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ギルアバレーク戦記  作者: 推元理生
最終章
106/112

◆第十七話 家畜の意地



「あ、あれは、龍?」

 絶望からの突然起きた出来事にアークは何がなんだかわからなくなっていた。

「あれはユニが言っていた神獣だな。山のようにデカくて見ればわかると言っていた」

「神獣? フェンリルの仲間ってことか?」

「仲間かどうかは知らないがな」

 ディアは神獣の存在を知っていたのであれがそうかと思った。そしてもう一人、神獣の存在を知る者がいた。

(団長、来てくれたのね……)

 ハグミはそっと一礼した。


 真紅の古龍は地上を一瞥すると、その身を翻して飛んでいった。

「た、助けてくれたのか?」

「そうみたいだな……」

 また、古龍を信仰するナルハ族は空に向かい手を合わせた。

「あれが古龍様……」

 ナルハ族のツバサは、古龍の去った空を眺めていた。

「アーク、おそらくあれが神の力というやつだろうな」

 アークとジローニは黒煙の残る空を見上げていた。

「ジローニ、もう何人死んだかわかんねえな」

「そうだな。テンテンもやられた」

「ワイズもやられたってよ。兵士もほとんど残っちゃいねえ」

「そうだな。さっきので援軍もほとんどやられた」

「もう、後には引けねえ。ここで負けたら死んだ奴に顔向けできねえな」

「ああ、そうだ」

「じゃあ行くか」


 散歩にでも行くような足取りでアークは古城に向かった。他の面々もそれに続いていく。絶対に生きて帰る、とは思っていなかった。

 ───ただ、絶対に勝つと心に決めて。


  *


 ダンジョンに入ると広いエントランスホールのような部屋だった。〈古城のダンジョン〉に似た、昔の城といった雰囲気だ。

 そこに待ち受けるのは千年前の兵士たち。エピックの眷属だというレベル400の屍鬼だった。

「ナウ、こいつらがそうか」

「ん……そう」

 見たところ五百人くらいだろうか。

「ハル、セラ」

「はい!」

「はいぞよ!」

 豹となったハルがブレスをぶつける。さらにセラが魔法で炎の龍を襲わせた。

「これでも死なねえのかよ……」

 焦げても動いている屍鬼をみて、アークはそんな言葉を漏らした。

「心臓にとどめをさせ!」

 ジローニの指示の元、全員が屍鬼の心臓に剣を突き刺した。

「ナウ、この階層にはボスとかいねえのか?」

「ここのボスは私だった……」

 ナウが階層ボスだったらしい。

「お、お前を殺さなくても進めるのか?」

「ん、大丈夫……」

「じゃあ次はナーヴって奴か」

「そう。でもいないかも」


 次の階層は大広間だった。そこにも屍鬼が五百人ほど待ち構えていた。そこにディアが世界樹の杖で霧をぶつける。

「やっぱり死なないな」

 凍っているように見えても屍鬼は動いていた。再び全員で心臓を突き刺していく。

「ナーヴってのいなかったな」

『多分みんな一緒にいると思う。ナーヴ一人じゃ勝てないから』

 メモにそう書かれた。

「じゃあ次のメアってのもいるかわかんねえな」

「ん……」


 次の階層は広くて長い廊下だった。そこに千人の屍鬼がいたがこれも全員で倒した。魔法で動きを止めれば、あとは心臓を突き刺す作業をするだけだ。

「なんかあっけねえな」

「陛下、多分太らせているのよ」

 アークの呟きにハグミが答える。

「太らせる?」

「レベルを上げさせているのよ。回収するために」

「ああ、魂力ってやつか。神様を生き返らせるのに必要なんだってな」

「家畜ってわけか」

 ジローニはギルバレダンジョンを思い出す。

「そう、僕たちはまんまと太らされていたってわけ。ねえ、ナウ?」

「ん……」

 皮肉のつもりでトギーがナウを見るが、表情に変化はない。

「なあ、ナウ。お前シオンとかメアの仲間だったんだろ? そいつらと戦えるのか?」

「ん……。そのためにレベル上げた」

 ナウは魂力ポーションでレベルが2000近くまで上がっていた。

「そうか、じゃあいいけどよ」

「アーク、次に吸血鬼が三人揃っていたらどう戦うか」

 ジローニがアークに問う。

「シオンは俺がやる」

 そう言ったのはディア。

「まあ、そうなるよな。勝てるとしたらディア、お前しか考えられねえ」

 話し合った結果、ナーヴにはエルフィン、トギー、ハグミ、ジローニ。メアにはセラ、ハル、ナウ。シオンにはディア。アークはそれ以外のために待機。

 アークを待機するように提案したのはジローニだった。以前、アークの【鑑定】ができなくなったときに聞いたことがあった。


「───そういやアイナって婆さんにこの指輪をもらったんだよ」

 そう言って指輪を外すと【鑑定】ができたことから、指輪が【鑑定】を阻害する魔道具だとわかった。

 そのときのレベルは59だった。それからアークはダンジョンに潜っていないはずだ。場合によっては一撃で殺されてしまう。そう思ってアークを戦闘から外したのだ。

「さあ、家畜だと思ってナメていると痛い目に会うことを教えてやろうぜ」

「そうね」

「はは、家畜の意地だね」

 一同は次の階層へと進んだ。そこは広めのボス部屋だった。奥が一段高くなっていて扉があり、その前には棺が置いてある。

 ───そしてシオン、メア、ナーヴの三人が現れた。




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