◆エピローグ
「───そういうわけで魔女狩りを開始して下さい」
元騎士団長のエピックはアイエンド王国の宰相となった。やけに顔が青白くなっていて口調も丁寧になっている。各地から集められた領主たちは不思議に思いながらも指示に従った。
犠牲を伴いながら神を討った騎士団。その騎士団長が宰相となり、王となったはずの貴族は怪我をして休養中だと言う。王城で働いていた多くの貴族は巨大な狼に殺されてしまったが、まだ数人は生き残っている。その者たちも顔は青白くなっていた。同じく王都にいた兵士たち。何故か表情が固く、また顔色も青白い。仕事ぶりは前よりも組織的になっていた。そして宰相エピックの両隣には若い男女が一人ずつ座っている。新たな騎士だそうだ。男はナーヴ。女はナウといった。
「皆さんで魔女認定委員会を設置して下さい。魔女は姿も子どもから老人、あらゆる姿に変化できます。そして魔法だけではなく知能も人並み外れても高いです。そんな人物の情報を探す組織です」
「わかりました。それに該当する者を捕らえれば良いですか?」
「いいえ、怪しい人物はすぐに殺して下さい。もしかしたら家族や友人こそが魔女で当該人物を操っている可能性も捨てきれません。魔女は用心深いですからね」
「家族や友人も殺すのですか?」
「当然です。魔女が神と共に何をしたか知っているでしょう。いたずらに全ての生命を消滅できるのですよ? ほんの僅かな躊躇であなたたちもその家族も一瞬で消されることになるかもしれないのです」
確かに、と思い始める貴族たち。
「だから魔女の疑いがあれば迷ってはいけません。我々人間にはそれしか対抗手段がないのです。そして、もし殺しても死なない魔女がいたらすぐに報告して下さい。この最強の騎士たちが対処しますので」
貴族たちがナーヴとナウに目を向ける。この若者たちがそんなに強いのかと。
「このお二人は王直属の騎士です。私が百人いても勝てません」
そんなにか。だがエピックが言うならそうなのだろう。彼の強さは皆が知るところだ。
貴族たちは解散して魔女認定委員会の設置に取り組む者、領地に帰る者などそれぞれが動き始めた。エピックは二人の騎士と共に古城へと向かう。入り口から転移した先には一つの棺桶を挟んで二人の吸血鬼がいた。
「終わったかエピック」
「はい、シオン様。すぐに魔女狩りは行われていくでしょう」
「あとは騎士団ね。こっちも進めないと」
「はい、メア様。眷属の兵士たちを人間の中に紛れ込ませております。いずれ育っていくでしょう」
「上位の者を十騎士とするが良い。そこを目指して研鑽させるのだ」
シオンが十騎士の草案を出す。
「お、いいねそれ! 俺たち四天王がいるから実質六騎士か。俺は序列三位だな」
ナーヴがシオンに賛成する。
「私もいいと思うわ。ナウはどう?」
メアがナウに尋ねる。
「ん……」
「かしこまりました。ではそのように進めましょう。強い騎士はレベルが上がればダンジョンで吸収します。ルナ様がお目覚めになるまでにできる限り───」




