幼女くノ一のおもらし
イネという天才くノ一がいた。若干五歳という幼さでくノ一として活躍する若すぎる、いや幼すぎるくノ一だ。赤子の頃に親に捨てられたイネは忍者のカツに拾われて忍者くノ一として育てられた。それがイネには忍者の才能があったようでわずか一年で一人前に。それから諜報、窃盗、暗殺など八面六臂の大活躍。幼児であるがために誰一人として彼女を疑う者はいなかった。そのせいもあって仕事は比較的簡単であったのだ。もちろんイネが幼児としてはあり得ないほどに賢く、また動けるからでもある。五歳となる頃には大人の忍者やくノ一達と共に活躍する一人前のくノ一となっていた。
「イネよ、お前は本当に素晴らしいな。幼児故に誰にも疑われない。それでいて幼児でありながら賢く、そして動き回れる。流石に力では大人達には敵わないが、その俊敏さ、気配の消し方、暗器の扱いはとても長けている。我が子として誇らしいぞ」
「ありがとうございます父上。全ては父上の教えのおかげであります。ボクはこれからも父上の為にくノ一の仕事に励みます」
イネは更に幼児としても可愛らしく美人だった。大人になれば男どもを手玉に取るであろう美貌を幼いながらにして放っていた。腰まで届く黒髪ロングヘアー、凛とした顔付き、華奢な手足。服装はマイクロショート丈の緑色の着物。股下少し程度しか丈が無く、また袖も無く、手足はほぼ全てが露出している。黒のニーハイソックスに緑の靴を履いている。袖の下にはナイフや手裏剣、縄等の暗器が収納されている。何故彼女がこれ程までに露出の高い服装をしているかというと一番は動きやすいからである。丈の長い普通の着物では走りにくいのである。また本人の希望でもあった。丈の短い着物の方がかわいい。と、何かの本で読んだことがありそれがずっと頭にこびり付き、結果今の形になったのである。
カツはイネの服装について特に口出しはしなかった。くノ一や忍者に制服なんてものはなく、各自自分の思うがまま、着やすいもの、役に立つ服装を追求している。結果、くノ一は皆、着物の丈が短くなっている。だからイネの着物もそれと同じと思ったのである。それを差し引いても、股下少ししか丈の無いイネの着物は短すぎるが。しかしそれは問題も引き起こしていた。
イネはこの丈の短い着物を普段着として着ている。普段も仕事時も同じ着物だ。その上、丈があまりにも短いので目立っていた。それが人の目につき、やがて丈の短い着物を着た幼女が訪れた屋敷では禍が起こる、と一部の人の間では伝えられているのである。その事についてはカツもイネに注意したがイネは聞く耳を持たなかった。イネの唯一の我儘である。幼児故のこだわりなのだろう。しかしその日の夜に起きた不運はこのこだわりが招いた結果とも言えるだろう。
その日の不運。それはイネにとって初めての屈辱と失態であった。それは寒い季節の十一月下旬の頃。とある組織の手に渡った古文書を手に入れる仕事をしている時の事だった。
イネは屋根裏に身を潜みながら古文書を探していた。しかし中々見つからず苦戦していた。養父に期待されている仕事なので必ずこなしてみせようとイネは息巻いていた。それにこれまでいくつもの任務もこなしてきたので今回も出来るという自信と油断があった。それが失態を招いた要因の一つ。もう一つは……。
(な、なんでこんな急に……おしっこ……)
