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ReTake2222回目の安田悠太という世界線  作者: 平瀬川神木
第4章 高校時代中編 大人になるということ

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第18話 第2節 正直にまっすぐでダメなら仕方ない

「ただいま悠太。どうした?具合悪いのか?」お父さんはベッドのわきに座った。

「ごめんね。少し体調が悪かったから寝てた」僕は身体を起こして言った。

「そうか。最近毎日が楽しそうで、休みなくバイトに行ってたからな。さすがの高校生も疲れが溜まったんだろう」お父さんは僕のおでこに自分の手を当てて、熱を測っていた。


「少し熱いな。何か心配事があったら、遠慮なく相談してな」

「お父さん」

「ん?」

「お父さんとお母さんはどこで知り合ったの?」

「なんだ?そんなこと聞くの初めてだな。同じ会社だったんだよ。いわゆる同期入社ってやつでな、彼女は頭が良くて仕事ができたんだ。俺はこう、雑なところがあったから、彼女に色々助けてもらったんだよ。人生もこんな人が助けてくれたら、俺はもっと幸せになるなって思ったからアタックしまくった。そんな感じだ」ちょっと照れ臭そうに言った。


「もしもさ、僕が誰かを好きになる事で、その人に迷惑がかかるようなときにはさ、やっぱりあきらめるのが男として正しい事なのかな?」

「う〜ん。まず男としてってのはなんだか時代錯誤だな。星の数ほど男はいるんだから、悠太として何が正しいのか?ってことが重要なんじゃないか?」

「僕はその人の事がすっごく好きだ。その人の為なら僕の全部を変えることもできる。でもその人のために、その人を好きでいるのをやめるのは、結構無理かもしれない」

「そうかぁ。俺は悠太が誰かをそんなに好きになった気持ちは大切にしてもらいたいと思う。本当にその気持ちが、その人に迷惑かけるものなのか?相手はそれを迷惑だって言ってきているのか?」


「迷惑じゃないし、気持ち悪くもないとは言ってくれている」

「じゃあその言葉を信じればいいんじゃないか?信じるって難しいけれど重要なことだよ。母さんを悲しませたことがあってさ。同じ会社に俺の元カノがいてさ。俺とお母さんが付き合っているのを知った、その元カノが嫌がらせみたいなことを俺にしてくるようになったんだ。俺がフォローしなければならないミスをわざとしてみたり、俺と元カノが組まないと仕事ができない状態にしたり。俺は勝手に、この件はお母さんに嫌な思いさせるから言うべきではないって決め付けちゃったんだ。俺と元カノの二人でやる残業とかも増えていってな。そしたらお母さんは俺が元カノと、よりを戻したがってるって思ったみたいなんだ。で、お母さんに戻りたければ別れてあげるって言われてね。俺は慌てたよ。だから今起こっている事を全部伝えた。はじめっから言えと怒られた。そのあと数日で嫌がらせは終わった。何をしたかは怖くて聞けなかったよ」お父さんは笑いながら立ちあがって言った。


「確かに言葉は嘘や気遣いやごまかしや『言葉通りに意味を取れる』ことの方が少ないとは思うんだけどさ、その人が悠太にとって特別な存在であるならば、相手を信じて相手の言葉をそのまま受け取って、自分が気持ち良くなるための言葉は控えて、自分を知ってもらうための言葉はそのまま投げかけることが重要だと思う」

 

 僕は自分の家族のことだって知らないことがたくさんある。恋愛だって経験が無いから知らないことだらけだ。響子コーチの事も知らないことだらけ。だから、正直にまっすぐぶつかっていこう。

 響子コーチに、ど真ん中ストレートを怖がらずに投げよう。それで打たれたんだったら、僕の力不足だ。相手のヤマを読んで、投げたくない変化球を投げて、それを打たれるのは一番悔しい。僕はこれから、どんなことでもど真ん中に、渾身のストレートを投げよう。


 海の家のバイトと、スイミングクラブには次の日からちゃんと行った。今までよりも相手を信じて、どんなことでも、まっすぐにぶつかるようにした。僕の言葉や行動が、少しみっちゃんに似てきたと、冴子店長に笑われた。そうか。みっちゃんは本当に正直にまっすぐぶつかってくる人だ。ちょっと格好悪い太ったおじさんに見えていたけれど、僕の目標の人かもって少しだけ思った。


 海の家には相変わらず、僕の同級生やその友達が来てくれる。僕は時々、女の子から手紙をもらったり、付き合っている人はいるかと聞かれる。今は響子コーチの前でも、ちゃんと話を聞いて、ちゃんと「とても大切でとても好きな人」がいることを伝えている。うやむやに誤魔化しても、みんなが傷つくことを知ったから。


 そんなある日、篤と健治が海の家に来た。真面目な顔をして、テーブルの二人が僕に手招きをした。二人は真理雄にも手招きをした。


 真理雄は、すっかりこの店のアルバイトのようになっている。バイト代はもらっていないと言っていたが、冴子店長のお父さんから、新鮮な魚介類をもらっていて、真理雄のお母さんは「おいしい海の幸」をとても喜んでいるという。もしかしたら、その原価額では、僕よりもらっているんじゃないか?とも思うけど、真理雄も楽しそうにしているし、僕は真理雄が好きなので、一緒に過ごせて楽しい。


「なに?バイト中だからあんまり時間は取れないよ。真理雄はバイトじゃないから、大丈夫だけど」僕が篤と健治に言うと、二人は気まずそうな顔をしている。


大切なお時間を割いていただきありがとうございました。わかりにくいところやご意見ご感想などいただければ幸いです。

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