星降る昼の願いごと
読み聞かせてもらったばかりの絵本をぎゅっと抱きしめて、男の子は両親の元に向かいます。
たくさんの大人たちがいる中で男の子は、お父さんとお母さんの前まで行くと絵本を開きました。
「とーさま、かーさま。みんなで見にいきたい」
男の子が開いたページには大量の流れ星、流星群が降る様子が描かれていて、女の子がお願い事をしていました。
「見せてやりたいのは山々だが」
「ちょっと難しいかしら」
男の子の両親は困った顔をしてそう言いました。
男の子の願いを叶えてはあげたいけれど、男の子の両親は王様と王妃様なのでなかなか仕事を休むことが出来ないのです。
そして男の子には様々な事情があって、あまり外に出ることが出来ないのです。
男の子もそれを解っているので、何も言わず沈んだ顔で自分の部屋に帰りました。
浮かない顔の男の子に使用人は尋ねます。
「お星さまにどんな願いを叶えてもらいたかったのですか」
「みんながげん――」
男の子は答えかけて、自分の口を塞いで言うのをやめてしまいましたが、使用人には男の子の願いごとが分かりました。
使用人が優しく笑って男の子にお礼をいうと、男の子は訳が分からず首を傾げました。
それから数日がたったある日の昼下がり。
男の子は両親と二人の兄とともに使用人たちに一つの部屋に招かれます。
真っ暗な部屋だと思ったそこは一瞬にしてキラキラとお星さまが部屋にいっぱいの輝く部屋になりました。
「――わぁ」
「綺麗ねぇ」
しばらく見ていると、スーッと流れる光がいくつも降り出しました。
それはまるで男の子が読んでいた絵本の中の流星のようです。
男の子たち家族は目を閉じてそっと流れ星にお願いごとをします。
小さな両手を組んだ男の子は願いごとを声に出して一生懸命に願います。
「みんながげんきになりますように。みんながえがおになりますように」
それを聞いた家族は驚きに目を見張り、優しく男の子を抱きしめました。
男の子は自分のせいでみんなから笑顔がなくなっていることを知っていたのです。
家族も使用人も男の子に起きたちょっとした妖精にイタズラから解決策を探すあまり笑顔を忘れてしまっていたことを気づかされました。
妖精のイタズラで男の子の姿が目に映らなくなっても、手を伸ばせば男の子はすぐにそばにいたのです。
「ありがとう」
もう大丈夫だとお母さんが微笑んで男の子は嬉しそうに笑って、同じ部屋にいる家族や使用人に視線を移すと彼らは元気だというように男の子に笑みを見せました。
男の子はそれをみて、幸せそうに笑うのでした。
お読みいただきありがとうございました。