小説開始?! 9
ツンドーラ嬢の後に続き林を抜け出た。
「ベルビナ様に会うには相応しく無い装いですわ!それに、何か臭いますわよ」
スーっと視線を外すツンドーラ嬢だが、
「山菜か?それともサワービかな?先に売ってくるから、ツンドーラ嬢の部屋に後から行くねー」
鮮度一番!ダッシュで八百屋まで走り全て買い取って貰えた。思わぬ臨時収入である。
すぐにツンドーラ嬢の所へ行っても良いけど、クソ坊っちゃま達の所へ寄って帰還報告してからだな。
「サラじゃない!久しぶりね」
侍女仲間と会い私の部屋がまだあると聞き、しっかり身体を洗ってから侍女服に着替える。
「クソ坊っちゃま達。おかえりなさいませ」
「「サラ!!」」
学園から帰ってきた二人を出迎えてライとポンコツの話をした。
「へぇー、じゃあベルビナ嬢が急に変わったのも頷けるな」←クレ様。
「そう考えるとライが消えてから、ベルビナ嬢を女神と称える学生が増えたもんね」←イジー様。
「それでですね。今からツンドーラ嬢の所に行ってベルビナをぶっ叩きに行く。ついでにライもぶっ叩いて来る!」
ニコニコしてる私へ、二人は顔を見合わせた。
「「危険だよ!」」
ガバッと両脇を捕まれ捕獲された。縄でぐるぐる巻きって、めっちゃ既視感があるな……
「クレ、インスパー達を呼んで来て」
分かった!と部屋から出ていくクレ様だが、ベルビナ嬢をぶっ叩けば良いだけじゃん。
「この世界の女神が干渉出来ないんだよね?その加護って本当にベルビナ嬢に有効なの?」
はっ!!その考えは無かった!
あンのポンコツがぁぁぁ!!
「だから、ベルビナ嬢を崇拝して無いインスパー達と相談してからだよ。それに、その方が面白いでしょ」
ニタリと笑うイジー様。うん、知ってたさ、腹黒だって。
「話があると連れて来られたが……!!」
「よっ!」
最初に部屋に入って来たインスパーが私の姿を確認すると、駆け寄り抱きしめられた。
「いつ、羽化するんだ!!」
いや……これ縄です。ええ、誰が見てもミノムシ状態ってのは理解出来るけどさ!
「降ろせー!羽化しないし、このままじゃ話も出来ないじゃん!」
ブラーンブラーンしながらキッとクソ坊っちゃま達を睨み付ければ、ゲラゲラ笑いながら降ろしてくれた。二人とも絶対ミノムシにしてやる!
「話って結局はサラのミノムシを見に来ただけ?」
ヒューが未だ笑いながら言うから、とりあえず杖を取り出し攻撃しとく。
「ちゃうわ!私はベルビナ嬢をぶっ叩きに行くンだよ!」
そして平和な日常を我が手に掴み取る!
「ベルビナ嬢!?なんで?」
ヤターに聞かれ、私はポンコツの話をした。クソ坊っちゃま達と、何故かインスピーがクスクス笑っているが?
「インスピー、何が面白い?」
「あー、そうだね。やはりベルビナ嬢だったかと思ってさ。最近性格が変わったんだよねー、兄上は気にして無かったみたいだけど」
インスピーに多少の違和感を感じながらも協力するとの言葉に大きく頷いた。
『何か協力するよ』
目の前から、紙飛行機を当てられる……話せ、口を動かせ!
そう思いながらも協力するなら別にいっかー。とホーイにも頷く。
「インスパーは、どうする?一応婚約者なんだよね?」
「うーん。ベルビナ嬢って多分私の事を嫌いなんだと思う。だけど女性を殴るのは…」
うだうだ考えているインスパーの頭をパチコーンと叩く!
