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ReTake2222回目の安田悠太という世界線  作者: 平瀬川神木
第7章 大学時代後編 広がるそれぞれの世界

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第35話 第1節 混沌

 一人で暮らす事にも慣れて、コンビニのお弁当が増えたり、家が汚いこと以外は、お父さんと暮らしていた時とたいして変わらない毎日が続いている。


 ロードバイクについては響子コーチやトライアスロンとは別の話として、普段の移動の足として必要だと思い、近いうちに手に入れたいと考えていた。


 効率の良いパチンコ店のアルバイトも、初めは月3回位だったけれど、今では週3回位声がかかるようになった。寝不足にはなるけれど、入れ替え台数が多い時には一晩で2万円を超える事もあるし、紹介してくれた謎バイトを色々知っている今沢君には感謝だ。

 今くらいのペースでいけば、来月には買えると皮算用をして寝不足を押してバイトに行っていた。

 

 今夜は予定が何も無かったけれど、区民プールで泳ぐのはやめて寝不足を解消するために早く寝ようと考えていた。

 そんな時こそしっかりとしたものを食べるべきなんだけど、イマイチ食欲が無かったから、簡単に食べられる総菜パンをコンビニで帰りがけに買ってきた。


 明日の夜は響子コーチとご飯を食べに行く約束をしている。響子コーチが前から行ってみたいと言っていた、スペインの居酒屋風のお店だ。スペイン人は悪魔の化身であるタコを食べる日本人の仲間だ。


 少し熱っぽいのかな?風邪でもひいたかな?そんな事をぼんやり考えていた。


 リビングのソファーに座ってテレビを見ていた。意識がフッと飛んだりして、寝落ちしそうになった。目がチカチカしている。耳もボワッとして聞こえにくい感じがする。どんどん身体が鉛のように重たくなる。シャワー浴びなきゃ……なかなか一歩が出ない。


 真っ暗闇の中、声を出そうとして口を開けるんだけど声が出ない。目を開こうとするんだけど開かない。気持ちと身体がケンカしている感じがしばらく続き、遠くに小さな光が見えてきた。どうにも身体が重くて前に進めない。それでも力を込めて一歩一歩光に向かっていると、不意に感覚が現実感を帯びた。


 僕は目を覚ました。それにしても身体が思った通りに動かないなぁ。そんな事を感じながら、力を入れて目を開けて周りを見渡す。見慣れた自分の部屋のベッドだ。頑張って体を動かして時計を探した。AM7時だ。


 4キロ近く泳いだ後で、180キロも自転車で移動し、挙句の果てにそこから42キロも走るというアイアンマンのトライアスロンをやったら、次の日はこんな感じなのかな?とにかく身体が動かない。


 のどの渇きを感じていたので、頑張って体を起こすと、僕の部屋のテーブルにペットボトル数本の飲み物があった。他にもパックに入った、ゼリー状のプロテインもある。


 神様が降りてきてくれたのか、現実的な路線だとお父さんが帰ってきたのかと思った。重い体を引きずるようにリビングに出たけれど、キッチンやそこらじゅうがキレイになっている。掃除されて食器が洗い終わり拭かれてシンク脇に重ねられている。


 お父さんが札幌に行ってから、家の中は汚くなっていた。夜のバイトも重なって、食べ終わったお弁当の容器だの、飲みっぱなしのペットボトルだのが散乱している状態だったはずだけれど、今はキレイになっている。

 やっぱりお父さんが帰ってきたのかと思ったけれど、食器とかが出しっぱなしなのが変だなぁ。脳が動き出すと、状況が理解できないということが理解できてくる。

 いったい何がどうしたんだろう……僕は独り言をつぶやいた。トイレに行った後、自分のベッドに戻り横になったところでSNSの着信音が鳴った。


「大丈夫?冴ちゃんに何か持って行ってもらおうか?」真理雄からSNSが届いた。お前が来てくれるんじゃないんかいと小声で突っ込みながら、なぜ真理雄が僕の調子の悪さを知っているのか、そしてこんなことを言ってくるのか。状況は混沌さを増す一方だ。


 そんなことを考えていると、また真理雄からメッセージが届いた。

「響子コーチは帰った?」


「え?!なにそれ?!」僕は独り言をそのまま送信してしまった。

「後でお礼伝えなよ。要支援時は冴ちゃんへ」


 真理雄は忙しいから、やり取りが短文を超えて単語の場合がほとんどだけど、今日はちゃんとした日本語を使っているから、相当心配してくれていると言える。


 なぜかキレイになった僕の住まいで、なぜか僕の部屋の机の上に並んでいたペットボトルを開けて飲んだ。

 テーブルに並んだものの趣味を考えれば、まあ、響子コーチなんだろうなと思った。僕は笑顔になる。響子コーチを想った時にはいつでもそうだ。1万回に1回位は、いや千回に1回位は苦しくて泣きそうになっているかなぁ。


 まあ響子コーチなんだろうなって……いったいなんだ?

 ぶつ切りになっている記憶だが、少しずつ断片的に思い出した。あ、そうだ。昨日の夜は体調がイマイチだったから泳ぐのはやめて、焼きそばパンを食べながらバイトの事や響子コーチと明日ご飯に行く事を考えてて、それで寝ちゃったんだよな……今日は響子コーチとご飯行くんだ。うん。スペインバルだ。


 でもだとすると、なんで寝落ちした僕の家がキレイになっていて、響子コーチが来たとか、お礼言いなよ。とか……よく考えたらおかしい事だらけなのに、響子コーチの趣味っぽいとか納得しているけど、なんか……なんだ?いったい何がどうなったんだ?僕は眉間にしわを寄せて、状況の整理とまとめを試みていた。


 突然玄関が開いた。本当にお父さんが帰ってきたのか?僕は開けっ放しの自分の部屋のドア越しに、廊下の方を見ていた。


大切なお時間を割いていただきありがとうございました。わかりにくいところやご意見ご感想などいただければ幸いです。

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