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ソーテリア  作者: てゆ
9/10

七話 ゲーイレ奪還作戦

光の殻を生み出す魔法(サザーノル)! 怖いものを操る魔法(フメリオ)!」

 敵の空気を操る魔法(フィエコーム)を防ぎ、その足元にできた血だまりを使って、股から脳天までを貫いて殺す。ジアさんが言っていた通り、魔族の数は、報告よりも遥かに多かった。かれこれ、私だけで六体は殺している。

炎を操る魔法(タルシータ)

 腕を触手に変化させていた魔族を、アゼアスさんが火だるまにして殺す。ふと周りを見渡すと、それが最後の一体だということがわかった。

「この辺りの敵は、殲滅し終わったみたいだね。作戦通り、次は中央の広場に集まろう」

 ニーシャさんが上空から、号令をかける。それを聞いたみんなが、ほっと一息ついた次の瞬間のことだった。

「……氷を操る魔法(ゼシア)

 ニーシャさんの翼が、瞬く間に凍りつく。そして、声のした方を振り向いた時、私たちは言葉を失った。

「みんな、早起きだね」

 空色の長い髪の毛をサラサラと揺らしている、十歳くらいの少女の見た目をした魔族。

「……ナーサリーちゃんだね?」

「そうだよー、よく知ってるね」


 ――二級魔族ナーサリーが、ゲーイレ西広場に出現した。


「私たちの後ろに隠れてください!」

 サントスさんが叫ぶ。サントス三級パーティーのメンバー全員が集まって、一斉にサザーノルを展開した。

氷を操る魔法(ゼシア)

 無数の氷のつぶてが、全方位からこちらに飛んでくる。バンバンという凄まじい音が鳴り響く。あちこちに大きな亀裂ができたが、なんとか耐え切ることができた。

「強いねえ、みんな。じゃあ、これはどうかな?」

 妨害のしようがないほど一瞬で、氷の巨大な槍が作られる。ナーサリーはそれを、私たちの方に高速で飛ばした。

大きさを変える魔法(ラーズニア)

糸を紡ぐ魔法(ジャント)

炎を操る魔法(タルシータ)

 サントスさんの魔法で、小さく。ジアさんの魔法で、細い糸に。そして最後に、アゼアスさんの魔法で溶かして、槍を処理した。

「おお、そんなことま……」

光の弾を撃ち出す魔法(シャトラール)

 ニーシャさんが、ナーサリーの頭上から、最大火力のシャトラールを放つ。

「おっと、危ない」

 即座にサザーノルを展開して、対応したナーサリー。それを皮切りに、私たちは攻勢に転じたが、ナーサリーは、八対一という数の差をもろともせず、私たちの攻撃に対応した。


「そろそろ、疲れてきたんじゃない?」

 ――ナーサリーが余裕そうな笑みを浮かべる。魔力も尽きかけて、勝算が見えなくなってきた時のことだった。


筋肉を操る魔法(ウーリヤ)!」

 私たちの元に駆けつけてくれたサリアさんは、その魔法で、ナーサリーの動きをピタッと止めた。そして、近くに転がっていた瓦礫の破片を、ナーサリーの頭上に向かって投げた。

大きさを変える魔法(ラーズニア)!」

 サントスさんは、ハッとした表情をして、それを巨大化させる。瞬く間に、ナーサリーの体よりも大きくなった瓦礫は、その華奢な体をぺしゃんこに押し潰した。

『勝った』

 隙間から漏れた鮮血を見て、その場にいたほぼ全員が、安堵の声を漏らした。サリアさんは、呆然とする私たちの方に近づいて来て、こう語った。

「敵の中に、『分身を作る魔法』を使う魔族がいたの。作った分身の数は二体で、もう一体は、ミル三級パーティーとカルス五級パーティーがいる東の広場に。分身でも相当だったと思うけど、オリジナルはもっと強くてね、パーティーの一人のワゲンが戦死した。……いくら魔族になったとはいえ、ついさっきまでは仲間だったからね。殺すのは、本当に辛かった」

 サントス三級パーティーのメンバーが、揃って顔を青ざめる。「物体の強度を変える魔法」の使い手である二級魔法使い、ワゲンさんは、五日間の基礎訓練で、サントス三級パーティーを指導していた。

「残念でならないよ。ワゲンは、魔法使いとしても、一人の人間としても、とても立派だった。……でも、落ち込んでいても何も始まらない。増援も到着しただろうし、東の広場に向かったナーサリーの分身も、きっと、もう処理し終わってるよ。私たちは、勝ったんだ」


 ――みんなを明るく元気づけるように、そう言ったサリアさん。東の広場の方から大きな爆発音が聞こえてきたのは、その次の瞬間のことだった。


「まさか……」

 連続する爆発音、モクモクと立ち昇る真っ黒い噴煙。このような魔法を、こんな大規模で扱える魔族を、私たちは一体しか知らなかった。

「……逃げよう。早く、急いで!」

 サリアさんが絶叫する。ニーシャさんが、「魔法省に連絡してくる!」と空中から大声で告げる。ランクルが、八人分のセニカガを召喚する。

「なあ、まさかこれって……」

 コーストが、青ざめた顔で私に問う。正直、私もとても動揺していたけど、できるだけ平静を保って答えた。

「残念だけど、きっとコーストの予想通りだよ。……十凶の中の一体、『噴煙のカムル』だ」

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