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第九十四話 お誘いの時

昼休みになった。


いよいよ小由里ちゃんを誘う時がきた。


俺は今、小由里ちゃんへの想いを熱くしてきている。その熱い想いをお出かけに誘うという形で伝えていく。


しかし、一方で、だんだん緊張してきていた。


食欲がないので、すぐに屋上へと向かうことにする。


そのことを優七郎に伝えた。


すると、優七郎は


「今日こそお出かけに誘うんだ。気合を入れていけ! 心を熱くするんだ!」


という励ましの言葉をかけてくれた。


「ありがとう」


俺は優七郎に感謝すると、屋上へ向かって行った。


空はところどころに雲があるが、晴れている。陽射しはかなり厳しさを感じるが、さわやかな風が吹いているので、そこまで暑いとは思わない。


まわりには人はいない。


俺は、屋上から外の風景を眺めながら、小由里ちゃんの来るのを待つ。


それにしても、緊張する。


彼女に対する気持ちは熱くしているつもりだ。しかし、ちゃんと彼女を誘うことができるのだろうか。


どうしても前回誘えなかった時のことを思い出してしまう。


あの時は、メアドやルインといった彼女の連絡先を確認することが出来たから、まだ成果はなかったわけではないし、意味はあったと言えるだろう。しかし、今回は、誘うことができなければ。全く意味のない呼び出しになってしまう。


彼女にしてみれば、昼休みは、リラックスもしたいだろうし、他の人とコミュニケーションも取りたいだろう。


恋人だったらともかく、俺はまだただの幼馴染だ。今はまだそこまでして話をしたいとは思わないだろう。


もしかすると、昼休みも俺と話をしたいと思っている可能性はあるのかもしれない。


そうであってほしいと思うが、今の状況では難しいという気がする。


俺としてはもちろん、俺と話をするのを好きになってほしいと思っているのだが……。


いずれにしても、小由里ちゃんはせっかくここに来てくれるんだ。ここで誘いの言葉を言えなくてどうするんだ!


優七郎も言っていたように、もっと小由里ちゃんに対する想いを熱くしていかなければ!


そう思っていると、扉が開いた。


小由里ちゃんだ。


なんというかわいらしさだろう……。


「森海ちゃん、先に来ていたのね。ごめんね」


彼女は頭を下げる。


「う、うん。いや、気にしないでいいから」


最近、彼女と面と向かうだけで、胸がドキドキして苦しくなってくるが、今日はいつもにも増してつらい。


彼女は、四月の時点よりもさらにかわいくなってきている。


俺はこんなに魅力が増していっている彼女をお出かけに誘わなければならない。いや、誘いたい。誘いたくてたまらなくなってくる。


しかし、前回以上に言葉が出てこない。


「どうしたの?」


心配そうな小由里ちゃん。


俺の心の中で様々な想いが浮かんでくる。


何をやっているんだ。今日こそは、彼女を誘うんじゃなかったのか?


俺は彼女を誘いたい。でも彼女を見ていると、あまりのかわいさに胸が一杯になってしまって、声が出てこないんだ。


もう、今日は告白するわけじゃないんだろう。誘うだけじゃないか。誘うだけだったら、そこまで緊張しなくてもいいと思う。告白の時は、もっともっと勇気がいるんだぞ。


それはわかってはいるんだけど……。胸が苦しい。こんな思いをするぐらいなら、やっぱり今日は何も言わない方がいいのでは。


ではいつ彼女に言うんだ?


また今度ということで……。


そんなことを言っていると、いつまで経っても、彼女に何も言えないぞ。お前がぐずぐずしている間に他の男性に取られちゃったらどうするんだ!


それは困る。俺は彼女が好きで、結婚したいと思っている。


だったら、今日誘うしかないだろう。さあ、決断するんだ。


そうだな。その通りだ。今日言うしかない。今誘おう!


俺はようやく彼女を誘うことを決断した。


「小由里ちゃん、お、俺……」


その先の言葉がまた出てこない。しかし、ここで倒れるわけにはいかない。


「今度の休日……」


やっとここまで出て来た。あともう少し、もう少しだ。


「お、お出かけしたいと思うんだけど……。場所は、海の見える公園」


俺は力を振り絞って。言葉をなんとか出していく。


「お、お出かけ……」


小由里ちゃんはとても驚いた表情。


これはやっぱりダメだったか……。


でもまだ望みを捨ててはいけない。


「お願いします!」


俺は頭を下げた。


しばしの間、小由里ちゃんは無言。困惑している気もする。


今日言うべきではなかったのだろうか?


いずれは誘おうとしていたのだから、よかったのではないか。今日断られたって、また誘えばいいんだし、気にすることはない。


でもこれで彼女の気持ちが俺から離れてしまったら?


俺達は幼馴染だし、彼女は、俺のこと恋してはいなくても好意は持っている。これくらいで嫌われることはない。


彼女の返事を待っている間、俺の心の中で、いろいろな想いが浮かんでくる。


「森海ちゃん、いいよ」


彼女は顔を赤くしながら、小さい声で言った。


「いいの?」


「うん。お出かけしましょう」


その返事を聞いた瞬間、俺は、心が沸騰するような気持ちになった。


うれしい! 恋人どうしになるまでは、まだはるかに遠いのかもしれないが、これでそうなる為の第一段階には到達したと思う。素直にうれしい。踊り出したくなる気分だ。


でもまだ先は長い。ここで喜びすぎてはいけない。


「ありがとう」


俺は頭を下げた。


「よろしくお願いします」


彼女は恥ずかしがりながら微笑んだ。


俺はこのお出かけを絶対に成功させたいと思うのだった。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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