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ReTake2222回目の安田悠太という世界線  作者: 平瀬川神木
第6章 大学時代前編 僕は過激極右マイノリティ

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第31話 第2節 付き合っているけどラブラブって訳ではないっていったい

 大学の友達に、今沢という男子がいる。彼はちょっとした有名人なのだが、その理由は怪しいアルバイトに人を紹介するという、怪しい特技を持っている事である。


 僕は自転車をどうにかしなければならなかったため、今沢君に効率の良いアルバイトを探していると伝えた。僕の条件は、できるだけバイト代が高い事。学業をおろそかにはできないので、夜の仕事である事。できれば不定期な仕事。この3つだ。


 今沢君はちょっと考えて、にやっと笑って僕に言った。


「安田君の希望を考えて、僕が紹介してあげられるのは、君が元競泳選手だって事を生かしたものだ。最もマッチしているのは、その道のおじさんとデートをする事。君次第で、一晩10万円とか稼げるよ。ただし、それなりに覚悟もいる事だから、その覚悟を緩やかにしたのが、そんなおじさん達の為に、写真撮影会にモデルとして参加する事。君はモデルとしてリクエストされたポーズをとっていればいいだけだ。カメラを構えたおじさん達の前で、肛門やちんこを露出する事は必要になるけどね。試験薬の人体実験もマッチしていると言えるけれど、君の身体を考えた時に写真を撮られるだけの方が、幾分マシだろ?」

 

 今沢君は「いとも」と簡単に言う。その道のおじさんとは一体?と聞こうとも思ったけれど、僕だって大学生だから予想はできる。肛門まで見せるんだから。

 こういうアルバイトは、響子コーチに知られると僕が嫌われる確率が上がる。すっごく上がる。だから競泳をやっていた事を生かすにしても、別の方向は無いのか聞いた。

「世間は安田君が考えているほど甘くはないんだけど、時間単価を引き下げれば無い訳じゃないよ」僕はこの後で今沢君が説明してくれたアルバイトを紹介してもらう事にした。


 このアルバイトは、夜の10時から11時くらいに指定された場所に集まる。対象のお店が閉店してからしばらく待ち、連絡があったら店の裏口が開くため、集まったみんなで店内に入る。店内の商品を外して集めて入り口に運ぶ。トラックが到着し次第、集めた商品の全部をトラックに載せて搬出。

 

 次のトラックが到着し次第、そのトラックから新型機種を下ろして、さっき外した商品があったところまで運ぶ。今度は新品なので傷つけないように慎重に。結構重い。そして電動工具で取り付ける。冴子店長の海の家で、パラソルを立てる時にみっちゃんが愛用していたのと同じ形の、充電式ドリルだ。全部取り付けた後は、リーダー格の人から言われた通りの設定をして、テストをして終了となる。

 

 パチンコ屋さんのパチスロ機、新装開店「パチスロ台の入れ替え」作業のアルバイトは、定期ではない代わりに1回の単価が良い。ただし、エレベーターが無い、使えないレベルの地下1階から地上2階程度のお店が多い為、古いパチスロ台を外してそれを担いで搬出し、新しいパチスロ台を、傷つけないように、より丁寧に担いで搬入するのは、結構体力が必要だ。そこに競泳選手だった事が生かされる。それに次の日の朝までというリミットが明確なのも良いところだ。


 ちなみにパチスロメーカーの社員の人が言うには「パチンコ台」は取り付け設置の角度などが微妙なので、僕ら体力勝負の大学生アルバイトでは取り付けられないそうだ。

 

 ロードバイクを自力で購入する為に、そんなアルバイトを始めた事を響子コーチに話すと、他にやるべき事がたくさんあるのではないか?と説教をされた。

 みんなアルバイトくらいやっているから、僕だって無理ない範囲でやるのは間違えてはいないはずだと答えた。

 そもそも響子コーチだって、大学時代のアルバイトで僕に会ったわけだし、大学の夏休みは、ライフセーバーもやっていたんだから。

 響子コーチは「無理しないように」と、ちょっと怖い顔で言った。こういう時はコーチに戻る。


 平日の昼は大学で勉強をする。夜は時々アルバイトに行って、時々響子コーチとご飯を食べる。週末は僕が参加したトライアスロンチームの練習に行く。

 トライアスロンを始めてから、朝早起きして1時間くらい走る習慣ができた。アルバイトや響子コーチと会えない日には、区営プールで泳いでいる。金銭的な理由で区営プールを選んだ。

 

 1か月くらい経ったころ、響子コーチからSNSで食事の誘いがあった。当然僕は秒速で「よろこんで~」と返信した。


「実は悠太君にね、ロードバイクを譲ってイイよって人がいてさ、中古だけどしっかりとしたものだからどうかな?と思って」響子コーチが言った。僕は驚いたし、うれしかった。