突然の尿意だ。こんなはずじゃなかったのに。イネはまだ幼児で体も小さい。またトイレも近い。尿意に関しては人一倍注意をしていた。任務前に水は飲まないようにしていたし、水分補給も必要最低限に留めていた。その甲斐もあって過去に任務中に尿意を催した事はあっても失敗は無かった。しかし、今回の突然の尿意はとても我慢出来ないような強烈な尿意だったのだ。
何故、常に気を付けていたイネが、突然強烈な尿意を感じるに至ったか。一つは寒さ。この日はいつにもまして寒かった。例年よりもはるかに。予想外の寒さが尿意を早めた。
もう一つは……毒。
実はイネについてよく思っていないくノ一も少なくなかった。誰もが彼女をかわいいだの天才だのともてはやした。しかし中には小生意気な餓鬼だと。酷い目に会えば良いのにと思う者もいたのである。そんな、イネをよく思わない仲間の一人が、昨晩イネが寝ている時に毒を盛ったのである。それが強力な利尿薬。死ぬ程では無いが尿意のせいで任務を失敗させるか屈辱を与えてやろうと言うものだ。
イネは真面目だった。任務中にトイレの為に任務を中断する事は無かった。これまでも。だからこそその経験と信念が、今回の場合、判断を鈍らせた。
潜入した時から仄かに感じていた尿意。我慢出来ると思い続行。それからしばらくして突然の強烈な尿意へと変貌したのである。イネは屋根裏で動けないでいた。動いたら漏れてしまうかもしれない。それ程の強烈な尿意なのだった。
「ふぅ、ふぅ……。我慢しなきゃ、我慢我慢……うぅ……」
息が上がって太腿がよじれるのを止められない。それでも物音は立てないように意識する。ほんの僅かだが太腿を捩る。股ぐらを両手で抑えないとおしっこが噴き出してしまいそうだが、両手が塞がるような事はしたくないために、着物の裾を片手で軽く握る事で代替。それでも事態が良くなるわけではなかった。
「と、トイレに行く? でも任務中にそんな事……でももう我慢が……。でもでも……任務がある……我慢だぁ……!!」
体を震わしながら固まるイネ。必死に我慢する。おしっこの事で頭がいっぱいで物音を立てそうになったその時。
「古文書はどこだっけか?」
「ああ。それなら……」
下方で聞こえた確かな話し声。イネは咄嗟に耳を傾けた。
「本を隠すなら本の中。図書室の中さ。図書室のどこかは俺も知らんがね」
図書室。手がかりが分かった。イネの中に希望が芽生えた。見当もつかなかった隠し場所が分かったのである。
(図書室にあるんだ。よし、早速……)
動こうと片足を上げた。その時。ジョッ! とおしっこがチビった。イネは反射的に着物の裾を握っていた手で股を抑えた。胸がバクバクとうるさい鼓動を打ち鳴らす。我慢が出来ないと知らせてくる。
(い、今ちょっとだけ……。ダメダメ。あとちょっとの我慢だから……。絶対我慢するの……!!)
深呼吸をして、股を引き締めて再度進み始めるイネ。動く度に膀胱の中でおしっこが揺れているのが分かる。気を抜けば噴き出してしまいそうなおしっこを抑えつけながら、ほぼ気合だけでその場を進み始めた。
そしてイネは図書室の屋根裏へとやってきた。人がいない事を確認して屋根裏から飛び降りる。立った状態で下腹部を抑えて内股で腰が引く。無意識に。動けそうにもないが動かないと古文書を探せないので少しずつ動く。体が震えてしまう。体が尿意に支配されて自分の体ではないようだ。こんな尿意は生まれて初めてである。それでも決して漏らさない。任務を遂行する。鋼の意志でイネは動いた。
「ここでもない……ここ? でもない。……どこだ?」
震える手で本を掻き分ける。股を抑えたい衝動をぐっと堪えて。背が低いので腰を引いていては手が届かないので背を伸ばして。
ジョッ!
(っ!!)
