アマネラ:2
サササキ・スペースポートのゲートを飛び出したフライングパン・ゼロワンは、宇宙空間に浮かぶガイドランプに沿って宇宙コロニー・ギモーブ方面へと機首を向けた。
「そんで、イボチよ。ディエゴを拐って逃げた奴らの船はわかってんのか? 持ち主、色、形状、何かわかるもんがあるなら教えてくれ」
尋ねながら手元のモニターを操作するガーリオン。宇宙船のデータベースに繋いだ回線から過去に遭遇した船体のリストがズラリと表示される。
「わかってイルのは機体登録番号2C67H99BF、機種がイージーキャメル・カスタム。所有者の名前はーー」
「ああ、モントイって地球人のおっちゃんだな。機体は個人配送の業務用だ」
イボチが言い終わるより早くガーリオンのデータ検索に引っ掛かった情報が画面に表示されていた。宇宙船を操縦するアマネラはちらりと画面へ視線を飛ばして唸る。
「大人しそうな顔して誘拐犯とは、人は見かけによらないなぁ」
「そうなのかい? 俺やイボチからしてみれば、地球人の顔なんぞ見分けがつかねぇよ」
「確かに見分けはつきまセンが、少なくトモ彼は誘拐犯デハありまセン。彼の宇宙船がギモーブに向けて飛び立った直後に、彼自身から被害届が出ていマス。なんデモ配送準備中に何者かに襲われて頭陀袋に詰め込マレ、宇宙船を乗り逃げさレタト」
イボチの説明を聞く二人から被害者モントイへの同情の溜め息が漏れる。
「そいつは御愁傷様だな。盗まれたイージーキャメルの自動制御機能は業界屈指だ。とりわけカスタムモデルは、操縦者は座ってるだけでいいと言われる程のハイスペック。或いは、おっちゃんが標的にされたのもこの船の性能を知っての事かもな。なにせ操縦に不馴れでも勝手に船が飛んでくれるってんだから」
「まったくもう。なんでも機械任せにしちゃうからそうなっちゃうのよ」
そうぼやく間もアマネラの目線は眼前のメインモニターを中心に各種計器へと視線が飛び回り、操縦桿と操作ペダルに繋がる四肢は忙しなく動いている。
「言ってやんなよ。誰でもおまえさんみたいにやってのけられるわけじゃねぇんだ。よぅし、アマネラ、イボチ。盗まれた宇宙船の機体認識コードを登録した。レーダーにかかればモニターにマーカーが点く」
「軌道上は想像以上にデブリの障害だらけデスネ。下手に突っ切れば機体は穴だらけダ」
手元のモニターを見ながら、不安そうに触手の一本で頭をかくイボチ。モニターに映されたレーダー画像には、中央の宇宙船を囲むように何らかの検出体を示す白い点が無数に散らばっていた。
「そいつは逃げてる誘拐犯も一緒さね。ましてや安全第一の自動航行なら尚更速度は上げられん。やりようによっちゃ直に追い付けるぞ」
「つまりアタシがさっさと邪魔物全部掻い潜って誘拐犯のケツを蹴り上げればいいってわけね。まーかせて!」
言うが早いかアマネラが推進機の出力を上げていく。
「おい、イボチ! 今回の依頼は危険手当も付いているんだろうな?」
急速に身体に加わる荷重に顔をしかめつつガーリオンが叫ぶ。
「我が社の依頼料は常に最初カラ危険手当コミコミ価格デスヨ。あとアマネラ、保護対象が巻き込まれマスので誘拐犯のケツを蹴り上げるノハ、ディエゴを助けてからにして下サイ」
「毎度ながらホンット冗談通じないんだから……」
加速する機体に動じることなく告げるイボチに苦笑いしつつ、アマネラは操縦桿を大きく倒した。
宇宙船フライングパン・ゼロワンは、機体を捻るように旋回させながら障害物の点在する空域へと突っ込む。
元々、サササキスペースポートとコロニー・ギモーブ間の航路上には小惑星の群体が多くみられる空域があり、長年そこを拠点とする宇宙海賊の出没が問題視されていた。