「それは嬉しいですね。どこのバイクですか?」僕は響子コーチとの話しが深まるように、ロードバイクについても勉強は欠かしていない。


「ビアンキだよ。中級機だけど、その人があまり乗っていないバイクがあるって言うから、バイク始めたい子がいるんだけどって話しをしたら、何ならあげるよって話になってさ」響子コーチは嬉しそうに言った。でもその嬉しそうが、僕が自転車を手に入れる事ができるという理由ではなくって、バイクをあげるよって言った人の事を考えてうれしそうになっている気がした。

 そもそも会った事もない僕に、中古とはいえそんなロードバイクをタダでくれるっておかしい。

「そんな、あしながおじさん、みたいな人は誰なんですか?」僕は自分の中に久しぶりに現れた、モヤモヤした気持ちを隠しながら聞いた。

「私のチームのキャプテンなんだよ。何でも相談できて頼もしい人だよ」この笑顔がモヤモヤを増幅させる。


「新しい彼氏ですか?」我慢ができなくなって、僕はちょっと不機嫌に聞いた。

「またそんな顔して。まあ付き合っているって言えば付き合ってるけど、それほどラブラブって訳じゃないからさ」響子コーチが言った。余計ダメじゃん。付き合っていると言えば付き合っているって言い回しは、エッチはしているって事でしょ?でもラブラブじゃないって事は、すっごい好きって訳じゃない人だけどエッチはしているって事でしょ?僕はすごくモヤモヤした。


「僕は自分で買うのでいりません。断っておいてください」僕はつい強めな口調になった。

「バイト大変なんでしょ?悠太君がバイク手に入れれば、私と一緒にツーリングに出かける事ができると思ったのに」


「ちょっとひどいですよ。僕が響子コーチの事、すごく好きなのは覚えていますか?あの夜のキスの事だって、僕は寝ている時だって1分に1度は思い出しているんですよ?一緒にツーリング行けると思ったって、そんな言い方を僕にしたら、僕は大好きな響子コーチがエッチしてる人からもらった自転車に乗って、響子コーチとツーリングに行くという、本来相容れない2つを強制的に相容れさせる事になるじゃないですか!」

「考えすぎだよ。悠太君は昔からそういうところあるけどさぁ。自転車をもらえるってだけの話だし、その自転車で私と一緒にツーリング行こうって誘ってるだけの話しじゃん。なんでそんなに怒るかなぁ。意味が分からないよ」響子コーチが少し目を大きくして言った。僕の方が全然意味が分からないよ。僕は首を左右に振り続けた。


「響子コーチ、その人とエッチしてるんでしょ?僕とのたった1回のキスは無かった事にするけれど、その人とは何回も何回もエッチしてるんでしょ?そんな人からもらいものなんかしたくないです」僕は机をたたきそうになったけれど、代わりに両手をそっとテーブルの上に置いて言った。

「あ~もうやっぱりあの夜に悠太君にキスしたのは間違いだった。ホント、時間を戻せたら取り消したい!」


 そのあとは少し険悪な雰囲気のまま、早めの解散となった。なんで響子コーチは、響子コーチが大好きな僕に、あんな事を言うんだろう?僕が響子コーチの事が大好きだって気持ちは、全然届いていないのかな。僕がふざけて言っていると思われているのかな。僕は怒りや寂しさや、悔しさや、とにかくネガティブな塊となって家に戻った。


 どうしようもない気分だったので、できるだけ短く、だけど結果長文で、真理雄に今日起こった事を伝えた。冷静な事実報告というよりかは、僕視点に立った、僕の正当化と響子コーチに対する問題点の指摘に終始した愚痴っぽい内容になってしまった。


 基本的に真理雄は忙しいので、僕が何かを伝えても返信はしてこない。来週土曜日の昼ご飯を一緒に食べられるか?とか、真理雄の答えで僕の行動が変わる時には素早く返信してくれる。だから今日は返信されないだろうと思って、正直な気持ちを文章にした。書いているうちに僕自身が落ち着く事がよくあるから。


 夜11時過ぎに家のチャイムが鳴った。セールスにしても非常識だと思っていたら、お父さんの声がした。「悠太、真理雄君が来たよ」僕は驚いた。真理雄はお父さんに鯵を味噌で叩いたものが入ったアルミホイルを渡していた。そのままでもおいしいし、焼いてもおいしいですと言っていた。お父さんは時間も気にせずに、さっそくそのまま食べようとしている。


 真理雄が僕の部屋に入ってきた。「急にごめんね」

 僕は言った。「真理雄は漁師にでもなったの?」真理雄は聞こえないように、僕の部屋の床に座った。


大切なお時間を割いていただきありがとうございました。わかりにくいところやご意見ご感想などいただければ幸いです。

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