またおしっこがチビる。イネの動きが止まり、全ての力を股に集中。それ以上は出なかった。もうパンツの染みはかなり広がっているであろう。パンツが濡れて張り付いているのがわかる。これ以上は漏らせない。イネは気を引き締めた。
その時である。手に本が触れて、本が数冊落ちてしまった。その音は静かなはずの図書室としてはとても大きすぎる音だった。案の定、その音を聞きつけて兵士達がこの図書室へと駆け込んできた。イネは囲まれてしまった。
「餓鬼、ここの人間じゃないな? 何してやがる?」
イネは頭が真っ白になったがすぐにフル回転。何でもない幼児に扮してやりすごそうとする。
「あ……ボクはこの屋敷を探検しようと思って入っただけです!」
その間にも足が震えるのを止められない。何とか平静を装うがとても無理な話であった。尿意のせいで頭が回らず自分が何を言ったのかも思い出せない。おしっこの事で頭がいっぱいだった。
しかしこれまでも危ない時は無邪気な幼児のフリをしてやり過ごしてきたのである。今回もそれで切り抜けてやろうと考えていた。
「そうか。文字は読めたか?」
「へへへ。さっぱりです」
「悪いがこの屋敷に不法で入った以上、返すわけにはいかん。拘束させてもらうぞ」
「え!? そ、そんなぁ……。ぼ、ボクもう帰りますから許してくださいー……」
「ダメだな。ここを見られた以上は誰であろうと許さん」
こうしてイネは拘束された。とある地下室にて、両腕を後ろで柱に縛られて固定されてしまった。足は動くが、つま先立ちになるように体も吊るされている。どうしようもなかった。しかも袖を確認されて手裏剣やらが出てきたのでくノ一と知られて敵視。兵士達はイネを囲み、睨みつけていた。
「惜しかったな餓鬼。誰の命令か、また目的は何だったのか。教えたら解放してやらんでもないぜ?」
イネは諦めた。くノ一である事が知られた以上、白を切るつもりは無かった。しかし敵の要求は絶対に飲まないと心に誓った。
「い、言えません」
「ならずっとそこにいろよ」
「……」
沈黙。静寂が場を包む。ただ、イネの体が捩れ、縄を擦り、地を足が踏む音だけが聞こえる。激しい尿意に襲われて、イネが体の動きを止められない。隠そうとしても太腿が捩れて足踏みが止まらず、腰を引こうと全身が震える。唇を噛み締めて必死に耐えているがきっとこのままでは失禁する事になるだろう。その事をイネは自覚していた。しかしこの期に及んで尿意を告白し、トイレの許可を貰う事は女としてもとても恥だと思い、言葉が出せなかった。
「ふーふー……」
息が上がる。その様子にいよいよ見張りの者達は違和感を感じた。やけに落ち着きが無い様子。ふと太腿を見てみると何やら液体の伝った跡が内腿に見える。それを見て、彼女が催している事に彼らは気付いた。すると彼らに邪悪な笑みが浮かんだ。
「太腿が少しだけ濡れてるぜ? もしかしてお前、小便我慢してるのか?」
「え!?」
イネは太腿に意識を集中する。すると確かに濡れているのが分かった。どうやらおチビリを繰り返して、遂にパンツから少しだけ漏れてしまったのである。なんと恥ずかしい。イネは耳まで真っ赤になって目を瞑った。おもらししてる。人前で、囲まれて、男達に、大人達に見られながら。
イネは遂に観念した。
「…………おしっこを我慢してて、もう、我慢出来ません。お願いします。どうか、トイレに行かせてください」
涙声でイネは懇願した。この期に及んで隠す事も出来ないと判断したイネはとにかく今の苦しみから解放されたい一心で、彼らに願った。しかし彼らは無情にもそれを拒否する。
「断る。お前の仲間達の事、全て白状すれば行かせてやるよ」
「そ、そんなとこ、出来るわけないじゃ無いですか……」
「ならそこで漏らせ。俺達は眺めている事にした。見ててやるからほら。ほら」
「……くっ……そ……」
漏らしたくない。そんなはしたない事は! おしっこはトイレでするものである。こんな場所で、人に見られながらするものでは無い。恥ずかしい。そんな事耐えられない。
イネは必死に我慢した。希望の無い我慢地獄。漏らす未来しか無いのに。いっそのこと我慢せずに漏らしてしまえば良いのだ。我慢する必要なんて無いのだから。しかしイネにはそれが出来なかった。恥だと思っているからだ。人に見られながらトイレ以外の場所で出す。まさに失禁。そんな事したくないのだ。
くノ一として養父に信用され信頼されている。仕事もこれまでこなしてきた。今まで危ない事があっても切り抜けてきてきた。それを誇りに思っていた。それが、今、崩れ去ろうとしている。イネは必死に耐えた。我慢するしか道は無かった。しかし……。
ジョジョジョ……。ジョジョっ!
