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兄さんと違ってボクは我慢出来るからね! ホットパンツ少女のおもらし

 兄さんと違ってボクは我慢出来るからね!


 彼女――下田ユキが自分よりずっと年上の義兄、山中明にそう告げたのは一昨日のLINEでの事だった。事の発端は夏休みの真っ只中。ユキと明がテレビゲームをしていた時、ユキが勝ったら明が自身の自動車で、東京の遊園地に連れて行くという約束をしてユキが勝った。そこで三日後に二人だけで遊園地に行く頃になったのだ。二人は東北の福島県に住んでいる。東京の遊園地まで、高速道路を使って片道約四時間もかかる距離だ。明はどうしてこんな約束をしてしまったのか、年下だからゲームも弱いと高を括っていた自分を呪いたい気持ちになっていた。しかし明にとってユキはとても可愛い従兄弟で年の離れた妹のようだと思っていた。こうなった以上話を断る訳にはいかない。ユキは何年も前から東京の遊園地に行きたいと思っていたようで、まさかこんなにあっさりと明が承諾するとも思っていなかったらしく、明が承諾した時はとても嬉しそうだった。それでその後のLINEで何故ユキがあんな事を呟いたかと言うと相応の理由があった。

 遊園地についての話題となった際に、明が「女子はみんなおしっこが近いのでトイレには行列が出来る。だからユキちゃんも早めに済ますように」と伝えたのだ。ユキは自分は他の女子とは違う。膀胱が大きいんだと自慢した。それでユキが語りだしたのは学校で朝から放課後までおしっこを我慢して帰宅してから用を足したと。余裕だったと話したのだ。


 ボクの膀胱は兄さんのよりもずっと大きいと思うよ。ましてや他の女の子なんかよりも遥かにね。

 なんで学校のトイレに行かなかったんだよ?

 まぁ色々あってトイレに行きそびれたの。そんな時友達と学校のトイレは臭いよねって話になって。そしたら女の子はトイレ近いよねって話になって。ボクは違うよって言ったの。そしたら家まで我慢してみせてよって言われて。それで。

 ひぇ〜、とんでもねぇな小学三年生……。

 ボクはその時余裕だったよ。だから他の女子とか体のデキが違うんだよ。きっとクラスで一番だよ。自負してるもん!


 という風にユキの自慢話がしばらく続いた。すると何故か矛先が明の方に向けられたのだ。


 そう言えば兄さん、お父さんから聞いたけど中学生の時におしっこ漏らしたんだって?

 いぃっ!? 俺の黒歴史をなんでぇ!?

 ぷーくすくす! お父さんが笑いながら教えてくれたんだよ。本当なの兄さん?

……ああ。……ああ、そうだよ。人には誰しも失敗のひとつやふたつあるものさ……。


 ユキの言葉通り、明は中学二年生の時におしっこを漏らしたことがある。修学旅行のバスの中でだ。明の学生生活最大の失態。卒業するまでクラスメイトに話題の種にされ、馬鹿にされた。全ては自業自得。運が悪かったのだと、言い聞かせるものの、その時の恥ずかしさは尋常ではなく、一ヶ月程不登校になった程だ。それを笑い話で自分の娘に話すなんて……。

 それから明は必ず休憩時間など空いた時間にはトイレに行くようにしている。あまり催していなくとも、だ。その事はユキにも伝わっており、いつもいつもすぐにトイレに行くよねと言われたことがある。きっと父親に失態を聞かされて納得した事だろう。

 これでは年上の威厳なんてあったもんじゃない。小さい頃からお年玉三百円上げていたというのにこれでは嫌われてしまうのではないか。


 あっはっは! 本当なんだ兄さん!? 男の人は女の人よりトイレを長く我慢できるって聞いたけどデタラメみたいだね。兄さんと違ってボクは我慢出来るからね!


 絵文字で笑う顔を添えてそう言ってきたユキ。どうやら完全に舐められているようだ。明はかなりのショックを受けてしまった。子供の頃の失態が、大学生になり、二十歳を過ぎて、大人になって今また牙を向くなんて。忘れたくとも忘れられないトラウマ。それを可愛がっていた従兄弟から刺されるとは。LINEを見ながら明の目には涙が浮かばれていた。可愛い従兄弟に黒歴史を掘り返される事実が明はとても嫌だった。


 そんな事言うならユキちゃん。ユキちゃんは朝から夕方までおしっこ我慢出来るんだろ?

 当たり前じゃん! 余裕余裕! 兄さんと違ってね。くすくす!

 だったら遊園地に行く日、朝目覚めた時からトイレに寄らないで帰ってくるまで我慢してみなよ? 余裕なんでしょ? 出来るよね?


 するとユキは少しの間黙り込んだらしく、返信が遅くなった。その間、なんて大人気ない事を言ってしまったのかと後悔した明だったがそれから程なくユキからの返信が来た。


 当然! 余裕だよ。それなら兄さんの言う通り、その日は遊園地から帰るまでおしっこしないようにするけど?