この問題解決に宇宙連邦保安局が重い腰を上げたのがつい半年ほど前の話。動き出すが早いか、保安局はそれまでの及び腰な様子見方針とは打って変わって大規模な掃討作戦を展開していった。その結果、保安局員数名の癒着摘発等のおまけを付けながら該当空域の宇宙海賊を事実上壊滅させるに至ったのがつい数日前だ。
そんな戦闘の爪痕が出来たばかりの空域をアマネラの操縦する宇宙船が歪な螺旋を描きながら突き進む。浮遊する障害物の悉くをかわしていく彼女の操縦技術は流石と言えるだろう。
ただし、乗員に全くの配慮がない為乗り心地は最悪である。
「右舷、左舷カメラモニター、マーカー反応無シ。ガーリオン、そちらはどうデスか?」
上下左右あらゆる方向に振り回される身体を無数の触手で保持しつつ、跳ね飛びそうになるシルクハットを抑えつつイボチがガーリオンへと話を振る。ガーリオンはと言えば……。
「どうもこうも! シェイカーに放り込まれた氷に、モニター見てる余裕なんか、ねぇってんだ!」
シートに頭をぶつけながら返事を返すラヒタ族の鳥人。鳥に似た容姿の彼等は滑空する程度には飛べるのだが、それと宇宙船曲芸飛行は勝手が違うらしい。
「し、心配しなくても、モニターにマーカー反応が出れば信号音が鳴る! そ、それまでは、このイカれたジェットコースターに、身を委ね……と、言ってるそばから来たぞ!」
右へ左へ華麗とは言い難い様相で身体を振られているガーリオンの耳元でピコンと気の抜けた電子音が鳴る。同時に彼の目の前のモニターに小さな赤丸が示されたのだが、生憎と視線が定まらないガーリオンにはそれが捉えきれない。
「えぇいクソ見えねぇ! そっちのモニターにマーカー反応繋ぐぞ!」
ガーリオンが身体を揺り動かされながらもキーパネルを操作すると、アマネラとイボチそれぞれの眼前のモニターに赤丸が点く。
「目標二時方向斜め下、と。岩場に邪魔されてて見えないわね」
そう言うアマネラが見るモニターに映る映像上では、宇宙船より大きな岩石の一点をマーカーが示していた。目的の船はその裏なのだろう。
「逆を言エバ、こちらも捕捉サレていないというコトデス。今のウチに奇襲シテ取り押さえまショウ」
「ディエゴごと吹っ飛ばしたんじゃあ、目も当てられん。ちぃっと待ってくれ。二番に電磁麻痺弾頭を装填する」
イボチの進言に応じてパネルを操作するガーリオン。相変わらず右へ左へ振り回されてはいるが、勝手知ったる自分の船なだけあって操作に躊躇いはない。彼の宣言通り、宇宙船が備える二番砲塔に指定した弾頭が装填された。
装備変更は他の二人が目にするモニターにも反映される。アマネラは装備欄が更新された事を横目に捉え、改めてマーカーへと視線を向けた。
ガーリオンが設定した弾頭は、撃ち込んだ対象の推進機関に干渉する電磁波を発振する。これにより一時的に航行制御を止める比較的殺傷性の低い武装になる。もちろん、爆発しないと言っても弾頭の殻が金属である以上、操縦席など当たり所が悪ければ致命的なことに変わりはない。狙うなら背後から推進機近くに撃ち込むのがセオリーだ。
「背後を取るわ。イボチ、あいつの予想軌道出して」
「エエ、丁度計算が終わったところデス」
アマネラの要求に間髪入れずにイボチが返し、同時に彼女のモニターに情報が反映される。
モニターに映された巨岩を左右に切り取れと言わんばかりに、赤い破線が画面を縦断する。
「あんがと! そいじゃ、回り込むわよ!」
イボチの計算を証明するようにマーカーは線上を進んでいた。ならば、自ずとフライングパン・ゼロワンの辿る軌道も決まってくる。
アマネラは手慣れた操作で乱暴に機体を旋回させ、眼前の巨岩上を翔ぶ。隆起した岩場を右へ左へ避ける度に後部席のガーリオンが悲鳴を上げているが、アマネラには聞こえない。
半ば自動航行の誘拐犯の安全飛行故か、はたまたアマネラのマニュアル飛行の妙か、彼女達とモニター上のマーカーはぐんぐんと距離を詰めていく。誘拐犯の乗る船イージーキャメルの飛行軌道上にアマネラ達のフライングパン・ゼロワンが乗ると、船の進行方向を映すメインモニターの画面外にあった赤マーカーが画面内に入ってきた。