「私の人生が掛かってンのさ!最初から誰かに代わってなんて言ってない!来たくなきゃ来なきゃ良い。無理強いなんてしないさ!」
ウッ。となるインスパーは放置して、ヒューを見ると、
「協力するよ、終わったらサラがデートしてくれるならね」
「了解!ヒューは来なくて良い!」
素早く返事をした私へ、ヒューはガックリしてたが知ったこっちゃない。
「でも、どうやって呼び出す?もし女神さまの言う通りなら何が起こるか分からないんだよな」←クレ様。
「簡単だよ、サラを囮にしてコロシアムにライを誘き出せば良い」←イジー様。
ん?私が囮?
不穏な空気を感じながら、作戦会議が始まった。
******
「ミノムシ反対ー!!」
コロシアムの屋根から縄でぐるぐる巻きにされ、吊るされた私はクソ坊っちゃま達と地雷軍団へ悪態をつくのを忘れない!
「めちゃくちゃ似合うよー、ギャハハハハ!」
クッソーーー!!覚えてろよ!
ブラーンブラーンしながら待つと、コロシアムの中央に現れたのはライだ。
「ベルビナ様に……危害を…………サラ?」
苦し気に話してたライが私を捉え、サラ。と言った瞬間。頭を抱えて踞り叫ぶ!
「ヤメローーー!!俺の名前はフェーンじゃない!!俺の本当の名前はーー!!」
シュルッとミノムシから飛び出し、コロシアムに踞るライへ向け走り出す!
「こっっっのーー!!バカーーー!!地雷1号の癖に自爆してんじゃねーー!!ライーー!!」
ポンコツから授かった大型ハリセンを両手にしっかり握り締めライの頭をぶっ叩く!!
バチコーーーーン!!
ブヘッと地面に熱烈キッスをかますライの前に仁王立ちする。
「さぁ、立ち上がれ!いきなり消えて心配した私の気持ち返せー!!」
「バッター。サラ選手。
ノロノロと立ち上がってくるライの頭をしっかり捉え、ハリセンをギュッと握り締める!
こ、これは片足戦法なのか!?
後方へ大きくハリセンを振り、完全に立ち上がる前にハリセンを振り切る態勢へ入ったーー!!
解説のイジーさん。これは?」
「現場のクレさん。きっとサラ選手は躊躇する間も無く思いっきり振りきると予想されます」
「やはり、そうですよね。解説のイジーさん、ありがとう御座いました。
おーっと!!ライ球がサラ選手へ近寄って行きます!
ハリセンをくるくるさせ、今!まさにハリセンがライ球へ当たりましたー!!」
バチコーーーーン!!
「「クリーンヒットーーー!!」」
「あーーっと!これはどう言う事だ!サラ選手が見事に決めたはずのライ球に抱きしめられております!!
解説のイジーさん、これは?」
「クソ坊っちゃま達!!遊ぶな!」
ニヤリとしただけで、まだ続くらしい。やめれ。
「ライ球の正気が戻ったのだと思いますが、現場のクレさん。背後注意!」
「あなた方!私のフェーンに何をなさったの!!」
スッとクレ様の背後に立ったのはベルビナ嬢。
「ヒュー!ホーイ!」
クレ様の掛け声を合図にベルビナ嬢を捕獲するべく駆け寄るが!
「一番のお気に入りを手放す訳無いですわよ」
ベルビナ嬢が何か唱えると、クレ様、ヒュー、ホーイが地面に倒れ込む。
「お前の相手は私だぁぁぁ!!」
サラがライから抜け出し、ベルビナ嬢の所へ走るが、
「悪役が私に敵うと思ってますの?」
ベルビナ嬢がサラへ手を向け矢のようなモノを投げる。
「「サラ!危ない!」」
イジー様とヤターがサラの前に出て矢を受け倒れてしまう。
「イジー!ヤター!!」
「ふふふ、私の邪魔をするからよ。どうやってフェーンをここへ連れて来たかは知らないけど。返して貰うわよ」
ゆっくりライへ近寄るベルビナ嬢。まだ頭が混乱しているのかライが生気の無い瞳をベルビナ嬢へ向けた。