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ギルアバレーク戦記  作者: 推元理生
第一章
31/112

◆エピローグ



 ギルバレダンジョンの出入り口には新たに検問所が建設されていた。ギルドの職員が常勤しており、ダンジョンに潜る冒険者のサポートを担っている。

 建物には牛の魔物と剣の紋章の入った旗が立てられており、背筋を伸ばして立っていた見張りの兵士が声をあげた。

「そこのパーティ、待て!」

 ダンジョンの出入り口から見慣れない一団が現れた。男と少年と女。

 金属鎧を身にまとった初老の男は、白金の大盾を背にして大剣を腰に下げている。少年は感情の一切感じられない表情をしており、銀色の外套に黒い細剣を腰に下げていた。そして、女は何故かメイド服を着ていた。

「失礼、ダンジョンに潜られたのはいつですか? こちらに記録が見当たりませんが」

「三年くらい前だ」

「俺は十四年ほど前かな」

 何を言っているんだ? 兵士はそんな呆れた表情を浮かべたが、そのまま職務を続けていった。

「それではお手数ですがギルドカードを確認させていただきたい。マーク二等兵、ギルド職員をここに」

「はっ!」

 兵士の一人が走っていくと、すぐにギルド職員を連れて戻ってきた。

「それではギルドカードを拝見します。えーっと、A級? ジローニ? 登録がないですね。こちらは、C級の……ディア? まさか、あの《魔人殺しの弟子》?」


 ディアたちは兵士の案内で冒険者ギルドに向かっていた。

「十四年も経つとずいぶん変わるんだな」

 ジローニは驚いていた。石畳の敷かれた通りには街灯が設備されており、多くの店が並んでいる。

「三年前からも大分変わっている」

 何故かゴロツキがいない。そして、女子供が普通に歩いている。そもそもギルバレには兵士などいなかったはずだ。


「ディアーッ!」

 発展した街並みをディアが興味深く見ていると、小綺麗な服を着た男が走ってきた。服装は変わっていても、ボサボサ頭と無精髭は変わらない。ディアの前まで来ると、膝に手をついてハアハアと息切れをしている。

「ディア……! 無事だったんだなぁ!」

 男は涙目になって嗚咽を漏らす。

「よう、アーク」


 ───その声を忘れた日はなかった。


「え……、あんた。まさか、そんな……」

「アーク、ジローニが生きていたから連れてきた」

「本当に……、ジローニなのか?」

「ああ、なんだか立派になったじゃないか、アーク」

「う、ううっ、ジローニ、あああああ……! 生きていたのかよぉ、二人揃って、なんなんだよぉ!」

 アークは涙も鼻水も止まらなくなる。今までずっと張り詰めていたものが、一気に崩壊したのだ。

「ジローニ……、あんたが死んだと思ってから、オレはずっとくすぶっちまって……」

「うん」

「毎日酒浸りで、でもディアを弟子にしてから、あんたの言葉が蘇ってきて、オレはあいつの居場所を作ろうとして、この街を変えようとして……」

「そうか」

「ディアは死んじゃいねえ、必ず帰ってくるはずだって信じて……、オレは……!」

「よく頑張ったな、アーク。さすが、俺の弟子だ」

「ううう! ジローニ……、ジローニ!」

 膝をつき涙腺が崩壊するアークの肩に、ジローニはそっと手をあてた。その光景を眺めながら、

「アーク、良かったな」

 そう言ったディアの顔は───

「え……」

「ディア……? お前……」


 ───たしかに微笑んで見えた。


 顔面が液体だらけのアーク。見開いた目のジローニ。二人の時間は止まっていた。


「じゃあ俺はこれで」

「では私も失礼します!」

 踵を返して歩きだすディア。ハルもそれに従っていく。

「え?」

「は?」

 しばらく動けずに、ディアたちの後ろ姿を眺めるアークとジローニ。

「待て待てーっ!」

 我に帰った二人は、ディアを追いかけて走っていった。



 第一章 完



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