 ほ、本当だろうな? 無理するなよ。片道四時間だよ? 往復八時間だ。冗談だから忘れてくれ。

 ふーん。それなら良いけど。


 そこでその話題は終わった。ユキは遊園地に連れて行ってくれるなんてありがとう、楽しみにしているよと言って、その日のLINEは終わった。とそんな感じで三日が過ぎた朝、明は車に乗ってユキの家へとやってきた。

 ユキの家には両親と一人娘のユキがいた。ユキは行ってきますと両親に告げる。するとバックを持って明の前に出た。そんなユキの格好には明も慣れてしまったがやはり九歳には早いのではないかと思うような格好だった。まず上は白いへそ出しキャミソールで胸元しか隠していない。上には下着は着ていないようだ。胸がまだ未発達で膨らんでいないからだろう。腹回りが露出している。こんな格好子供にさせるのかと思いたくなるが、明はもともとロリが好きな人なので何も言わない。そして下は下着のパンツと見紛うような、丈の短いホットパンツ、丈の短い靴下に靴を履いている。このホットパンツはかなり丈が短い。股下0センチと言うべきかお尻の肉がはみ出ている。前の方から注意して見てみると、布地と皮膚の間に隙間がある。明は以前見たことがあるが、この隙間からは下着のパンツが少しだけ見える。いつも白のパンツを履いているのも知っている。今日もそうだろう。しかし良く娘に着せたものだと明は感心していた。どうやらユキの父親はかなり攻めているようである。ユキも夏場の今頃は毎年この格好なので特に違和感を持っていないようだ。クラスの男子からの視線が心配だが、ユキは気が強い性格なので大丈夫だろう。それにしても何故ここまで丈が短いのだ。……と、このように明は夏頃にユキに会うといつもそのように感じていた。勿論口には出さないが。


「さ、行こう兄さん! 遊園地楽しみー!」

「おう、そうだな。遊園地に着くまで長いから寝てて良いよ」

「りょーかい!」


 ユキの服装に、明はいつも目のやり場に困っている。その上ユキ自身も明をからかうような素振りをするのだ。ませた子供だと明はつくづく思っていた。明はもはや三日前のLINEでのやりとりなどすっかり忘れていた。

 そして二人は明の車に乗った。明は当然運転席。ユキは助手席だ。シートベルトを締めて発進する。するとユキはバックの中に手を突っ込んで中身を取り出した。中身は五百ミリリットルのミルクコーヒーだ。それを片手にごくごくと飲み始めた。水分補給は大事だ。ましてや今日のような夏日なら。早速飲み始めるなんて。遊園地まで四時間。利尿作用のあるコーヒーを飲んで大丈夫かなと明は思った、まぁトイレに行きたくなったらパーキングエリアに寄れば良いだろうと。三日前の嫌な記憶が思い出される。明は顔を横に振り忘れるようにして運転に集中した。

 それからユキはちびちびとコーヒーを飲み始めた。一本飲み干すと新しく二本目を取り出した。また五百ミリリットル。今度はお茶だ。明は何本入っているのと聞いた。ユキは十本と答えた。


「だって暑いんだもん。水分補給しないと熱中症になるってお父さんもお母さんも言ってたし。それに喉渇くからさ」

「まぁ別に良いけどおしっこしたくなっても知らんよ」

「平気だよ。ボクの膀胱は大きいからね。兄さんとは違うんだから!」

「はいはい……」


 それから更に数時間。ユキは途中で眠りについていたが明に起こされて目を覚ました。もう少しで遊園地に着くよ、と。既に四時間が経過しており、後十数分で遊園地に着くとのことだ。ユキが持ってきたドリンクは既に全て無くなっていた。この時、ユキは少しだがハッキリと尿意を感じていた。

 三日前のLINEの話。明に言われた事。朝から、夜家に帰るまでおしっこを我慢してみろ。その言葉にユキは従ったのだ。自分なら我慢できると思っていた。それに大好きな明兄さんの言葉である。従わない理由は無い。そしてもう一つ、我慢してみたいと思ったのである。

 かつて学校で一日中我慢したあの日。何度も途中でトイレに行こうと思い至ってその都度堪えた。そして帰宅してからようやく出した時の快感が忘れられなかった。明にはその時余裕だったと言っていたが実は割と切羽詰まっていた。普段なら必ずトイレに寄っているくらいには強力な尿意。我慢を始めたのは二時間目の休み時間からだ。帰宅してからトイレに行くまでだいたい七時間程。今日はあの日よりも我慢する。そして家に帰ってからいっぱいに解放するのだ。遊園地から家まで往復八時間、遊園地で遊ぶのがおそらく四時間程。計十二時間である。少し心配だがユキはきっと我慢出来るだろうと高を括っていた。楽観視していたのだ。

 ハッキリとした尿意に僅かに太腿を揺らす。しかし明に悟られないようにほんの少しの間だけ。明に我慢している事を告げて、ちゃんと我慢しきって流石だと褒められたい気持ちもあるが悟られるのは恥ずかしい。今日は遅くなるなら明の家に泊まるようにと両親に言われている。その時にさらりと告げてしまおうと思っていた。