「目標接近デス。ガーリオン、撃ち方用意」
イボチの指示に射手を務めるガーリオンが照準ゴーグルを被る。
「応よ。このシートに頭打った恨み、あいつに叩き込んでやる」
彼の発言に、どちらかと言えばアマネラに叩き込む内容なのでは? とツッコむ者は船内にいない。
勝手にガーリオンの怨敵指定された目標の船との距離は迫り、もはや岩場の合間から見えてもおかしくない程にまできている。
「こっから高度上げて一気に飛びかかる! いくよ、ガーリオン!」
「ヨシ来い! 頭上げ過ぎて射角塞ぐんじゃねえぞ!」
ガーリオンがトリガーを構えて応えると、アマネラが操縦桿を一際大きく傾ける。フライングパン・ゼロワンは獲物を狙う蛇が鎌首をもたげるように岩場から機体を跳ね上げ、眼下の目標を捉えるべく機首を下げた。
メインモニターに映る赤丸に囲まれた宇宙船。ガーリオンが照準を合わせつつ舌なめずりをするなか、船内にけたたましく警報が鳴る。鳴り響く警報の意味は乗組員三人が良く知るものだった。
「回避デス、アマネラ。目標から攻勢反応を検ーー」
「もうやってる!」
イボチの声を聞くまでもなく、自機への攻撃警報を聞いたアマネラは即座に緊急回避に入っていた。もしイボチの指示を待ってから動いていたら標的であるイージーキャメル・カスタムの機銃射撃が直撃していただろう。実際、警報直後に射撃の射線から逃げても何発か被弾している。
「ぬわぁぁぁぁぁっ!」
鳥人のその鳴き声は銃弾を受けたフライングパン・ゼロワンの悲鳴を渾身の演技で代弁しているのか、はたまた愛機を傷つけられた哀しみの咆哮か。
「よくもアイアンブレイブブルーバードの美肌に傷を付けやがったな!」
「うぅ、ゴメンてぇっ!」
羽を逆立てて荒れるガーリオンに謝るアマネラ。彼女は謝りつつも、未だ銃撃に追い回されて全力回避を取り続けている。
「外面装甲に極めテ軽微な損傷を確認……アマネラは被害を最小限に止めまシタ。被弾は相手の機体情報をしっかり確認しなカッタ我々全員の責任デス」
「わかっとるわ! 俺が文句あんのはアイツの方だ! ツインテールとかどんだけ良い装備積んでやがんだよ!」
ガーリオンのがなり声を聞きながら、イボチは改めて目標の機体登録内容を確認する。
機体登録表に記されたイージーキャメル・カスタムには標準装備には無い追加項目がいくつか存在した。そのうちの一つが、目下フライングパン・ゼロワンを追い立てている銃撃。ツインテールという愛称の二連装機銃であり、特筆すべきは標的の自動追尾機能。その性能は……。
「あぁもう、しつっこいなぁ!」
この界隈では優秀な乗り手として知られるアマネラが思わず文句を言うぐらいに厄介な性能。
「こちらが先方を捕捉シタ時に、こちらも先方のレーダーに引っかカッタようデス。さもありナン。レーダーもアップグレードされていマスネ」
イボチの言葉にガーリオンも性能表を読み返し小さく唸る。
「こいつは……或いは、こっちが先に気付かれてたのかもな。対宇宙海賊向けの護身用とは言えこんだけ装備揃えるとか、個人配送ってそんなに儲かるもんなのかね」
「モントイ氏は割の良い取引先をお持チのようデス。是非一枚噛まセテ欲しいトコロデスネ」
「あんたたち悠長に感心してんじゃないわよ! 反撃反撃!」
今尚迫る銃撃から逃げに逃げているアマネラが二人に吠える。
「きゃんきゃん吠えんなって。こっちもその用意してたんだよ」
彼女に反論しつつガーリオンが機体装備を操作していく。
「高性能追尾ったって射線は一つ。寧ろ優等生な高性能君だからこそ、複数標的がありゃあ教科書通りに優先順位を付けるってもんさ。あいつにミサイルを撃ち込んでやる」
