし)

 名簿表を開き名前を読み上げていく。

 生徒たちの名前はほとんどが貴族なので長ったらしい。

 ――――――――――――――――――――――――――――

 ヴェルリア・ディディ・エルタシア

 レナルド・フォン・ガルフファウン

 ヘルザ・フォン・カルナン

 レティノーラ・フォン・ヴァナペス

 ヴィアナ・フォン・チェリーカ

 ベスカ・フォン・シェナエズ

 ナリア・ギュラター

 リリベルカ・ジェカ・ガナシュタイン

 リュース・レーガン

 シャルール・リアン・レーナン

 レナーシェ・プリス・キュアマリナ

 ルビネル・プリス・フェニシャス

 エディール・ユベトア

――――――――――――――――――――――――――――――

 以上が生徒たち13人の名だ。ほとんどがちらっとこちらに目線を向けるだけだったが初日に比べれば大きな前進といえるだろう。ちらほら聞き馴染みのある家名の子もいる。

「はい、では改めまして昨日からみなさんの担任になりましたリリラン・ヴァーメインです。よろしくね」

 やはり生徒たちは塩対応。だがまだ出会ったばかり。まずはお互いを知っていくことが大切だと私は思う。なので

「今日はみなさんと距離を縮めるために、答えられる範囲でみなさんの質問に答えたいと思います」

 そう私が言った瞬間わずかにざわつき出す生徒たち。出だしは順調なようだ。

「挙手した人のから順に答えます」

「じゃ、は〜い」

 いち早く反応したのは青みがかったグレーの髪にロマンスブルーの瞳の男の子。エディール・ユベトア君だ。実はエディール君の親とは友達なので彼の名前を間違うことは無いだろう。

「先生は何の授業持ち?」

 意外としっかりした質問に、なるほどと思う。確かに伝え忘れていた。

「私が教えるのは魔力操作、魔法実技が主で、後はみんなの授業の補助かな」

 魔力操作と私が口にした時なぜだかみんなの顔が一瞬強張ったように感じたけど…気のせいか。

「他に何かある?」

「はい」

 礼儀正しい声の主はヴィアナ・フォン・チェリーカ君だ。きっちりとした金髪に水色の瞳をしている。彼はクイッと眼鏡のブリッジを上げてこちらを見据える。

「ヴァーメイン先生は第何位の魔導師階級をお持ちですか?」

 どこか挑むような声音。どうやら相当の自身があるらしい。

 (それにしても初等部時代のヴァルそっくりね)

 この学園は13歳からの入学で初等部・中等部・高等部に分かれており、卒業は遅くても22歳のときだ。ちなみに飛び級制度はないが、試験を受ければいつでも、卒業できる。私は17の中等部の時で卒業した。

 ヴァルとは学園時代の学友で現在は宰相をしているそう。

 それと、魔導師階級とはこの大陸全土で使われている基準で下は十位から上は大陸級だ。三位より上だと王宮お囲いの魔導師になることもできる。

「私は大陸級です」

 私は最高位の大陸級保持者だ。十年眠っていたが衰えてなどいない。

 なかなか滅多に出会えないから、とくとご覧あれといったふうにドヤッとする。ヴィアナ君は開いた口がふさがらないようで呆けている。

「はん、本当だかな」

 そう言い放つのは、ご察しの通り私の息子ヴェルリア…ふふふ、そろそろかと思っていたわ。私は昨日の件で正面から息子と仲良くなるのは難しいと確信し、方針を変えることにした。ズバリ尊敬できる先生となること。ここはアピールチャンスだ。