 そして軽い昼食を済ませて二人は遊園地の様々な遊具で遊んだ。絶叫系アトラクションやらメリーゴーランドなど――地元では味わえないような楽しい数々。ユキはとても楽しく感じていた。尿意さえ無ければ純粋に楽しめるのに。この時、我慢なんてせずにトイレで用を済ませてしまおうかとかなり悩んだ。せっかくの遊園地を最大限楽しめなくて良いのか、と。しかし朝からここまで我慢してきて今更出してしまうのは如何なものか? そう言って迷いながら更に一時間。ユキはかなり強烈な尿意に襲われていた。もう気を抜けば漏らしてしまいそうである。意識して股を閉めないと出てしまいそうなくらいに強烈な尿意。まだ五時間だが、学校の時とは違い、意識してたくさん飲み物を飲んでいたのが効いてきたのだろう。下腹部はパンパンだ。既に学校から帰宅していた頃の尿意に近い。


 (うう、凄くおしっこしたい。やっぱり意地張らないでトイレに行っちゃおうかな……)


 意識して止めないと足が揺れてしまう。ユキは周りに悟られないように足の動きを止めて普段通りを装った。そこで、トイレに行こうか悩んだ時、明が唐突にユキに声をかけた。


「ユキちゃんちょっと来て」

「え?」


 手を繋いでユキを引っ張る明。ユキは突然引っ張られて漏れそうになって焦ってしまう。


「に、兄さん? 急に何よ?」

「トイレだよ。はぐれたら面倒だからユキちゃんも来てくれ」

「トイレ……」


 明はユキを引っ張り、遊園地内のトイレへとやって来た。男子用女子用共に行列が出来ている。明は溜息を付いた。


「はぁ、混んでるなぁ。やっぱり人が多いや。俺は並ぶけどユキちゃんはトイレ行く?」

「え、えーっと……」


 行くか行かないか――悩んでしまい言葉が詰まるユキ。すると明がニヤリと笑って笑みを浮かべてきた。


「そういや、ユキちゃんは俺と違っておしっこ我慢出来るって言ってたよな。それならトイレ行く必要無いよなー」


 その時の明の相手を小馬鹿にしたような笑いに、ユキはカチンと頭にきてしまい声を荒げた。


「そ、その通りよ! ボクは兄さんとは違うんだから! まだまだ余裕だからトイレには行かないもん! 兄さんは一人でさっさとすっきりしちゃえば良いのさ!!」

「へいへい、わかりましたよ。それじゃそのへんぶらぶらしててくれ。遠くには行かないでね」


 ユキはプンプンと怒りながらトイレから離れた草むらに向かった。ユキは決心が付いた。何が何でも、家に帰るまで我慢してやろうと決めた。あんな事言われては引き下がれない。ユキにも意地があるのだと。そうやって握り拳をして一人、誰にも見られていない場所で燃え上がる。その時だった。急な尿意の波がこみ上げてきた。急激に膨れ上がった尿意にユキは驚く。


「あっ!?」


 強烈な尿意に尿道口がひくひくと震える。ユキは無意識に両手で股を抑えた。内股になり、腰を低くする。そしてもじもじと両腿を擦り合わせる。するとその仕草で少しだけ尿意が和らいだ。そのためユキは思わずその仕草のままになっていた。


「この尿意、かつてない強さ……ヤバいかも?」


 その時、周りの視線を感じた。数人がユキの方を見ている。ユキは恥ずかしくなって咄嗟に股から手を離し、直立した。そして場所を移動して広場へと出た。明には見られていないだろうか? ふと男子トイレの行列を見てみると明が険しい顔で前を睨んでいた。こっちには見向きもしていない。ユキは安心して胸を撫で下ろした。

 そして、ユキの目は燃えていた。


「この程度の尿意が何よ。兄さんとは違うって見せてやるんだから! ボクなら出来る。頑張れ下田ユキ! あなたなら出来る!」


 ユキは自分に言い聞かせるように叫んだ。そして二度と外で我慢仕草をしないようにと決めた。

 それからユキはトイレを済ませた明に頼んで飲み物を購入。お茶やコーヒーの五百ミリリットルのペットボトルを数本買って飲み始めた。明が飲み過ぎじゃないかと聞いてきたが喉が渇いたと言って通した。帰路の時に我慢してると打ち明けて、家まで我慢出来る事を知らしめてやろう。その為に、たくさん飲んで膀胱が大きい事を示してやるのだと。

 そしておしっこを我慢しながら遊園地で遊ぶ事――四時間。時間はあっという間に過ぎていった。しかしユキにはとてもとても長い時間だった。尿意は凄まじく、手で股を抑えていないと中身をぶちまけてしまいそうな強烈な尿意。我慢し切れず、明の見ていない所でさり気なく股を抑えたりしていたがそれでは足りなくなってきている。しかし切羽詰まってると思われたくないのであくまで平静を装う。それに他の人にはもっと知られたくないのだ。

 下腹部が重く、歩き方もぎこちない。息が乱れるのを止められない。脂汗が湧いてくる。それでも必死に平静を装い、明や他の人に股を抑えている所を見られないようにしていた。股は抑えないように、けれども太腿を両手で強く握り締める。すると明が声をかけてきた。


「遊んでたらこんな時間になっちゃった。ユキちゃん、そろそろ帰ろう? これ以上いたら遅くなっちゃうよ」

「……そ、そうだね。そろそろ帰ろうか」


 二人は明の車に向かって移動を始めた。明の後ろを歩くユキは下腹部や太腿を手で交互に擦ったりして落ち着きが無かった。既に股の感覚は無くなってきている。おしっこが中から出ようとしている圧力がハッキリと強く感じられた。それでもユキは絶対に家まで我慢してやろうと意地になっていた。