「人質ゴト殺す気デスか? 却下デス」
ガーリオンの進言に当然のように反対するイボチ。
だが、ガーリオンはそうではないと頭を振った。もっとも、終わり無い回避行動で頭は振られっぱなしなのだが。
「当てやしねぇよ。ちゃんと着弾前に爆ぜるように設定しとくって。でも、そうと知らないあちらさんはこの船を落とす事よりもミサイルの迎撃を優先する」
「二本の尻尾で蝿を追い払ってる間に近寄って麻酔を打つってコトね。やるならさっさとやっちゃお! 銃撃は避けきってみせるけど、いい加減飽きてきたわ!」
「了解シマシタ。ガーリオン、ダミーミサイルの推奨軌道の計算結果を送りマス。発射設定の参考にして下サイ」
そう言うイボチの複数の触手達は絡まることなく操作パネル上を駆け回り、急旋回の反動で脱げたシルクハットを即座に拾ってかぶり直すのも忘れない。
イボチから送られてきたデータを見ながらガーリオンが肩をすくめた。
「んだよ、やけに計算早いな。おめぇも最初からミサイル撃つつもりだったんじゃねぇのか?」
「ガーリオンが本気で当てる気ナラ、私がダミー案を提案してイマシタ。アマネラ、ダミーミサイルと電磁麻痺弾の発射推奨軌道デス。このルートに船を乗せられマスカ?」
続けて今度はイボチがメインモニターに自身の計算結果を示して問う。アマネラはモニターと周辺マップ上に記された点線を見て鼻で笑った。
「当然!」
アマネラはそう言ってフライングパン・ゼロワンに大きな弧を描かせながらツインテールの射撃を回避すると、機体を急旋回させてイボチの引いた勝ち筋へと進路を沿わせる。
「ダミー二発で隙を作りマス。一発目発射と同時に接近開始」
「っつーわけで行くぞアマネラ。よーいドン!」
アマネラの返事を待つこともなく発射される陽動ミサイル第一段。お互い勝手知ったる間柄、アマネラも唐突なスタートの合図に慌てることなくミサイル発射に合わせて機体を急加速させる。
フライングパン・ゼロワンに先行して飛翔したダミーミサイルを迎撃するべく、ツインテールの銃口がミサイルへ狙いを付けた。
イボチの計算が功を奏したか、ガーリオンの軌道設定の妙か。ダミーミサイルはイージーキャメル・カスタムの二連装機銃が火を噴く直前にその軌道を変え、不規則なジグザグを描いて銃撃の追走を避けていく。
端から見れば戯れているようにさえ見えるミサイルと銃撃の空中ショーに紛れ、アマネラの駆るフライングパン・ゼロワンは一路目標へと接近する。
「やっぱダミー一発じゃこっちの手が届かんか。そんじゃ、二発目行くぞ」
周囲をうろつくダミーミサイルよりも急接近する宇宙船が脅威。ツインテールの自動迎撃機能がそう判断して目標を変えるより早く、ガーリオンは二発目のダミーミサイルを発射した。
打ち出された二発目のミサイルは稲妻軌道の一発目とうって変わって直線的。ともなれば一発目のミサイルどころか近付きつつあったフライングパン・ゼロワンよりも標的として優先される。
ツインテールの銃身が乗る台座が旋回し、新たな標的に向かって発砲を再開する。回避の意思を持たない二発目のミサイルは銃撃を一身に浴び、発射からものの数秒で爆散した。
そして、ガーリオンが一発では足りないと見立てた算段こそ、その数秒だった。
破壊されたダミーミサイルの爆風を突き破ってイージーキャメル・カスタムの眼前に飛び出したフライングパン・ゼロワン。
「お痛が過ぎたぜ。お仕置きだ!」
イージーキャメル・カスタムの二連装機銃がアマネラ達に向くよりも早く、ガーリオンの手が電磁麻痺弾の発射トリガーを引いた。
放たれた弾頭は目標に回避する暇さえ与えずその推進機近くに着弾し、その瞬間機体に電撃が走る。雷撃に襲われた途端、イージーキャメル・カスタムのツインテールも推進機も沈黙した。
「ヒャッホウ! やったじゃん、大当たり!」
「応よ、ザマァねぇッ!」
