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人助け、そう人助けは大切だ……


******


「大したこと無いのに、偉そうにしやがって!!」


デカイ剣をブンブン振り回しているだけで、一向に魔獣を倒せてないぞ。


「ほらほら、魔獣さんに逃げられンぞ。しゃーないから、足元凍らせてあげるから今度こそ仕留めてよ」


岩に座り杖を片手でクイクイ動かしながら、片手は膝に肘を付き掌に顎を乗せてアクビを我慢中。


「ヒューは武者修行じゃなくて、無稽荒唐。俺ならやれる!って散々僕達に突っ掛かって来たのに、情けないね」


私は我慢してんのに、隣で大あくびしてるのは地雷1号!お前かー!!


「こんな奴なんて見た事が無いんだから仕方ないだろ!!お前達に助けろなんて言ってない!」


ちょっと大きめのウサギ擬きに四苦八苦して、このまま放置も出来ず見守っているけど、そろそろ飽きた。


「身体に合ってない剣をぶん回しても体力が無くなるだけで、制御出来てないじゃん。諦めてお家にお帰り。坊っちゃん」


王都は行きたく無いから、少し遠回りになるけど街道を進んでいたら、ギャーギャー煩い声を聞いて駆けつけた。リス擬きの魔獣軍隊にからかわれていた少年を救助したのにさ。


『いきなりでびっくりしただけだ!!このヒュー様がこんな事くらいで逃げる訳無い!』


テヤーー。剣を冗談……上段に掲げて再度森へ突っ込んで行く。


アホだ。


後を付いて歩くけど。小動物にすらギャーギャー騒いでいるし、どう考えても、口だけ番長。


「もう帰ったら?」


そう口だけ番長に言ってから気付く!


「ん?ヒュー……?ヤッホイ侯爵家のヒュー?」


「お前、よく知ってんな!ヤッホイ家に生まれたからには騎士団長にならなければならない!


そうしないと、姉ちゃんが……」


姉ちゃん?へぇー姉弟が居たんだ。


「うわぁ、ヒューってダサい。お姉ちゃんはそんな弱い子に育てた覚え無いわよ!」


颯爽と現れたのは、赤い髪と瞳の美少女。ヒューと髪と瞳は同じで似てる。これが噂のお姉ちゃんか?


「ほら、行ってこい!」


襟首掴んで、ヒューを投げ飛ばした先には、ウサギ擬きの大群。


「男なら全て屠れ!」


「ギャー!助けてー!!」


うん。スパルタ通り越して無茶苦茶やね。


「水洗い!のち、冷凍肉!!」


ごっそり魔力を持って行かれた気がするけど。泣き叫ぶヒューをこのまま見捨てる訳にもいかず……


「何!もしかして、アレは貴女の仕業?ヒューなんかより、貴女みたいな可愛い妹が良かったわ!

ヒュー!!ソレ全て回収して帰るわよ!


ねぇ、貴女は婚約者居る?平民かしら?そんな些細な事なんてどーでも良いわね。テキトーに貴族の娘に養子入りすれば解決。これでヘタレな弟の面倒見ないで済むわ!いい拾い物しちゃった!やっぱり私は強運の持ち主なんだわ。男だったらあんなヘタレなんて鍛える必要もなかったけど、私って女でしょ?だからヤッホイ侯爵家を継げないのよ。理不尽と思わない?男って理由だけで、あの、あの!!ヘタレが家督を継ぐなんて!姉弟のよしみで鍛えてあげてるのに、ピーピー泣くし弱いし。これじゃあ騎士団長なんてムリな話よ!ねぇ、貴女もそう思わない?」



なげーよ!もしかして、この姉ちゃんが原因でヒューは無口キャラに成長すんのか?


「あのー「そうよね。まずは私から名乗らないと。ヤッホイ侯爵家の長女テイヤーよ。気軽にテイお姉ちゃんって呼んで。あぁ、それと…」


「テイヤー!!この子は僕のお嫁さん。へなちょこには渡せないな」


ムギュと抱きしめライがテイヤーさんに言う……けど?


「あなた!!カッコいいわね。私がこの子の代わりにお嫁さんになってあげるから、この子をヒューに頂戴」


うん。全く人の話を聞いちゃいない。


「ライ。行こうか」


「そうだね」


ポスッと岩から降りて街道へ向かおうとしたら、両手を広げたヒューが立ち塞がる。


「お姉ちゃんと二人きりにしないでよ!」


冷凍肉をデカイ袋に入れて足元に置いとくけど。それ、私の肉だったわ。


「冷凍肉を返してくれるなら、屋敷までは付き合うわ」


お財布ぽかぽかへの近道。冷凍肉を忘れてた。


「これはちゃんと買い取る!」


ヒューと固い握手を交わし、煩いお姉ちゃんとブスッとしたライと四人で屋敷へ向かった。


******


「どうしてもダメ?」


「キミみたいな子は、僕のタイプじゃない。だからサラも渡さないよ」


火花散る二人を放置して、冷凍肉を買い取りしてもらい。ヒューとベンチに座りおやつのマフィンを有り難く食べていた。


「スゲーキャラだね。あんたの姉ちゃん」


「お前の自称旦那も、姉ちゃんに負けてない」


ヒューは、落ち着いて話せば普通。ちょっと気が弱いみたいだけどね。


「お姉ちゃんが男なら良かったんだ。俺みたいな弱い子には、やっぱりムリだよ」


俯いてチマチマとマフィンを食べながら愚痴るヒューに、


「まだ私達は子どもだよ?今から鍛えれば何とかなるさ!未来はこの手で切り開け!


口は悪いけど、ヒューのお姉ちゃん、きっとヒューの事が好きだよ。じゃなきゃ迎えに来ないでしょ。昔のスゲー人が言ってた。


ツンデレのデレは分かりにくい!」


うん。決まった!


「アハハハハハ!!お姉ちゃんがデレッとするの?俺も見てみたいなー。よし、頑張ってみるよ」


「よし、頑張れ」


何か吹っ切れた顔をしたヒューに、多分良かったんだよね?と、一瞬。小説の事が頭に過ったけど気付かないふりをした。


「なかなかやるわね!ヒューの相手として申し分無いわ!


行く場所が無いなら私の下で働きなさい!」


「えぇ、嫌だよ。サラ、行くよー」


バッと私の手を取ったライに、私も立ち上がりヒューへ向き直る。


「再会の約束はしたくない。さよならヒュー。達者で暮らせ!」


「え!会えないの?何で?」


「さらばだー」


どうして良いか分からず固まったヒューと、追いかけて来るテイヤーさんから逃げるように走るけど、テイヤー。マジ半端ねぇ!追い付かれる!


「サラ、ごめんね」


ライが言うが早いか私をお姫様抱っこして、物凄いスピードで森を駆け抜ける。


「面白かったね」


口を開けたら舌を噛みそうで、返事が出来ない!


ぜっんぜん面白くねーよ!!

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