 その時、尿意の波がやってきた。数倍に膨れ上がる尿意。そして、ユキが驚く間もなく、ほんの少しだけおしっこが出てしまった。おチビリである。


「っ!?!!?」


 ユキは咄嗟に両手で股を抑えた。それでも尿意に耐えきれず思わず膝を落とした。踵で尿道口を抑えてその場に蹲る。激しい尿意はおしっこを出そうとまるで激流となってユキの下腹部と股を襲う。するとまたおしっこが僅かに、意思に反して出てしまった。


 (ダメダメダメ!! 我慢するの家まで! 絶対に! 出るな出るな出るな……!!!)


 すると尿意が僅かに収まり、おチビリが収まった。それでも激しい尿意には変わりが無い。そして明らかにパンツには染みが出来ている。かつて学校から帰宅する時もおチビリはしなかったのに。これは本当に非常事態だ。しかしユキは必ず我慢してやると心に決めた。


「ユキちゃん? 何してるの?」


 ふと顔を上げると明がこちらを心配して近寄ってきていた。ユキは顔を真っ赤にして立ち上がり平静を装い、顔に笑顔を浮かべた。


「い、いや……なんでもない。平気」


 尚も込み上げる激しい尿意。しかし今は明が近くでこちらを見ている。ユキは意地でも股や太腿に触れないよう、筋力だけで股をギュッと締めて我慢する。


「早く行こう? ボク、疲れちゃった」


 ユキは明の前に出て歩き始める。

 この時、明は見てしまった。ユキが蹲っている所を。股は膝に隠れて見えなかった。しかしどこか具合が悪いのだろうかと考えを巡らした。すると気付いた。今日、ユキと出会ってから今まで、ユキはたくさん飲み物を飲んでいたのに、そしていつと一緒にいたのに、ユキがトイレに行った所を一度も見ていないと。そこで三日前のLINEを思い出した。もしやユキはおしっこを我慢しているのではないか? そういえば今日一日、ユキは落ち着きが無いように見えた。何か焦っているような……。

 何故気付いてやれなかったのかと明は悔いた。同時に、三日前のユキの言動……漏らしてしまえと思ったものだ。もし我慢しているならば、漏らさせてやろうかなと少しだけ考えが浮かんだ。


「ユキちゃん、その前にトイレ行こうよ。俺、行きたくなっちゃった」

「え? わ、わかった。そうしよ」


 そして二人はトイレに向かった。トイレは空いていた。ユキはトイレの前で立ち止まっていた。明が声をかける。


「ユキちゃんはトイレ行かなくて良いの?」

「うん。ボクはいい。行きたくないから……」

「でもユキちゃん、今日一度もトイレに行ってないんじゃない?」

「そうだっけ? ……お、覚えてないや」

「これから車で移動するから途中でトイレには中々行けないよ。今はしたくなくても行った方が良いよ」


 ユキは太腿を握りしめて笑顔で顔を横に振った。


「ありがと。でもボクは本当に大丈夫なの。兄さんは早く済ませてきなよ。待ってるからさ」

「……わかった」


 明はトイレの中へと入っていった。するとユキはせきを切ったように足をもじもじと動かして股を両手で抑えて中腰になった。尿意は凄まじく、股を抑えていないと我慢出来ない程になっていた。今なら誰も見ていない。そう思ったら自然と手や足が動いてしまったのだ。


「我慢する……我慢するの……。ボクなら出来る……おしっこ我慢出来る……。この程度で……屈しない!!」


 すると明が戻ってきた。ユキは咄嗟に普段通りな姿勢へと戻った。明はこの時、確かにユキが股を抑えてもじもじしているのを見た。明はユキがおしっこを我慢している事を確信した。おそらく三日前の言葉を気にして我慢してやろうと思っているのだろう。だとすると朝から今まで我慢しているのは大したものだと明は感心した。しかし車の中で粗相されても困る。だが漏らす所は見てみたいし、漏らさせたい。そこで明は一計を案じた。


「そうだ。ユキちゃん、喉渇いてない? 冷たいコーヒーでも買ってくるよ」

「え?」


 明は歩き出した。ユキは困ったなと思った。これ以上水分なんて取りたくない。しかし不信がられたく無いので何も言わずに承諾した。

 明としては更に水攻めしてやろうとの考えもあったが、一番は新しい空のペットボトルにおしっこを出せるようにするためだった。車の中で我慢出来なくなっても空のペットボトルがあればそこに出せる。ホットパンツなのでそれを脱がないといけないためパンツが丸見えになるが、おしっこが我慢出来ない状況ではそんな事気にしていられないだろう。おもらしとは厳密には違うが、ユキの放尿とパンツをモロに見られるならば安いものだ。そして車中で漏らされるよりは遥かに良い。と、こういう考えだった。

 それから明は五百ミリリットルの冷たいコーヒーを買ってユキに渡した。ユキはありがとと言ってそれを受け取ると早速飲み始めた。コーヒーは利尿作用もある。きっとこれから更に苦しむんだろうなと明は思っていた。