「ふふ…もちろん証拠の小刀を持ってきたわ」

 私が空間魔法から取り出したのは小型のナイフ。柄には漆黒の宝石が嵌まり、鞘にはかの高名な伝説の大魔道士の星紋が刻まれている。疑いようのない大陸級魔導師の証だ。

「ミスリルと黒炎竜の牙で打ったナイフよ」


「ウソだろ…マジだよ」

「というかどこから取り出してた?」

「…………」

 ざわめきが大きくなる。


「他に質問ある人は?」

「はいっ!!」

 可愛らしい声が聞こえてきた。 ベスカ・フォン・シェナエズちゃんだ。金褐色の髪はおさげでキリッとした印象の瞳は深い海の色だ。

「先生のことはなんて呼んだらいい?」

「え…?う〜ん、リラン先生、かな」

「わかったわ、じゃあリラン先生は得意な魔法は?」

 私の得意な魔法…。ぶっちゃけ何でもできる。苦手と言えば、光だけども、得意と言われると…悩むな。

「炎かな…」

「私と一緒です!あっ!今度教えてください!!」

 今この教室で最も邪気のない瞳でこちらを見つめる少女。ちょっとした砂漠のオアシスだよ。

「いいですよ」


「剣術は出来るか!?」

何やら期待の眼差しでこちらを見てくるのはレナルド・フォン・ガルフファウン君。銀髪に赤い瞳のいかにも武術が得意ですって男の子。近衛騎士団長の三男坊である。

余談であるがこの国の王位継承権一位は我が子ヴェルリアである。第一にこの国の現王は子供がいない。それに加え愛妻家で妻は正妻一人だけ。次に王位継承権が高いのは勇者の家系であるのだが現当主の息子は二人でそのうちの一人が現在旅をしているため必然的にもう一人が次期当主となる。

勇者の家系というのは遥か昔の暗黒期に現れた勇者の血筋であり爵位は持たず王家に忠誠は誓っているが絶対服従はしない家系である。

次期当主は変わった人で野望など持ち合わせてなく王位継承争いに参入することはない。

それがなぜヴェルリアの王位継承権に繋がるのか。

それは単純にヴェルリアの祖父が元国王と元勇者の家の嫡男だからである。

私と現国王は従兄弟なのだ。

フリージア家の特殊さからそのことは伏せられている。表向きは勇者の家の元嫡男の孫だからとなっている。

ヴェルリアと少しでも繋がりを持とうと同じ時期に子供を産んだ貴族家は多い。だがしかし、ガルフファウン家は違うだろう。

(あそこは夫婦仲が良すぎだし、何より脳筋だしなぁ)

家族以外に何が好きかと問われれば勝負と答えるほどの脳筋だ。

勝負しろーと私を追いかけ回してたとしても奥さんに陣痛が来たと報告が来た際は愛刀をほっぽりだして馬に跨っていった。私はわざわざガルフファウン邸までその愛刀を届けにいった。その時生まれたのは次男だったか。なぜだか私が来名付け親になった。

三男坊であれば家は継がず騎士団にでも入るのだろう。

「剣術は得意じゃないけど、模擬試合くらいなら出来るわ」

「よし!じゃ明日な」

「へ…」

きっと父親に似たのだろう。他人の都合なんざ気に留めない。今頭の中には勝負の二文字しかないだろう。

他に質問はないかとあたりを見回してると何やらウズウズとしている少女と目が合った。

ナリア・ギュラター…大手商会の娘だ。栗毛の髪と茶色の瞳の気弱そうな子だ。意を決したのか手を挙げ質問してきた。

「あの!先生は好きな人いますか」

教室中の視線が集まった気がする。特に女子からの視線がすごい。やはり年頃の女の子はこの手の話が大好きなのだろう。

「いますよ好きな人」

照れも恥じらいもなく言う。これでも1児の母である。乙女らしさを出したとこで何の需要になるのか。

「きゃあ!告白はしましたか!」

「告白はしてないなぁ」

割と踏み込んでくる。これが最近のガールズトークの距離感なのか。

「そんなんじゃ婚期逃しますよ先生!」

「逃す以前に無理だろ」

刺さった。今のは大分奥まで来たぞ。そんなシラーって目で見られたらお母さん泣いちゃうよ。

お母さんどうして結婚できたのー?って聞かれてるようなものだ。

「あれ?先生指輪してない?」

そう目敏く見つけたのはエディール君だ。

「本当だ!?」

ナリアちゃんも大きく目を開く。そうだ私はちゃんと結婚してます!

「私は既婚者です」

左手の薬指につけている指輪を見せるように顔の横に持ってくる。

「まじか…」

割と本音そうなヴェルリアの言葉に心の中で血反吐を吐き蓄積ダメージにより私は惨敗した。






書いている途中で画面を下にスクロールしたら初めからになってしまった…保存って大事ですね。

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