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ギルアバレーク戦記  作者: 推元理生
最終章
107/112

◆第十八話 純血種との死闘 1



「よう、いらっしゃ───」

 ナーヴが口を開いた瞬間だった。


 ───その片目に剣が突き刺さる。

 エルフィンの不意打ちだ。まだ誰も戦闘態勢の整っていない中で、最大限に魔眼を光らせて飛びだしていた。

 純血種三人が現れたとき、エルフィンは一瞬でナーヴに目をつけた。自分よりはるかに強い。だが、他の二人に比べればまだいくらかマシだ。それでもまともな攻撃は通用しないだろう。剣が体を斬ることさえできないかもしれない。

 それならば、唯一攻撃が通りそうなのは口内か眼球しかない。口はあの牙が邪魔だ。なら、やることは一つ。魔眼を全力で光らせれば、一瞬の隙くらいはできる。そこまでを一秒で考えたエルフィンは、僅かな瞬きをしたナーヴに捨て身の一撃を与えた。


「痛って!」

 ナーヴは即座にエルフィンに爪を突き刺した。その背中から抜き手が飛びだしている。

「ジローニ……、頼む」

 ───そう言い残してエルフィンは、死んだ。

「いてて、いきなり不意打ちかよ。こっちが喋っているってのに」

 レベル2000のナーヴは片目の視力を失う。こんな時に治癒できるナウはもう味方ではない。エルフィンはレベルが200ほどであるが、その中でできる最高の仕事をした。

 その不意打ちに気を取られていたメアにブレスが襲いかかる。それを見たセラがさらに追い打ちの魔法を放つ。

【集中】───

 その魔法がメアに届く瞬間、ディアは静かな世界の中でシオンに斬りかかる。流石にレベル8000。ここしかないタイミングの奇襲に反応する。だがディアは傷を与えることができた。〈魔剣黒凪〉で。

〈純血種吸血鬼 レベル7008〉

 レベルが1000近く削れている。セラを斬ったことで魔剣のレベルも上がっているのだろうか。それなら勝機はある。


「おい、不意打ちばっかじゃねーかよ。普通、一言二言喋ってから始めるもんだろよ」

 片目の視力を失くしたナーヴが戯けたように言ったが、もう油断はない。最初で最後のチャンスだったのだ。

「エルフィン……、すごい男ね」

「ああ、たいしたやつだった」

「これで負けたら僕らほんとに合わせる顔がないよ」

 ───ナーヴ対ジローニ、ハグミ、トギーの戦いが始まる。


  *


「ナウ、あんた裏切ったのね」

「ん……」

 ブレスと魔法を食らったメアはいつもの余裕はなくなっていた。効いていない筈がないのだ。

「殺す前に理由を聞いていい?」

「アイを殺そうとして逃した……」

「え、五百前の話? 逃したのは仕方ないけど、アイなんていても仕方ないでしょ。ルナ様には私たちがいるんだから」

「ルナ様はアイに会いたがっている……」

「ふーん、ルナ様のためってわけ、ね!」

 ヒュッとメアの姿が消えてナウが吹っ飛んだ。そこにメイド姿のハルが〈悪魔のハルバード〉を叩きつける。片手で止めるメア。だが、またしてもセラの放った炎の龍が襲いかかった。

「チッ、あんたも魔物でしょ! なんで人間の味方してんのよ!」

「妾はテイムされている従魔ぞよ。ご主人様の味方をするのは当たり前ぞよ」

 ───メア対ハル、セラ、ナウの戦いが始まる。


  *


「ふむ、人間とは思えない速度だな」

 自分の腕についた刀傷を見てそう言ったシオンが霧に包まれる。

「ん? これは魔法か?」

 やはり元素魔法が効かない。セラにも効かなかったのだ。レベルの問題だろうか。

【集中】───

 静かな世界で、ディアは斬りかかる。霧の中からシオンの目が赤く光った。ヒュッと移動するシオン。魔剣黒凪を手で掴んだ。刀を動かせない。ディアは力で負ける相手は初めてだった。シオンは掴んだ手に力を入れるが、

「これで折れないのか。丈夫な剣だな」

 ディアは刀を引き抜いた。わかっていたことだが圧倒的な差を感じる。しかし、その差は縮まったはずだ。

〈純血種吸血鬼 レベル5980〉

 このまま斬り続ければ、勝てる。

「ん? レベルが……、減っている?」

 シオンに気付かれた。

「人間、お前何をした?」

「……」

「そうか、その剣だな」

「……」

「ルナ様に頂いたレベルを……、削ったな、貴様!」

 シオンの目が赤く光り背中から羽が生える。体がムキムキと大きくなり、獣のような顔に変化していった。

「グオオオオ!!」

【集中】───

 静かな世界でコウモリの魔人となったシオンが駆けだしてくる。かわして斬りたいが間に合わない。この世界で自分より圧倒的に早いのだ。ディアはステルスベアの外套で防御する。

【集中】が解けると外套は切り裂かれていた。腕には爪の痕。

「【ヒール】」

「ほう、回復までできるのか」

 シオンは余裕そうだ。今の攻撃で刀傷を与えられなかった。このままでは何度やっても斬る前にやられてしまうだろう。その前に【集中】が使えなくなってしまう。ディアは魔剣黒凪を鞘にしまい、【収納】から薬瓶を取り出した。

「ポーションかね? 無駄だよ」

 ディアは霧を発生させてシオンを包み込む。

「またこれか。お前の魔法は効かないと───、ゴフッ」

 ───シオンは口から血を出して咳き込んだ。

 ノア・アイランドでエリクサーを作るために何度も挑戦して失敗した。その度に〈猛毒〉ができあがった。これは猛毒の霧だった。

「お、おのれ! なにを!」

【集中】───

 またしても静かな世界。シオンも動き出す。だが先ほどよりも動きが鈍い。毒が効いているのだ。ここを勝負所と見てディアは【集中】を持続させる。

 一度斬る。反撃の爪。魔剣で受け止める。もう一度斬る。

 シオンが翼を広げて背後に飛んだ。逃さない。空中を駆け上がる。

 二歩、三歩目で追いつく。もう一度斬る。

 そこで【集中】が切れてひどい頭痛が襲う。上限まで使い切ったのだ。

〈純血種吸血鬼 レベル2715〉

「ようやく並んだな」

 ディアは魔剣黒凪を構え直す。


  *



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