 そして二人は車に乗り込み帰路に立った。


「そ、そうだ。兄さん。お父さんとお母さんに言われたんだけど、帰りが遅かったら兄さんの家で泊まりなさいって言われたの。今日は兄さんの家に泊まりたいな」

「そう? そういう事なら、俺は全然良いけど」

「兄さんの家には古いゲーム機があるから好きなんだよね」

「はは。昔のゲームも味があって良いよ。俺は新しいゲームの方が面白いと思うけどね」


 車で移動を始めて十数分。コーヒーは既に空になっていた。助手席に座っていたユキは既に我慢の仕草を抑えられなくなっていた。明が運転に集中している事を良いことに、右手を使ってペットボトルで股付近を隠しながら、左手で股をさり気なく抑える。そして両腿は少しだが、常にもじもじと擦り合わせる。そうしていないと漏れてしまいそうだからである。そして無意識に息が上がっている。それにはユキ自身も気付いていない。そして明はそれに気付いている。一度は失禁するまでおしっこを我慢した身である。限界まで我慢するとどうなるかは大体知っているつもりだった。


「ユキちゃん、おしっこ我慢してたりする?」


 明の言葉にユキは胸が飛び出る思いがした。バレないようにしてたのにどうして? と。


「な、なんでそう思うの?」

「いや、なんとなく。カン?」


 ユキは打ち明けようか迷ったがあとは帰るだけだからと打ち明ける事にした。


「まぁ……ちょっとだけね。こないだ兄さんが我慢してみろって言ってたじゃん。それでだよ」

「半分冗談だったんだけど本当に我慢するとは……。朝から我慢してるなんて凄いじゃん。流石!」

「へへん! 兄さんと違ってボクは我慢が得意なのさ。膀胱とか大きいし」

「へぇ……。それならさ股を抑えたりしてないよね? まだまだ余裕なんでしょ?」

「っ!!」


 ユキはドキリとして咄嗟に股を抑える左手を離した。


「し、してないよ? するわけ無いじゃん!」

「そう。さっきから息も上がってるけどね」

「……」


 ユキは恥ずかしくなって黙り込んでしまった。


「もし我慢出来なくなったらそのペットボトルに出せば良いからね。車に漏らされたら困るからさ」


 するとユキは明を見上げて叫んだ。


「そんな事しないもん! ボクは我慢出来るの! 兄さんとは違うもん!」

「そりゃ大したもんだ。まぁいつまで強がりが言えるかね」


 それからユキは尿意の波が来ても股を抑えたり、足をもじもじさせなかった。意地でも平静を装い我慢した。ペットボトルはホルダーに置いて、じっと前方の窓を見ていた。そうしている内にも尿意は強くなる一方。激しい尿意は股の感覚を無くさせて、中から出ようとする圧力を肌で感じつつも、尿道口を引き締めて必死に抑えている。歯を食いしばり、険しい表情になりながら、たまに下腹部を擦ったりしてひたすら我慢した。

 明はユキがかなり切羽詰まってるはずだとわかっていた。我慢の仕草からしてそうだし、朝から今までの経過時間と今日飲んだ飲み物の量を考えれば自然とわかる。明の家まで残り四時間近く。とても家までは耐えられないだろうと明は踏んでいた。その内我慢出来なくなって、諦めて空のペットボトルに放尿するだろうと。その為に帰路に着く前にコーヒーを買ってやったのだ。ユキは意地になってペットボトルに放尿なんてしないと言っているが、我慢出来なくなればチビリ始める。そうなれば諦めるはずだと。それでも念の為に、明は車のスピードを出来るだけ上げて、早めに帰宅出来るようにした。

 そして、一時間程が経過した。ユキは唇を噛み締めて必死に我慢していたが、我慢が苦痛になって目を赤くしていた。涙目になっていた。激しい尿意は相変わらずでたまに来る波に襲われては必死に耐えていた。間違いなく、人生で最大の尿意だった。かつての学校での我慢とは比較にならない程の尿意がそこにはあった。時折、ペットボトルに視線を向けては顔を横に振って拒否する。折れそうな心を気合だけで奮い立たせていた。


 (我慢我慢我慢……、絶対に家まで我慢するの……!!)


 歯を食いしばり、己に言い聞かせるユキ。本当はペットボトルの中に出してしまいたいと心の何処かで思っていた。家まで我慢出来る理由が無い。空のペットボトルがあるのだからそこに全て出してしまおうと。しかしそれを理性で拒絶する。トイレ以外で用を足すのはいけないこと、恥ずかしいことだと。そして明との約束で必ず家に帰るまでは我慢するのだと、自分に言い聞かせる。ここまで我慢している自分は偉いのだ、凄いのだ――と。

 お願い、家まで堪えて……。と心の中で叫ぶユキ。しかし、そんな懇願も虚しくまた波が来た。と同時にユキの激流は尿道口を、一瞬だけだが強引に抉じ開けた。

 ジュッ! とおしっこがチビって股を温かい感覚が襲う。ビクッと体を震わすユキ。


「あっ……」


 思わず声が出てしまった。それでも股を押さえることはせず、太腿の上で必死に両手を握り締める。尿道口に再度力を込めて必死に出口を締める。ユキの体が小刻みに震え始めた。


 (出ちゃダメ出ちゃダメ! お願いだから、出ないで……!! 我慢するの! 家まで、絶対に!!)


