第七十八話 レストランに向かって
「それじゃ、そろそろレストランに行こう」
「そうですね」
ソフトクリームを食べ終えたので、俺達二人は、彼女が行きたいと言っていたレストランに向かって移動を始めた。
「ソフトクリームおいしかったです」
「そうだな。俺はそんなには食べない方だけど、おいしいものだな」
「おにいちゃんと二人で食べることができてよかったです」
彼女はそう言って微笑んだ。
俺もなんだかうれしい気分。彼女の笑顔は、小由里ちゃんや弥寿子ちゃんとはまた違った良さがある。
俺達がそういう話をしながら歩いていると、声をかけてくる人がいた。
「おう、森海じゃないか。お前がショッピングモールに来ているとは思わなかったな」
「優七郎じゃないか」
「今日は一人できたのか?」
「いや、今日は女の子と一緒に来ている」
「だ、誰だ?」
驚く優七郎。
「この子だよ」
「この子? ち、ちょっと、こっちに来い。話がある」
「な、なんだ? 話って?」
「とにかく来い」
「夏音ちゃん、ちょっと待ってて」
「はい。待っています」
夏音ちゃんは驚いていたが、そう言った。
俺と優七郎は夏音ちゃんから少し離れたところに行く。
「おい、お前、一緒にいる女の子はいったい誰なんだ? 小由里ちゃんでも居駒さんでもないだろう? お前、その二人以外とお出かけしているなんて……。その今いる女の子のことが好きになったのか? どうなんだ?」
「いや、そういうわけじゃないんだが」
「じゃあなんでその子と一緒にいるんだ? こういうかわいい子と。お前の本命は小由里ちゃんだったんじゃなかったのか? もしそうじゃなくなったなら、二人の幼馴染として言わなくちゃいけないな」
優七郎は興奮気味に話す。
「そうじゃない。彼女は俺のいとこだよ。ほら、お前も知っている、夏音ちゃん」
「夏音ちゃん?」
「そうだ。お前も彼女と遊んだことがあるだろう?」
「あの夏音ちゃんなのか?」
「そうだよ」
「そう言われて見ると、面影はあるかな。でもあの頃からずいぶん変わったな。かわいくてきれいになってきた」
「そうだろう。俺も最初は彼女が夏音ちゃんとはわからなかった」
「今、中学校三年生だっけ」
「そうだ」
「成長したもんだな。俺達もそれだけ成長してきているいうことだ」
「そうだよな。俺達も成長している。彼女も大きくなったということだ」
「そうだな」
俺達は顔を見合わせて微笑んだ。
「だけど、今日お前のところに来たってことは、ただのいとことしてじゃないな」
「うーん……」
「彼女、お前のことが好きなんだな」
「うーん、そうなのかなあ」
「いや、好きだと思う。それも恋の相手として」
「俺達いとこなんだけどなあ……」
「いとこだって結婚できるんだから恋愛の対象に充分になると思う」
「今だけの気持ちかもしれないけど」
「そうじゃないと思うけどな」
優七郎はそう言うけど、まだ彼女は中学校三年生だ。彼女自身も、俺一筋と言ってくれているけど、出会いという点ではこれからだ。俺より素敵な人が現れれば、その人を好きになっていくのだと思う。それは、仕方のないことだ。
そう思っていると、優七郎は、
「お前、モテるよなあ」
と言った。
「そうかなあ」
「だって、居駒さんに夏音ちゃん、それに小由里ちゃんだってお前のこと好きだと思っているよ」
「小由里ちゃんの気持ちはわからないところがあるけどな」
「小由里ちゃんはお前のこと絶対に好きだから。恋する対象にもなってくると思う」
「そうあってほしいと思うけど」
「とにかく夏音ちゃんは、幼い頃からお前のことが好きだった。これは一緒に遊んでいた俺が言うんだから間違いない。それが、多分恋という気持ちに変わってきたんだと思う。まあ今は時間がないから、お前さえよければ後で話そう」
「ありがとう。それじゃまた後で」
俺達二人は、夏音ちゃんのところへ戻ってきた。
「ごめんね。夏音ちゃん。俺のこと覚えてる? 優七郎だよ、優七郎」
「ああ、優七郎さんですよね」
「こんなにかわいくなって……。俺はうれしいよ」
「まあ、優七郎さんたら。心にもないことを」
「そんなことはない。こんなにかわいい子はなかなかいないよ。素敵な女の子に成長してきたね。これだったら俺も好きになっちゃいそう」
顔を赤くする夏音ちゃん。
優七郎は結構軽いところがあり、歯の浮くようなセリフを女の子に言うことがある。
本人からすると、女の子の魅力を心の底から褒めているのであって、鈴菜さんのことだけが好きで、浮気をしているわけではないのだから、それでいいじゃないかと言うのだが……。
鈴菜さんがいたら、大変なことになるんじゃないか、と思っていると。
「優七郎くん! あなたって人は! ちょっとわたしと離れた隙に! 浮気しちゃだめだっていつも言っているでしょ! どうしてわからないの!」
鈴菜さんが、優七郎の頬をつねる。
「ご、ごめんなさい。ちょっとかわいいと思っただけです」
あわてて謝る優七郎。
「優七郎くんはわたしのことだけ見ていればいいの」
「ごめんなさい。鈴菜ちゃんだけです。俺の好きな人は」
「わかればいいの。わかれば」
そう言うと鈴菜さんはやっと優七郎の頬から手を離した。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
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