第九十一話 昼休みに向けて、心を熱くしていこうと思う
翌日の朝。
さすがに、夜はあまり眠ることはできなかった。
一旦は、彼女を誘うことを決断し、言う言葉を決めたが、寝床に入るとと、それでいいのかという気持ちが湧いてくる。
彼女を誘うことからして、もう少し後になってからでいいのでは、と思ったり、言う言葉はそれでいいのか、と思ったりする。
やっと眠ったと思ったらもう朝だ。
今度は眠気が襲ってくる。
でももう起きなければならない。
今日うまくいけば、これからは小由里ちゃんが俺の家に来てくれて、家事をやってくれるようになるんじゃないかと期待している。
もちろん毎日だと大変だから、時々でいいんだけど。
彼女が家事をしてくれる姿、素敵だろうなあ……。
と思うが、今は俺がすべてをこなさなければならない。
食事と家事とを終え、家を出る。
今日はなんだかいつも以上に疲れた気がする。
心の中は、小由里ちゃんのことでいっぱいだ。
心も体も疲れているが、そんなことは言っていられないだろう。
教室に入ると、優七郎に声をかけられる。
「おはよう。今日も元気にいこうぜ!」
今日も鈴菜ちゃんに怒られていたが、それがかえってエネルギー源になっているかもしれない。そんな気もする。
「おはよう」
俺達は教室の端に行き、話をし始める。
「今日彼女を誘うんだろう?」
「そのつもりだ」
「気合は入っているのか?」
「まあこの間よりはあると思う」
「今日決めるつもりでいけ。だけどもし今日がダメだったとしてもめげるなよ」
「お前の言う通り、今日こそ決めたいと思っている。ダメでもめげないようにしたいと思っている」
「その意気だ」
「でも彼女を目の前にすると、いつも言葉が出てこなくなっちゃう。もうあんなにかわいくなっているんだ、。微笑みを向けられたら、心が沸騰してしまう。今日も、今は決められると思っているんだけど、彼女の前じゃまたもじもじして、何も言えなくなっちゃう気がする」
「気持ちはわからなくはない。彼女はかわいくて、しかも、お前は彼女のことが好きなんだからな。好きな人の前だと、そうなるのも無理はない」
「その点お前は、好きな子にちゃん『好き』と言えるんだからすごいよな」
「俺は好きな子に対する気持ちが、もう抑えられないところまで来ていたから、どういう回答がきてもいいや、と思って彼女に告白したんだ」
「そこがすごいと思うんだ。鈴菜ちゃんに対する熱い気持ち、そして、どういう回答がきても気にしないその強い気持ち、こういうところがまだまだ俺には足りないと思う」
「いや、お前にだってできるはずだ」
「そうかなあ」
「好きな子と一緒に過ごしていきたいと思えば、恥ずかしがってはいられないと思うんだ。だから、お前も、そういう気持ちを乗り越えて今度こそ彼女を誘うんだ」
「うん。俺も乗り越えていかなければいけないと思っている」
「そうだろう。小由里ちゃんと恋人になりたいという気持ちをもっと熱くしていくんだ。お前はいずれ彼女に『好き』って言わなきゃならないんだぞ。お前にはまだそこまでの熱意がない気がする。だけど、誘う熱意はあるだろう」
「もちろんある。だから今日誘おうと決めたんだ」
「よし。それならいい。彼女だって、お前が誘えば嫌な気持ちになることはないはず」
「すぐOKしてくれるかなあ」
「それはわからない。すぐにはOKしないかもしれない」
「その可能性はあるよなあ」
「彼女の方も、心の準備が必要だと思う。だから、嫌な気持ちはしないだろうが、断る可能性はないとは言えない」
「それは嫌だなあ。でもお前は、それでも誘った方がいいと思うんだよな」
「今日誘っておけば、お前の彼女に対する好意は伝わる。次につながるんだ。もし断られたとしても、また次の機会を待って誘えばいい。しつこすぎるのはよくないが、俺も彼女の幼馴染だ、彼女がお前のことを、心の底では好きなことはよくわかっているつもりだ。ただ、とにかく、まだまだ二人ともお互いに遠慮しすぎていると思う。もう少し、お互いの気持ちを伝えあえるといいんだけど」
「恋人どうしのお前と鈴菜ちゃんのように?」
「そう、って、俺達は友達だって」
また顔を赤くする優七郎。
「とにかく、今回お前が小由里ちゃんを誘って、いろいろ話をするんだ。そして、仲を深めたところで告白する。その日一日じゃ無理かもしれないが、そうしていけば、恋人どうしになるのもそう時間はかからないと思う」
「お前の言う通りだ。もっともっと彼女と話をしていかないといけないと思う」
「そう。そこがお前たちには足りていない。でもそれができるようになれば、仲はどんどん深まっていくと思う」
「そういう意味では、彼女とほとんど話せなかった時期があったのは痛いなあ……。彼女といろいろ話をして、想いを伝えあうことができていたらと思う。それは、幼馴染としてではなく、恋人どうしにつながる想いの伝えあいというところができていたらと思う、でも俺はそれどころか、彼女と仲違いをしちゃって、幼馴染としての関係まで一回壊しちゃったからなあ……」
「もう過ぎたことだ。お前たちはもう仲直りしているんだ。それよりもこれからだ。二人でいい思い出を作っていけ。楽しい思い出をどんどん作っていくんだ」
「そうなるといいんだけど」
「そう言うことを言っていたんじゃダメだぞ。俺は小由里ちゃんと絶対いい思いでを作っていくんだ、という風に決心しないと」
「うん。それはお前の言う通りだ」
「じゃあ、今日、期待しているぜ」
「今度こそ! という熱い気持ちでいく」
「それでいい。俺のできるアドバイスはここまでだ」
「ありがとう」
俺は昼休みに向けて、心を熱くしていこうと思った。
「面白い」
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