 顔を何度も横に振りながら必死に我慢する。しかし、ジワリジワリとほんの僅かでもパンツの中におしっこが広がっていくのが分かる。ユキは涙を流しながら尿道口を締めて必死に我慢する。


 (お願い……止まって……止まってぇ……!!)


 それでも股を手で押さえるような真似はしない。尿道口を引き締めて、尿道口だけで門を閉ざしている。とっくに感覚が麻痺した股だけで、我慢する。心の中で必死に懇願しながら……。


「ユキちゃん、大丈夫? 結構ヤバいんじゃないの?」


 明が声をかけてきた。ユキは苦笑いしながら言葉を返した。


「は、ははは……。そんな事、無いよ。ボクは余裕だもん……。家まで我慢するから……」

「空のペットボトルあるんだから、我慢出来なくなったらそこにしなよ。別に責めはしないからさ。今まで我慢してきただけでも十分凄いよ。俺にはきっと無理だし」

「……」


 空のペットボトルに視線を送るユキ。必死に締め上げた尿道口。波は収まり、おチビリも収まった。しかし今回はおチビリを止められたが次は止められるのか。パンツには確かな染みが出来上がっている。もしかしたらホットパンツにまで広がっているかもしれない。ユキはペットボトルに出してしまおうかと悩んだ。だが、やはりペットボトルには出来ないと考えた。家まで我慢してやると改めて決意した。ここまで我慢したからもう良いのでは無いか、ではなくここまで我慢したんだから最後まで我慢してやると思ったのだ。

 それから明は一度パーキングエリアによった。トイレに行くためである。ユキにトイレに行くかと誘ったがユキは断った。明が車を出るとユキはせきを切ったように股を両手で強く抑えて太腿を擦り合わせる。だがそんな事をしても尿意は一向に収まらない。心無しかほんの少しだけ楽になるだけだ。激しく息を切らして、念仏を唱えるように我慢……我慢……と呟く。涙目で顔は赤くなっている。それでも家まで耐えると決意した気持ちは揺るがない。明が戻って来るとすぐに平静を装ってしまう。しかしユキが股を抑えていたのを明はしっかりと見ていた。明はどうしようかと困っていたが、ユキが意地を張るのを止めない以上仕方が無い。本当に限界を迎えて諦めてくれたら良いが、この調子だと漏らすまで我慢するかもしれない。明はなるべく早く家に帰ろうと猛スピードで車を出した。

 そして、遊園地から出発して四時間が経過した。二人は明の自宅へと帰ってきたのだ。ユキは――なんとおしっこを漏らすことなく我慢しきった。何度もおチビリをしてパンツは随分濡れてしまったが大決壊には至らなかった。結局ペットボトルは使わなかった。明は大したものだと感心した。


「へへへ……。兄さん、どうよ? ボク、ちゃんとお家に帰るまで我慢したよ。ちゃんと我慢しきったんだ、ボクは……」

「ああ、凄いよ。ちなみに、結構限界? それともまだまだ余裕?」

「……余裕だね。まだまだ我慢出来るさ」


 この期に及んでそんな虚勢を張れるとは。勿論全くのデタラメで実際は限界も限界、ここまで我慢出来ているのが奇跡と呼べる程だった。しかし明にはそれが虚勢かどうか判断に迷った。ここまで我慢したのだ。本当に余裕があるのかもしれないと。


「俺の負けだよ。さ、家に帰ろうか」

「うん……」


 二人はシートベルトを開いて、車から降りた。しかしユキは立ち上がった瞬間、座席で尿道口を塞いでいたものが無くなった。尿意の波がやってきた。ここ一番の尿意だった。まだジョジョ! とチビってしまった。


「あっ!!」


 ユキはその場で蹲り、踵で尿道口を抑えて両手で股を抑えた。おチビリを止めようと必死だ。そのまま動けなくなってしまった。一方の明はユキが座っていた座席に手を置いて濡れていないか確認した。座席は温もりがあるだけで濡れてるようには感じなかった。ユキはチビっていたが被害はパンツに留まり、ホットパンツには及ばなかったのだ。

 明は車から出て家に入ろうとした。そこでユキの姿を見る。蹲り、両手で必死に股を抑えて固まっている姿を。ユキは我慢の限界だ。だがこのまま家に入れればトイレですっきりしてしまうだろう。本当ならそれで良い。しかし、明はユキのおもらしを見てみたいと思った。一度は漏らしてしまえば自分の気持ちが分かるはずだと思った。それは今も同じだ。このままトイレに入って一件落着では何か、負けたような気分になる。それが嫌だった。もう、今日は車には乗らない。ユキが漏らしても明は困らないのだ。


「ユキちゃん、どうしたの?」


 明が声を掛ける。ユキは笑みを浮かべながら立ち上がった。手を股から離して平静を装う。おチビリは止まっていないが必死に尿道口を締め上げる。なんとかおチビリは止まったが、ホットパンツの股の付近に確かな染みが出来ているのを明はハッキリと目視した。ついにホットパンツにまでおしっこの染みが広がったようだ。だがユキはそれに気付いていない。


