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第九十九話 小由里ちゃんともっと話をしたい

俺が待ち合わせ場所にきて三十分ほど経った頃。


「森海ちゃん、もう来ていたのね。ごめんなさい」


声をかけてきた人がいる。


振り向くとそこには。


俺にとって、この世のものとは思えないほどの美しくてかわいい女の子がそこにいた。


俺は夢を見ているのだろうか……。


白い色のワンピース。きれいでかわいい顔立ちで、柔らかそうでみずみずしい肌。キスしたくなる唇……。


そしてなんといっても素敵な笑顔。


俺はもうこれだけでも心がどこかへ行っていまいそうな気分になる。


ああ、今すぐにでもキスしたい……。


しかし、それはさすがにできない。それは恋人どうしになってからの話だ。我慢しなければ。


今は彼女のこの美しい姿を、心にしっかりと刻み込むことにしよう。


そう思い、彼女のことをうっとりと眺めていると、


「わたし、この服でよかったのかな?」


と自信なさそうに言ってくる。


俺は我にかえると、


「いや、そんなことはない。妖精がここにいる気がして、もう心がメロメロになっていくような気がしていたよ」


と恥ずかしくなりながら言った。


「まあ、そんな心にもないことを……」


小由里ちゃんは顔を赤くする。


これがまたかわいい。


「そんなことはないよ。美しい。そしてかわいい」


「森海ちゃん、今までわたしにそういうこと一回も言ったことなかったのに……」


「いや、小由里ちゃん、最近かわいくなってきたなあ、とは思っていたんだ。でも今日会ってみて、こんなにかわいくなっているとは思わなかったんだ。四月の頃と比べても、かわいくなっている気がする」


自分でも思うのだが、今日は彼女に対しての褒め言葉がどんどん出てくる。それだけ彼女の魅力に染まっているということだろうか。


「今日の森海ちゃん、こんなに褒めてくれるなんて、今までとは違う人みたい。でも褒めてくれてうれしい」


顔を赤くしながら微笑む小由里ちゃん。


この姿を見ることができただけでも、うれしくてしょうがない。


さて、俺達は電車に乗って、海の見える公園へと向かう。


だいたい一時間ほどの距離。


適度に長い時間なので、俺は彼女といろいろおしゃべりをしようと思っていた。


この調子なら、いろいろ話をすることができて、仲を深めることができそうだと思った。




しかし……。


「じゃあ、いこうか」


「うん」


と言って駅へ向かい始めた後は。お互い無言に近い状態。


一回話をし終えた後、改めて彼女を見ると、あまりにも、清楚でかわいすぎる姿がそこにあった。


近づいてはいけないのではないかと思えるほど、美しくてかわいい存在ではないかという気がする。


俺は、こんな素敵な彼女に話しかけていい存在なんだろうか。


先程出会った時は、小由里ちゃんと出かけられるという、高揚した気持ちがあったので、彼女に話しかけることができたのだと思う。


彼女に恋すること自体、いや、彼女のことを好きになること自体、彼女に失礼なのではないだろうか。


もうこれからは、ただの幼馴染として、遠くから見守っている方がいいのだろうか。


そんな想いが沸き上がってきた。


その為、最初に話して以降は、言葉がなかなか出なくなってしまった。


もっと話をしたい、話しをしたいと思っても、心が空回りをしてしまう。


彼女の方はどう思っているのだろう。


恥ずかしいのか、顔を赤くしたままで、言葉が出てこないままだ。


俺に好意を持っていると思うんだけど……。彼女の方から何か言ってくれれば、俺も話しやすいんだけど。


いや、それじゃいけない。リードは俺の方からしないと。


もしかして、俺のことを今日改めて嫌いになった可能性もあるのではないだろうか。


そうであってほしくはないんだけど……。


俺達は幼馴染だ。昔は気兼ねなく話をすることができた間柄だ。それがなぜこんなに話がうまくできなくなってしまうんだろう。


ああ、もっと話がしたい。でもどうしたらいいのだろう。


世間話? 学校での話?


でもそういう話をする気力はない。多分彼女もそうだろう。


幼馴染のままでいると決めたままだったら、もっと気軽に話せるだろうに。


とはいっても、それではそれこそいずれつらい思いをするだろう。


こんなに素敵な人が誰かの恋人になるなんて思いたくもない。思うだけでも心が壊れそうになってしまう。


しかし、そう思っても彼女に話しかけることすら難しくなってしまっているのが今の状態。


我ながら何をやっているのだろう……。


おしゃべりがほとんどできないまま、俺達は最寄りの駅に降り立った。


晴れて、気温も上がってきており、暑さも感じる。


レストランには午後三時頃に行く予定。


夜は混んで予約を取るのが難しいのと、まだ恋人どうしではないということで、あまり遅くなると申し訳ないと思い、この時間にした。


恋人どうしになったら、次は夜に来て、雰囲気を味わいたいと思っている。


それには、もっともっと親しくならなければならないのだけど……。


「まずはショッピングモールの中を歩き、タワーにある展望台にいこう」


俺はやっと彼女に話しかけることが出来た。


このショッピングモールの先に、これから行こうとしている、タワーとその展望台、レストラン、そして海の見える公園がある。


「うん」


彼女は小さくそう返事をする。


手をつなぎたいけどまだ無理だろうなあ……。


俺と彼女は、隣合わせではあるが、少しだけ距離をあけて歩いて行く。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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