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麗らかな春の日。皆様ご機嫌いかがですか?


「ヤダー!!サラも一緒に帰るー!!」


地雷2号は予定より早く王都へ帰る事に決まった。ノリー様からの手紙を受け取ったヤターの父が魔力検査を早めにしたいと言ってきたらしい。


ハンカチをヒラヒラさせて、にこやかに送り出そうとしてるのにヤターはヤダーと駄々っ子モード炸裂中。


ヤターがヤダー…………。


プッ。女には笑っちゃならねぇ時があるんだ!!ダジャレ好きには苦行だが、ヤターがヤダーと必死に馬車の扉を掴んだ姿を、笑っちゃならねぇ……プッ。


「二度とお会いしませんから、お元気で!」


隣でライが。容赦無いねー。と笑っているけどさ、ヤターのヤダーに口元隠して肩震わせてたの私バッチリ見てたからね。


「そんなワガママ言わず、向こうで兄貴達がヤターの帰りを待ってるよ」


ノリー様の言葉に、ムッとなりながらも口元は嬉しそうに弧を描いている。


「絶対、戻って来るからな!待ってろよサラ!」


ノリー様の屋敷から去る事を知らないヤターは、そう言い残し馬車に乗り込んだ。



「本当に行ってしまうんだね」


半年間お世話になった屋敷を見上げ、大きなリュックを背負う私へ、ノリー様が残念だと言ってくれるが、決してノリー様が嫌だからでは無い!


「お世話になりました」


ペコリと頭を下げ。いざ、出発!



******


ノリー様から教えて頂いた、乗り合い馬車に乗り込み。目指すは隣国ヘイオーン!


「今度は何をやからすの?」


地雷1号のライは、当然とばかり一緒に着いてきた。いや、お断りはした。確実にノリー様がドン引く位に。


「人をトラブルメーカーみたいに言わないでよ。野宿もしなくて済みそうだし、別にライはお家へ帰っても……てか、帰れよ」


フンッ。と横を向きながらも、ちょっとだけ心細いから一緒に居てくれるのがほんの少し嬉しい。


「お客さん、ちょいとすまねぇ。どうやら貴族様の馬車が襲われたみたいだ!生きてる奴がいたら乗せるぞ」


馭者が声をかけると、一緒に乗ってたオッサン達が次々と馬車を降りて救助へ向かう。


「人命救助は大切よね。いっちょ私も行きますか」


馬車に残ったのは女性と子ども。ノリー様が悪乗りしていっぱい教えてくれたから、魔術をかなり使える私も馬車を降りた。


「サラちゃんは、優しいなー」


ケタケタ笑って着いてきたライを睨み付けて、襲われた馬車へ向かうと屈強な男達が斬られたが全員無事らしい。


「殿下が森へ入ってしまった!!探しに行かねば!」


一際ガタイの良い男が森へ向かおうとしてたが、一番傷があり他の男達も行けそうも無かった。


「地雷3号の予感がするけど、まさかね?」


ガタイの良い男から聞いたオッサン達が森へ入った。私もオッサンの後へ続くが、ライは私の手を引き皆が向かう方向とは逆に引っ張っていく。


「何か面白い展開になりそうだから」


クスクス笑うライに、嫌な予感をビシバシ感じるが、人命救助、人命救助。念仏の様に繰り返し唱え進んだ。


「おい!誰か居るのか!私の馬車が襲われたのは、全て奴らが弱いからだ!」


…………は?


「おぉ。お前らは平民だな。私のような高貴な身分の者を普通なら触る事も許さないが、今は許してやる。さっさと私を助けろ!」


バカかな?それともアホかな?


「こりゃまた失礼しました。んな高貴な身分の方に触れるなんて、滅相も御座いません。なので見なかった事に致します!あー、そうそう森には野生動物や魔獣がわんさか出ますが、彼らには高貴な身分の貴方様のような肉の塊は、さぞ喜ばれるでしょうね。では、お元気で」


金髪、碧眼の肉ダルマは、丸い顔を更に頬を膨らませまん丸にさせて、しかも真っ赤になっているから呼吸を忘れてンのかな?


「っ!!私をインスパーと知っての言動か!?おい、平民ゴトキが私に逆らって無事に済むと思っておるのか!?」


ドスンドスンと、地団駄を踏み捲る肉ダルマ。はぁ、やはり地雷3号か……


「善意を当たり前だと思ってンの?バカかな?アホかな?少し頭を冷やせ」


杖を出して、ザッブーンと頭から水をぶっかけた。びっくりして固まった肉ダルマがワナワナしてたから、面倒くさー。


「1度ならず2度まで!!おい、平民!絶対許さん!」


水浸しの肉ダルマが近寄ってきたが、肉ダルマの背後から野生の狼がにじり寄っている。ラッキー!


「インスパー!しゃがめ!!」


私が叫ぶと、頭へ両手をかぶせ丸くなった肉ダルマ。


「今日のお肉!!」


杖を狼へ向け、一気に水浸しにした!よし、次は冷凍だ。


「肉、保存!」


再び叫ぶと、クワッと口を開けたまま固まる狼。


「な、な、な………」


ん?肉ダルマは、『な』しか言えなくなったのかな?


「いつまで笑ってンのよ!ライ、肉よ、肉!!さっさと運んでよ」


後ろでゲラゲラ笑って酸欠中のライに、冷凍肉を持ってもらい馬車へ帰ろうとしたら、足首をむんずと掴まれた。


「何?勝手に乙女の柔肌を触らないでよ」


じっと睨むと、肉に埋もれた瞳からポロポロ涙を流している。


「助けて下さい!」


しゃがみ込み、肉ダルマを立たせると、水浸しになった水を蒸発させた。


「身分なんて、時として無意味よ!」


肉に埋もれた瞳を開いて、うん。と頷いた肉ダルマの手を引き。三人で馬車へ戻った。


「殿下ー!!ご無事で!」


ガタイの良い男が駆け寄って来た。肉ダルマは何か言いかけたが、


「おい。肉ダルマ!心配かけたなら、ごめんなさいとありがとうでしょ!!」


ウッ。と唸りガタイの良い男へ、


「グロウ、ごめんなさい、ありがとう」


小さな声だったが、ちゃんと言えたので良しとしよう。


「殿下を助けて頂き、ありがとうございます。私、キ伯爵のグロウと申します。是非ともお礼を!!」


グイグイ来るグロウさんだが、地雷3号と関わりたくない!

誰だよ!完全無欠の王子様って言ってたの。単なるワガママボディーの肉ダルマじゃん。


「おい!平民……お前は俺に媚びないのか?…」


ん?どうした肉ダルマ?


「だから!俺が王子だと知ったら嫌でもひれ伏して、バカにした眼を向けながら笑うのか!!」


「は?バカにされたくないなら、バカにならなきゃ良いじゃん。アホかな?」


グロウさんが、ポカーンとしてるが肉ダルマがいきなり笑い出した。


「お前!俺の侍女になれ!」


チッ。地雷どもは何故、私を侍女にしたがる?


「慎んでお断りします!」


ペコリと頭を下げた私へ、ライが後ろから抱き付く。


「サラは僕のだから、あげないよ?」


「な、な、な、何だ、貴様!」


肉ダルマは、『な』が好きだねー。


「僕のお嫁さんにするからさ!悪いけど他の人を探せ」


何故、そうなる……

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