 

「だ、大丈夫。なんでもない!」

「そう? それなら良いけどさ」


 明はあえてホットパンツの染みには言及しなかった。玄関の前に行き、ポケットの中の鍵を探す。その間、ユキは後ろで足をピタリと閉じて早く早くと心の中で急かす。あとちょっとでトイレに行ける。全部解放出来る。我慢の時間も終わりだと。あとちょっとだけだ。そう思って。

 しかし明はそこで邪な気持ちを抱いた。鍵を探すのを止めて何食わぬ顔で振り向いてユキを見下ろす。ユキはおしっこを我慢するのに必死で気付いていない。


「そう言えばユキちゃん……」

「……えっ!? どうしたの兄さん? は、早く家に入ろうよ」

「そうしたいんだけど、そう言えば今日ユキちゃんを俺の家に入れるとは思ってなくて、夕食が俺の分しか今家に無いんだ。だからこれから二人で近くのスーパーに買い物に行こう。近いから歩きで行けるよ」


 その言葉にユキは目眩がする思いがした。ようやくトイレに行けると思ったのにと叫びたい気持ちになった。しかしここで先に家に入りたいといえば、余裕が無いのだと思われそう、という考えが過って何も言えなくなる。希望がドン底に変わった気持ちだ。


「え……え……? でもボク……」

「まだおしっこ、余裕なんだよね? それならちょっとくらい延長しても問題無いでしょ? ユキちゃんの夕食買うだけだから」

「………………うん、わかった。ボクも、行くよ」

 

 承諾するしか道は無かった。この時、意地でも家に入ってトイレに行けば良かったとユキは思ったが、やはり意地が邪魔をした。こうして二人は近くのスーパーまで向かった。歩きで行けるとは言え、徒歩で三十分の距離なため、今のユキにとってはとても長い距離に思えた。

 こうして二人はスーパーに辿り着いた。明がユキの夕食を探している。これが良さそう。いや、これも良い。ユキちゃんはどれが良い? ユキはトイレの事で頭がいっぱいでまともに受け答えが出来ない。何でも良い、兄さんが好きなので良いよ、と言うだけだ。それでも決して急かさない。急いでいると思われたくないからだ。

 明もわざとダラダラと買い物している。ユキの夕食だけでなく他にも備品などを見て回っているのだ。もちろんユキが限界を迎えて漏らすまでの時間稼ぎである。しかし中々ユキは限界にならなかった。いつまでたってもいつも通りだ。あまり時間をかけても怪しまれる。明は観念して買い物を済ませた。そして帰路に着く時、ユキが隣にいない事に気付いて辺りを見渡した。ユキは後ろの方で何故か立ち止まっていたのだ。明はユキの方に戻ってどうしたのかと聞く。


「ユキちゃん何してるの? 早く家に帰るよ」


 ユキは目に涙をためていた。両手で足を強く握り締め、両足をピタリと揃えている。腰を引いて動けなくなっていた。


「……兄さん、ボクは、ボクはもう……」

「?」

「動けない。動いたら全部出る、出ちゃう……」


 涙声でそう訴えるユキ。どうやら本当に限界のようだった。周りにはたくさんの客が夕食を買いに来ていて人がたくさんいた。親子連れや大人子供までたくさん歩いていた。まだユキと明の二人には見向きもしていない。

 明は笑みを浮かべて言った。


「ユキちゃん、まだまだ余裕って言ってなかった?」

「そんなの嘘なの。本当は限界だったの。でもそう思われたくなくて……」

「じゃあ、ここのトイレで済まして良いよ。あの時家に入ってればトイレで出せてたんだから良いよここで。……トイレまで歩ける?」


 ユキは顔を横に振った。


「やだ。ちゃんと家まで我慢する……」

「家までって……あと三十分も我慢出来るの? それより、今歩けるの? ここでして良いって」

「……イヤだぁ……イヤだぁ……」


 ユキは涙を流し始めた。どうすれば良いのか自分でも分からないのだろう。どうしようかと明が悩んでいると、ユキのホットパンツの染みが広がり始めた。もはや家までは耐えられないだろう。いや、この店のトイレまでにももう間に合わないだろう。


「ユキちゃん、それじゃあどうするのさ?」

「……」


 ユキは黙り込んでしまった。明はユキの近くに向かうと膝を曲げてユキの視線に合わせた。そしてその下腹部を擦った。


「ユキちゃんさ、言おうかどうか迷ってたけど言うよ。ズボンに割と大きな染み出来てるよ。随分前からね」


 ユキは涙を流してしゃっくりをしながら自分の股を目を向けた。明の言葉通り股にはホットパンツの上からでもハッキリと分かるほど染みが広がっていた。息を切らしながらユキは震えた手で股とお尻を触る。するとそこは確かに濡れていた。しかもかなり。おしっこで濡れているのだとすぐにわかった。そこでようやく周りの人達がユキの方に視線を向けているのに気付いた。みんな濡れたホットパンツに目を向けているのだ。

 ユキは恥ずかしくなって顔を耳まで赤くして黙り込む。どうすれば良いかなんと言い訳するか思いつかなかった。こんなの、おもらしと言われても否定が出来ないと、ユキ自身も認めているからだ。