「ああっ!!」
おしっこが多めにチビった。パンツを濡らして、太腿を伝って地面にポツポツと音を立てて落ちていく。その様を見て笑う大人達。イネは遂に泣き出してしまった。声を殺しながらただ耐える事しか出来ない。すると、。
「ほれ見てみろよ、こいつ漏らしてるぜ」
彼らの一人が指でイネの着物の裾を持ち上げる。結果、濡れた白いパンツが顔を出した。それを見て歓声を上げる大人達。老若男女達。
「や、止めて! お願いだから止めてください!!」
「だったら白状しなって」
「だ、だから無理です!!」
「強情なやつだなぁ!? そら!」
「いやぁっ!?」
彼はイネのパンツの上から股に触れて揉み始めた。それがイネにとってどれ程強烈な刺激だろうか。とてもおしっこを我慢出来るわけが無く、揉まれる度にジョジョ! ジョジョ! とおしっこが溢れ出た。イネは泣きながら首を振る。
「止めて! 止めて! 出る! 出ちゃううう!!? イヤだぁああ……!!」
「全部出して楽になれよ! それとも白状するか!!?」
「しませ……しませんんんぅぅうう!!!」
「なら漏らしちまいな!!」
男はイネの下腹部を強く押し込んだ。叫ぶイネ。直後、イネは失禁した。
ジョジョジョジョジョジョジョジョジョーーーーっっっっ!!!!!
ジュビーーーーーっ!!! ジョロロロロロ!!!!
「ああああああ!!!」
溢れ出るおしっこ。それをイネは止められない。括約筋に力が入らない。意思に反しておしっこは溢れ出る。イネは失禁した。それを男達に見つめられながら。
男達は興奮しているのか顔を赤くして陰部が立ち上がっていた。息を荒くする者も。中には気の毒だと思う女達もいた。しかし敵に情けをかけてはいけない。非情に徹した。
やがて失禁は収まった。イネは恥ずかしさに耐えられず声にならない声を出しながら泣いていた。おしっこがあふれるように、涙を零して顔を真っ赤に腫れ上げながら。
「うぅぅ!! ううううっ!!! うわあああ…………!!」
泣き始めるイネ。更におしっこが出てくる。しかしそれを止めることもその気力もイネには残っていなかった。
「もう一度言う。全て白状するなら何もせずに解放してやる。白状せんか?」
「……しない。……しません!! 仲間を売るなんて、絶対に!!」
その仲間の一人に毒を盛られた事も知らずに、イネはそれだけは固執した。すると男達はニヤニヤと笑い出す。その薄ら笑いに不安を覚えるイネ。
「そうか。なら仕方ねぇな」
そしてイネは彼らにレイプされた。服を破かれて裸にされて何度も陰部を突き入れられた。イネは泣きながら許しを乞うた。その度に白状するかと問われイネは拒否し続けた。夜までレイプされた挙げ句、次は拷問された。何度も鞭で撃たれた。裸の体を隅々まで。イネは初めての痛みに号泣した。まさに地獄だった。
そんな生活が数日間続いた。やがてカツが助けにやってきたおかげでイネは九死に一生を得た。しかしその心と体の傷は深く、イネは数カ月の間、口も聞けず、当然くノ一としての仕事も出来なかった。
「父上、申し訳ありません……」
ただ虚ろな目でそう呟き続けるのだった。