歓喜の声を上げるアマネラとガーリオン。二人を尻目にイボチはモニターを見ながらパネル操作を続けている。
「着弾及び目標の停止ヲ確認しまシタ。回線を開イテ投降を促しまショウ」
「あいよ。そっちの通信は任せたわ、イボチ。ガーリオン、機体を寄せるからアンカー撃って。あの船このまま放っといたら岩石とチューしちゃうわ」
アマネラはそう言うと宇宙船を操作して目標に近寄る。
先程までの乱飛行とは大違いの緩やかな操縦でイージーキャメル・カスタムに横付けしたフライングパン・ゼロワンから強硬ワイヤーが射出される。
「アンカー付いたぞ、アマネラ。アイツが飛ばされんよう引っ張っとけ。んで、イボチ。そっちはどうなんだ?」
手際よくアンカー接続を済ませた鳥人が火星人に尋ねるが、火星人イボチの答えは曖昧なものだった。
「通信は繋がってイルようデスガ、応答がありまセンネ」
「電磁麻痺弾の影響とか?」
アマネラの問いに二人が首を振る。
「電磁麻痺弾の一撃で通信機がイカれたなら、通信回線がそもそも繋がらねぇよ。今は通信機が復帰して繋がってるが相手の返事が無いんだ」
「それじゃあ、まさか乗っていた人達が全員電気ショックで……」
「いやいや、電磁麻痺弾で感電死した奴なんてほとんどいねぇよ」
「ほとんどってコトは、少なからず死亡例はあるってコト?」
「そりゃまあ、過去にいたにはいたんだが……。おい、イボチ! いつまでもパネルいじってないで、このわからず屋に電磁麻痺弾について御教授してやってくれ!」
説明が面倒になったガーリオンが助けを求めてイボチに話を振る。イボチはパネル操作を止めると、触手の一つで額をピシャリと叩いた。
「オウ。厄介なコトデスネ」
「応よ。厄介だからおまえに頼んでんだろうがよ」
ガーリオンの返事にそうではないと触手を横に振るイボチ。別の触手数本がパネルを操作すると正面モニターに映像が映し出される。
『ーー宇宙海賊ワルイヤンを名乗る組織よりヴェスタ商会の社長ダイナ・ヴェスタの子息ディエゴ・ヴェスタを誘拐したとの犯行声明が先程発信された事に対して、ダイナ氏は誘拐の事実を概ね認めていますがワルイヤンへの今後の対応については明言を避けています。この誘拐事件に関して宇宙連邦保安局も行動をーー』
ニュースキャスターが淡々と話すなか、映されているのは不敵に笑う海賊達と彼等に囲まれて俯くディエゴ青年の姿。これを見たアマネラとガーリオンの表情が険しくなる。
「この集合写真って、あの船の中で撮ったってコト?」
どちらに尋ねるでもなく溢れ出たアマネラの言葉に二人が唸る。
「犯行声明が出さレタのがつい先程のコトデス。これがあの船から出さレタとしタラ、最悪は全員まとめて感電死シタ可能性もアリマス」
「でなけりゃ、俺達は誘拐犯が仕掛けた囮の無人飛行にまんまと乗せられ、その間にアジトに逃げ帰った犯人一行は逃走大成功とばかりにディエゴと記念撮影」
「確かめナイ事にはわかりまセンネ。アマネラはアンカー接続のまま船体を保持。ガーリオン、あの船を調べに向かいマスヨ」
そう言うとイボチは席を立ちシルクハットをかぶり直した。
逃走する宇宙船を止めたアマネラ一行ですが、誘拐の意図はまだ見えておりません。ということで、前回後書きのサイコロの出目は今はまだ発表しないでおきます。
ではでは、ここからどう話を進めるかサイコロの目を決めていきましょう。一は誘拐犯達が船内で気絶中。二では最悪の事態、誘拐犯共々ディエゴも死亡。三は船内に潜む誘拐犯に襲われます。四からは逃走船が囮だったルート、引き続きディエゴ奪還に動きます。五はダイナから懸賞金が出され他の破落戸との救出レースになり、六は宇宙連邦保安局の強硬派が誘拐無視で海賊の残党狩りに入ります。
物騒な出目がチラホラと。果たしてディエゴ君は無事助けられるのか。
そして賽は投げられる。