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ReTake2222回目の安田悠太という世界線  作者: 平瀬川神木
第1章 中学時代前編 出会い
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第4話 第3節 一進一退一喜一憂

 ロッカールームを出ると、外岡雅と同じ歳だけど違う学校の佐久間花恵(さくま はなえ)が話をしていた。篤がこれからマック行かないか?と2人に聞くと、行くと答えた。

 ジャージを羽織った響子コーチが、受付カウンターに出てきた。僕たちの様子を見ながら微笑んでいる。


 僕は女子とはマックに行かないと響子コーチに伝えたくなった。どうやって伝えようか考えていると、真理雄が受付カウンターに向かって歩いて行った。

「響子コーチ。親が新しいコーチってどんな人なのか聞いてくるので、一緒に写真撮ってもらえますか?」

「え?写真?わかった。いいよ」そう言うとカウンターの脇から外に出てきた。

 それを見て真理雄は僕に手招きした。突然でビックリしたけれど僕は走り出した。それを見て響子コーチが言った。

「じゃあ3人で撮ろうか?」こうして真理雄の身長に合わせて腰を曲げた響子コーチを挟んで、僕と真理雄の3人が並んだところを真理雄が自撮りした。


「ありがとうございます」真理雄は丁寧に頭を下げると、篤たちのそばに戻った。


 僕より背が高い響子コーチは、少し僕を見下げるような目線で言った。「悠太君も行くんでしょ?気を付けてね」

「僕は行かないです」僕は女子とマックに行かないと響子コーチに伝えたかった。

「せっかくだから行けばいいのに。若いうちだけだぞ」そう言うと響子コーチは笑いながら、カウンターの奥に戻っていく。


 僕は響子コーチを呼び止めるような大きい声で言った。「行かないって言ってるじゃないですか!」周りにいた人たちが、ちょっと驚いたような顔で僕を見た。


 響子コーチも驚いたように振り返り言った。「うん。わかったよ。どうした?」

 僕は恥ずかしくなり、駆け足でクラブを出て自転車の方に向かった。


 家に戻った僕は、なんであんな大きな声で、女子とマックに行かないと言ったのかわからなかったけど、その行動がとても恥ずかしい事だと感じていた。


 次にクラブに行くのが気まずくて、逃げ出したいような気持ちでいると、真理雄からSNSでさっき3人で撮った写真が送られてきた。その写真を見たら、逃げ出したい気持ちが消えて幸せな気持ちになった。


 次の選手コースの日の僕は、朝からうれしい気持ちになっている。本当は昨日の夜からうれしい気持ちになっている。これは遠足とかそういう時に感じる気持ちに近い。学校に行くのもウキウキしているし、学校の友達との会話も昨日より楽しい。勉強すら楽しく感じる。いつもと同じ学校なのに、いつもより楽しい学校が終わり、いつもより少し自転車のスピードを上げて、スイミングクラブに向かった。クラブに行くのがこんなに楽しみに感じるのは初めてかも。


 クラブに着いて入り口の前に立つと、途端に心臓がドキドキ早くなり始めた。本当に僕はどうしてしまったのだろう。入り口から入れない。


 入り口の前で立ち止まっていると後ろから三橋コーチが、いつものようにぶっきらぼうな言い方で僕に言った。

「悠太どうしたんだ?忘れ物か?」

「いや、いえ、大丈夫です。なんでもないです」

「具合悪ければ帰った方がいいんじゃないか?無理してもしょうがないぞ」

「本当に大丈夫です。すみませんでした」そう言うと慌てて中に入った。後ろから三橋コーチもついてきた。


 うつむきながら入ると、受付の響子コーチが見えた。ドキドキするのがわかる。でも気持ちが良いドキドキだ。表彰台に立ったのともちょっと違う、うれしいドキドキを感じながら顔を響子コーチに向けると、響子コーチの目線は僕の後ろにいる三橋コーチに向いていた。僕じゃなくて三橋コーチを見てると思ったとたん、気持ちの良くない嫌なドキドキに変わった。


 僕より背が高い三橋コーチは、僕の頭の上から響子コーチに言った。「悠太、何でもないって言っているけど、なんか調子悪いみたい」


 それを聞いた響子コーチが、少し心配そうに言った。「悠太君、大丈夫?」

「なんでもないです。大丈夫です」急いでカバンから会員証を出して響子コーチに渡す。響子コーチは会員証を機械で読み取って僕に返してきた。僕はそれをひったくるように受け取り、ロッカールームに向かった。響子コーチの顔は見られなかった。さっきまでは響子コーチの顔が見たくて仕方なかったのに、なぜか今は響子コーチの事を考えると苦しい。考えたくない気持ちになる。どうなってるんだ?!


 着替え終わりプールに出ると他の生徒も半分くらい出てきていた。


 プールサイドと直結しているコーチ室の入り口の方で、響子コーチと三橋コーチが何か話している。僕の目にはとても近い距離に感じた。体がくっつきそうなくらい近い距離で話している。響子コーチは笑っている。とても楽しそうに笑っている。三橋コーチの顔をしっかり見て笑っている。

 

 ――バーン

 

 プールサイドにいた皆が振り返った。僕のすぐ横に壁沿いに設置されたビート板置きの棚が倒れた。


「どうした!?」大きな音に驚き、コーチ室から古岡主任コーチが飛び出してきた。


 棚のそばにいた僕のところまで走ってきた古岡コーチは僕の両肩をつかんで言った。「悠太!ケガはないか!?」


古岡コーチがとても心配そうに僕に尋ねた。


大切なお時間を割いていただきありがとうございました。わかりにくいところやご意見ご感想などいただければ幸いです。

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