「これ、おしっこじゃない? 我慢、出来なかったね」

「……これは……これは……ボクは……」


 ユキは言葉が出てこなかった。その内、ユキは下半身の感覚が消えていくのを感じた。そしてホットパンツの染みは更に広がっていき、やがてポタリポタリと股の間からおしっこが漏れ出てきた。明はそれを見て笑みを浮かべてユキの下腹部を撫でた。ユキは自分が漏らし始めた事に気付けなかった。感覚が麻痺して分からないのだ。


「ユキちゃん。俺が中学生の時、バスの中で漏れそうになった時に、周りは俺に何したと思う?」

「……わ、わからない」

「こうしたのさ」


 明はユキの股ぐらをホットパンツの上から指でグッと強く押した。下半身の感覚が無くなっていたユキには何も感じなかったが、その行為によってユキの中の何かが弾けた。ホットパンツの染みが急に、一気に全体に広がった。そして、



 ブッジュウウウウウウウウウウウウーーーーーーっっっ!!!!!


 ユキの股の間から、まるで滝のように凄まじい勢いでおしっこが噴き出した。ビタビタと床に跳ねてユキの足元におしっこの水たまりが広がる。ユキは遂におしっこを漏らしてしまったのだ。


「あ……え……?」


 急激な解放感に、ユキは頭が真っ白になっていた。全身から力が抜けて、ユキはその場に座り込んだ。みるみる広がるおしっこ。床を叩きつける音がとても大きく鳴り響いていた。

 明はユキがとうとう漏らしたと勝った気持ちになっていた。

 それから数分後。ユキは朝から溜めに溜め込んだおしっこを全て出しきった。やがて自分がおしっこを漏らしたのだと理解出来るまでに頭の回転が戻っていく。冷静さを取り戻すと共に股やお尻が濡れて気持ち悪い感触も芽生え始める。そして声が聞こえてふと周りを見渡すと、客の人達が集まってユキの事を見ていた。大人から子供まで、たくさんの人間がユキに注目していた。


「ママー! あの人おしっこ漏らしてるー!」

「ダメよ、見ちゃダメ」

「可哀想に。我慢出来なかったのかな?」


 大人や子供の囁き声が聞こえてくる。ユキはあまりの恥ずかしさに顔を真っ赤にして大粒の涙が目から溢れ出た。


「ボク……ボクは……そんな……いや……なんで……」


 ユキは大声で泣き始めた。


「こんなに我慢したのに、あとちょっとだったのに、なんでぇぇええーーー!!! うわあああああぁーーーーっ!!!」


 その姿を見た明はかつての、中学生の頃の自分の姿と重なって自分が何をしたのか、やっと理解した。ユキをおもらしさせたいと思っていたが実際それを見て感じたのは虚しさと激しい罪悪感だけだった。しかしこのまま何をしないわけにもいかない。ユキを見世物にさせるわけにはいかない。明はユキの手を優しく握った。


「買い物なんか来なきゃ良かったね。ユキちゃん、帰ろう。ずっと泣いてるわけにもいかないだろ?」

「ぅぅ、ひっぐ……ひっぐ……」


 明に手を引っ張られ、ユキは泣きながら立ち上がった。そして二人はそのまま家まで歩いていった。その間、ユキは泣き止まず、ずっと泣いていた。

 やがて帰宅すると明がもう使わなくなった自分のパンツとズボンを出してユキに着替えるように言った。ユキはようやく落ち着いて、明の服に着替えた。サイズはもちろん合っておらずブカブカだった。ユキのホットパンツと下着のパンツは洗濯することになった。

 二人は夕食を取ったがユキはすっかりおとなしくなって縮こまり、食事はかなり息苦しいものとなっていた。


「ユキちゃん、ごめんな。ユキちゃんを買い物に連れて行ったのはユキちゃんを漏らさせたいと思ったからなんだ。その、中学生の頃の俺の気持ちを知って欲しかったというか……」

「…………」

「まぁ、なんだ。まっすぐ家に帰ってたらちゃんとトイレには間に合っていただろうから、そんな気にするなって。……なんて言ってもダメだよな。俺の時もショックで不登校になったからなぁ」

「……兄さんも漏らした時は同じ気持ちだったの?」


 ユキが口を開く。小さなボソリとした声だ。


「まぁね」

「ごめんなさい。もう兄さんの事、笑ったりしないよ。漏らした時の兄さんの気持ち、分かった気がする」

「そうか……」

「そもそも、ボクが勝手に我慢してただけで兄さんが強要したわけじゃないからね。ボクの自業自得だよね。膀胱が大きいからってずっと我慢してたらいつかは漏らす事になる。よく分かったよ」

「そう言う事だ。それはそうとユキちゃんはよく我慢したと思うよ。俺なんかよりずっと凄いよ」

「ありがとう。でもこの事はお父さんとお母さんには内緒だよ。二人だけの秘密。ね?」

「もちろん」


 するとユキは笑った。漏らしてから始めての笑顔だった。


「今度また遊園地に連れて行ってよ。次はおしっこ我慢なんてしないでもっと純粋に楽しみたいからね」

「いつでも言ってくれ。また連れてってやるから」

「ありがとう兄さん」


 そして二人が、また遊園地に行くのは別の話である。

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