第九十五話 お出かけへ
その日の夜。
俺はベッドに座って今日のことを思い出す。
小由里ちゃんをお出かけに誘うまでに、なんと時間のかかったことだろうかと思う。
彼女とは物心がついた頃からの知り合い。
そこから数えればもう十数年になる。
小学校の頃から、彼女のことを一人の女の子として意識していれば、ここまで時間がかかることもなかったのに、と思う。
せめて中学生になってから、そういう意識を持っていれば、彼女と仲違いをすることもなかっただろう。
今頃は、優七郎と鈴菜さんみたいなラブラブカップルになれたかもしれない。
疎遠になった二年間は、やっぱり長すぎた。
いつの間にか、幼馴染どころか、ただの他人のレベルにまで関係が薄まっていった気さえもする。
高校二年生となり、優七郎と鈴菜ちゃんの仲睦まじい姿を見てから、小由里ちゃんを恋人にしたくなったのだが、それからでももう二か月近くの時間が経っている。
まず仲違いをした状態を改善しなければならなかったが、あいさつさえもままならない状態。
なにせ二年間、ほとんど話もできていなかったのだから仕方がなかったのだが。
その後、ようやく仲直りをし、あいさつが出来るようになった。そして、ルインも出来るようになった。
しかし、仲直りをしてからは、今度は幼馴染としての意識が、恋への道に立ちはだかっているように思う。
これは、俺にとって。あまり想像してこなかったことだ。
幼馴染の二人がお互いに対してもっている好意は、自然と恋心に変化するものと思っていた。
俺も仲直りをしたのだから、その後は、そうなっていくものと思っていた。
ところが、恋人どうしに発展しても、それが壊れてしまった場合、幼馴染としての楽しい思い出や、構築していた関係までもが壊れてしまう、という可能性がある。
そこでつらい思いをするならば、幼馴染のままの方がいいのでは、という気持ちになってしまう。
俺達は、一回仲違いをしてしまったので、余計にその意識が強くなってしまう。
俺もそうだが、彼女の方がより一層その意識が強いようだ。
幼馴染としての関係も大事だが、それを乗り越えない限り、恋人としての道は開けてこないだろう。
そういう意味では、まだまだこれからだ。
今日は、一緒にお出かけすることが決まっただけで、心が沸騰していた。しかし、俺は彼女と恋人どうしになるという大きな目標がある。
心から大喜びをするのは、その時までとっておかなければならないだろう。
それにしても、今日の彼女はかわいくてしょうがなかった。
俺は彼女の手を握りたくなったほどだ。
しかし、まだ恋人どうしになったわけではない。なんとか自重した。
彼女は、これからもっとかわいくなっていくだろう。でも彼女の手を握るのは、恋人どうしになるまでは我慢しなければならないと思っている。
お出かけについての詳しいことは、俺がまた連絡することになった。
だいたいの計画は既に立てているが、ネットでもっと情報を集め、これからもっと詳細を決めていかなければならない。
俺としては、ここで彼女とよりしく親しくなり、できればこの日の間に彼女に告白をしたい。
そう思っていると、優七郎からルインが入ってきた。
電話したいと言うので、OKすると、すぐに電話をしてきた。
「どうだ。今日こそは成功したのか?」
心配そうに話す優七郎。
「うん。なんとか。今度の休日に一緒にお出かけすることになった」
「よかったなあ。やっと、お前にも、うららかな春がきそうだな」
うれしそうな優七郎。
「ありがとう。お前のおかげだよ」
「何言っているんだ。お前の心が小由里ちゃんにとどき始めたということだよ」
「そうだといいんだけど」
「今度はいつ告白するかだな。その日の内に告白するつもりなんだろう?」
「うん。そうだけど」
「告白はお前もわかっている通り、今まで以上の勇気がいる。お誘い以上の」
「お前の言う通りだよな。俺なんか、誘うだけでもすごい勇気が必要だったから。これが、告白だったら、想像もつかないなあ……。林町さんに告白する時も、決心するまでが大変だったって言っていたよな」
「そう。まあ俺の場合、いつも一緒にいたから逆に告白しづらかったというのはあったけどな。彼女は、俺のことが好きだろうとは思っていたけど、俺が想っているだけっていう可能性もあったから」
「それが今ではラブラブな恋人どうしだもんな。うらやましいところはあるぜ」
「いや、俺達は恋人どうしじゃないって。何度言えばわかってくれるのかなあ」
といいつつ、ニヤニヤしながら言っているような気がするのだけれど。
「でもお前は、ちゃんと林町さんに告白できた」
「お前だって。熱い気持ちがあればできるさ」
「その日、彼女が一緒にいることを楽しんでくれれば、告白まで持っていけるんだけど。そこまで行けるといいんだけどね……」
「お前だったらできる。まあ今から悩んでいてもしょうがない。後数日あるんだから。彼女への想いを、もっともっと熱くしていけ!」
優七郎は熱く語る。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
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