第九十話 小由里ちゃんと屋上で話をしたい
俺は二人には申し訳ないが、小由里ちゃんをデートに誘いたい。
デートにはならなくても一緒に出かけたい。
どうしてもそう思ってしまう。
そして、二人に想われている以上、小由里ちゃんとの仲をこのままにしておくわけにもいかない。
恋人どうしになり、二人のことは友達として接していくのか。それとも逆に、二人のどちらかと恋人どうしになり、小由里ちゃんに対しては、幼馴染・友達として今後接していくのか。
いずれこの選択を強いられることになると思う。
小由里ちゃんを恋人にするのが一番だと思っているが、幼馴染から恋人どうしに変化していくことが、こんなに難しいことだとは……。
しかし、関係を進めなければ、いつまで経ってもこのままだ。
行動の結果、幼馴染:友達で終わったとしてもそれはそれでしょうがない。
俺は決断した。
彼女にルインを送る。
「こんばんは」
そう書いて送信した後、続けて、
「明日、話があるんだ。昼休み、屋上に来てくれるかな」
と一挙に書いて送信した。
無我夢中で書いた。
彼女を屋上に呼び出し、そこで彼女をデートに誘う。
しかし、送信してしばらくすると、これでよかったのか、という思いが湧いてきた。
前回は、ルインをまだしていなかったので、直接教室まで行って呼び出した。
今回はルインだ。
直接教室に行ったから、来てくれたのだが、今回は来てくれないんじゃないだろうか。
それならば、彼女を迎えに行けばいいのだと思うが、そもそもルインで送った時点で嫌だと思った可能性がある。
でももうルインで送ってしまったのだ。待つしかない。
俺は待った。
五分、十分、と時間が経っていく。
いつもだったら、数分以内に返事があるのだが、まだ既読もつかない。でも待つしかない。
十五分ほど経った頃、ようやく既読がつく。
ひたすら返事を待つ。
やっぱり嫌がっているのではないか、と思う。
ルインで送らず、直接言った方がよかったのだろうか?
でもルインって、こういうやり取りもするものではないかと思うのだが……。
俺は動きのない画面を見ながら悩み始めていた。
三十分ほど経った時。
「こんばんは」
と言う彼女の言葉が送信されてきた。
やっと彼女が送信してきてくれた。
今日は返信してこないかも、とも思っていたので、ホッとした。
続いて、
「明日昼休み、屋上で話をするということね」
と書いてきた。
俺はすぐさま、
「そうだけど。いい?」
と返信する。
少し時間があいた後、彼女は、
「いいよ」
と返信してきた。
この時間があいた時は、断られるんじゃないか、とドキドキしたが、一安心。
「ごめん。内容はその時に」
彼女を誘うということは、さすがに今返信したり、電話に切り替えて言うだけの勇気はない。
明日心を整えて彼女に言おうと思っている。
でも彼女は、今、内容を言わなくて怒らないだろうか。
そう思っていると、
「うん。じゃあその時に」
と彼女は返信してくれた。
「ありがとう。それじゃ明日」
「バイバイ」
「バイバイ」
やり取りは終わった。
これで明日、彼女を誘う態勢は整った。
今度こそは、彼女をデートに誘う。お出かけという言葉になるかもしれないが、一緒に出かけることには変わりはない、
しかし、明日、その誘いの言葉を彼女に言うことができるのか。
既に、彼女を呼び出そうとするだけでも、心の準備に時間がかかったし、心の中も相当揺れ動いていた。
明日はもっと心に負担がかかることを行わなければならない。
前回うまくいっていないので、そのプレッシャーはきつい。
既に俺の心は、明日のことで頭がいっぱいだ。
それにしても、彼女は、今日、既読がついてから十五分以上、返事をしなかった。
やはりルインで言ってきたことに怒ったのだろうか?
それとも呼び出されること自体が嫌だったのか?
最終的にはOKをもらった。それはよかったと思う。
でも怒っていたり、嫌だと思ったのだったら、それは申し訳ないと思う。
もしそう思ったのなら、明日謝るしかないだろう。
さて、では明日、彼女をどうやって誘えばいいだろう。
いきなり、
「今度の休み、デートしよう」
と言うがいいのか。
でもこれはあまりにも飛躍しすぎていると思う。
それに、
「一緒に出かけたい」
と言う言葉すら出てこない俺にはハードルは高い。
では、どう言ったらいいのか。
いろいろ悩む。
いや、言葉自体は、そんなに難しいことではない。
「デート」もしくは「お出かけ」という言葉を言えばいいのだ。
しかし、その言葉を言うのには、とてつもない勇気が必要だ。
「好き」とか「付き合ってほしい」という言葉に比べれば、まだ言いやすいはずなのだが、俺はそれさえも言うことに苦労をしている。
小由里ちゃんから誘ってくれたらいいのになあ………。
と思うが、それではいけない。
彼女のことを一番に想っているなら、俺から誘わなくてはいけない。
俺は、それからも悩んでいたが、
「今度の休み、俺と出かけてくれるとうれしいんだけど」
と言うことにした。
OKしてくれるかどうかはわからない。
でも誘うこと自体が大切なのだろう。今度こそうまく行くといいなあ。
俺はそう思いながら、寝るための仕度をするのだった。
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