◆エピローグ
ビス王国、王城にて。
「陛下、どうなりましたか」
「うむ、プールイ領はギルアバレークに押しつけた。これで同盟も強固なものになろう」
帰国した将軍アラントとビス国王ジーラ・ビスは王の私室で向かい合っていた。
元は、プールイ領を奪還する代わりに同盟を結ぶという話だった。イクスの森の件も片付けてもらった上で。同盟を結ぶだけでいいなら良い条件だと思っていたが、新たな問題が出てきた。
───ギルアバレーク軍が強すぎたのだ。
イクスの争乱を収めたのは、《魔人殺しの弟子》だという。単独でアスピ族四十人を殺害し、さらにダンジョンを踏破したという。それがまだ子どもだというから驚きだ。
さらには兵士団。千人で五千人の軍を一方的に壊滅し、その後は城を吹っ飛ばして更地にした。
「あの《白い悪魔ジローニ》。ふざけた口上を述べたと思ったらあっという間に城が粉々になりました。その後なんと言ったと思われますか?」
『将軍、死体の処理が楽でいいだろ。ハハハ』
「《魔人殺し》に《白い悪魔》か。絶対に敵にまわしてはいかんな」
───その後セント王国は世界初の民主主義国、セント共和国となった。現状、交流はビス王国のみ。
このセント王国、そしてビス王国とエンパイア王国。さらには十六年前の雪辱を晴らしたプールイ領。まとまりのなかった大陸の中部地方は、徐々に歩みを揃えていくことになっていった。その中心にいるのは新たな英雄、《魔人殺しのアーク》である。
第二章 完