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第八十一話 俺と夏音ちゃんには、いとこどうしとして仲良くしてほしいと思う鈴菜さん

鈴菜ちゃんは続ける。


「もちろん、わたしが言うべきことじゃないんだけど、あなたが海島くんに振り向いてもらうのは大変だと思う」


「それでもわたし、森海さんのことが好きなんです。今は小由里さんのことで頭が一杯だと思いますけど、わたしのことで頭が一杯になるようにしてみせます」


真剣な夏音ちゃんの表情。


「わたしは小由里ちゃんの親友だから、あなたの応援はできない」


「そうですよね。それは仕方がないと思います」


ちょっと残念そうな夏音ちゃん。


「でもあなたの想い自体は感動したわ」


「そうなんですか?」


「うん。そうよ。一途な心自体はわたしもよくわかる」


「林町さんも優七郎さん一途ですものね。わたし、うらやましいなあ、と思いました」


「わたしの初恋は優七郎くんだし、これからも優七郎さんだけよ。愛していくのは」


さっきよりものろけの度合いが上がってきている気がする。


優七郎は、さらに顔を赤くしている。


「すごいですね。ちょっとでも他の子に気が向いたら頬をつねるところとか、そういうのも含めて、わたしも林町さんみたいに一筋で行きたいです。尊敬しています」


「尊敬されるのはうれしいんだけど……。頬をつねることはあまり勧めないわ。わたし、すごいやきもちやきだって、自分でもよくわかっているから」


苦笑いする鈴菜さん。


「でもそれは優七郎さんのこと、大好きだからですよね」


「そう。だから、優七郎くんが他の女の子に気を向けるとすぐ頭に血が上っちゃうの。まして、褒めたりしているとね。さっき、夏音ちゃんのことをかわいいって褒めていたでしょ。わたしもかわいいと思ったけど、優七郎くんが言うとね、わたし以外の子に気が向いたことになっちゃうでしょ。だから優七郎くんを怒っちゃったの。ごめんなさいね。怖かったでしょ」


「そうですね。怖かったです。それとさっきの森海さんに対しての言葉も」


「もう少し穏やかにならなきゃいけないって、自分でも思っている」


「でも友達思いで、本当は優しい人だということがわかりました。わたしのことのも気を配ってくれますし」


「そう言われるとうれしいな」


鈴菜さんと夏音ちゃんは顔を見合わせて笑った。


どうやら二人の間は、穏やかになり始めたようだ。


俺はホッとする。


鈴菜さんは俺の方を向くと、


「海島くん、夏音さんは素敵な人ね。かわいいし、一途だし。小由里ちゃんのことを思うと、一途すぎるのは困るところはあるけどね。でもいとことしてだったら、これからも仲良くしていけるといいと思う」


と夏音ちゃんを褒める。


「俺もそう思うよ」


「でも恋という意味では、親友である小由里ちゃんを応援したい」


「林町さん……」


「わたしの言えるのはそれだけ。改めてになるけど、さっきは怒っちゃってごめんなさい。優七郎くん以外の人にはあまり怒らないようにしていたんだけど、ついつい怒っちゃった」


「もうそれはいいって」


鈴菜さんの優しいところは知らなかったわけではないのだけれど、今までは、怒る人で怖いというイメージが強かった。


まだまだ怖いところが多い。しかし、こういう優しい部分もある。


彼女のイメージがいい方向になってきたと思う。


なごやかな雰囲気が流れてきたところで、


「じゃあ、俺達はそろそろいくかな」


と優七郎が言った。


「そうね。カラオケをしましょう」


鈴菜さんもそう応える。


「でも二人って本当に仲がいいよな。けんかをしていてもすぐ仲直りするし、こうやってカラオケに行くんだからなあ……。恋人どうし、いい関係だと思うよ」


「褒めてくれてありがとう、って、俺達はいつも言っているように友達だって」


「優七郎くんの言う通り、友達よ」


「でも仲がいいでしょう? 充分恋人どうしになっていると思うけど」


「仲がいいからって、恋人どうしだとは限らないよな」


「そうそう。わたしたちは仲のいい友達。恋人どうしじゃないわ」


そういいつつも二人は顔を赤らめる。


付き合いだしてもう三年目のはずなのに、ういういしさがある。


まったくこの二人は……。こっちまでは恥ずかしくなってくる。


「わたしも、お二人は仲がよくて、恋人どうしだと思います。うらやましいです」


夏音ちゃんはそう言った。


「うらやましいだなんて……。さっきも頬をつねってくるし、そんないいもんじゃないよ」


「そういうことを言うんだ。じゃあ、もっともっと、つねってあげましょうか?」


「どうしてそうなるの」


「だって、わたしに頬をつねってほしいんでしょ」


「そう言うことは言っていないんだけど」


「もう素直じゃなんいんだから」


そう言って、鈴菜さんは優七郎の頬をつねる。


「痛いです。もっと抑えてください」


「わたしのこと、好きっていったら離してあげる」


しかし、よく鈴菜さんもこういうことが言えるものだ。俺と夏音ちゃんがいるのに。


それにほんのちょっと前に、


「わたしたちは仲のいい友達。恋人どうしじゃないわ」


と言ったような気がするけど、気のせいかなあ。


「俺は鈴菜ちゃんのことが好きだ。これでいいだろう」


「なんか気持ちがこもっていない気がするけど。まあいいわ」


と言って鈴菜さんは、優七郎の頬から手を離す。


「わたしも優七郎くんのこと好きよ」


「ありがとう」


しばらくの間、また二人は見つめ合っている。


これが恋人どうしの関係というものだろう。


俺と夏音ちゃんは、微笑みながらそれを眺めていた。


そして、


「じゃあまた学校でな」


優七郎がそう言うと、


「またな」


と俺もそう応えた。


鈴菜さんと夏音ちゃんも、あいさつをしていた。


最初のとげとげしい雰囲気はもうないようだ。お互いに打ち解けてきていると思う。


それだけでも安心する。


俺達はお互いに手を振り合い、それぞれの目的地へと向かった。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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