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第七十七話 アイスクリームを食べる夏音ちゃん

「それじゃ、おなごり惜しいですけど、わたしはこれで」


少し寂しそうな表情の弥寿子ちゃん。


「じゃあまた学校で」


「そうですね」


そう言うと弥寿子ちゃんは夏音ちゃんの方を向き、


「わたしは先輩のものです。今はまだまだ振り向いてもらえませんけど、いつか恋人どうしになるようにさらに努力します。あなたというライバルが現れたんですものね」


と言った。


「わたしだってあなたには負けませんよ。森海さんと恋人になるのはこのわたしであることをお忘れなく」


夏音ちゃんもそう言って応戦する。


また火花を散らす戦いになるのかと思ったが、二人は顔を見合わせて微笑み始めた。


「お互い、いいライバルとして努力していきましょう」


「そうですね。居駒さんとはいいライバルでいたいと思います」


「お互い、先輩の恋人になれるように努力していきましょう」


と弥寿子ちゃんは微笑みながら言う。


弥寿子ちゃんも微笑みながらうなずく。


どうやらこれでとりあえず二人の間は、穏やかな空気になったと思う。


先程は一時的にこういう空気になったものの、すぐにまた厳しい空気になってしまったが、なんとかこれからしばらくはこの空気は維持できそうな気がする。


いつまでこの状態が続くはわからないが、今はホッとしてもいいだろう。


「では先輩、また学校で」


弥寿子ちゃんは手を振り、本屋の方向へ向かって行く。


俺は弥寿子ちゃんに心の中で、改めてごめんと言った。




俺達は、アイスクリームを買い、店にあるテーブルに座って食べている。


「おいしいですね。おにいちゃん」


彼女のおいしそうに食べている姿を見ていると、こちらも微笑ましい気分になる。


こうしてみると、まだ子供的なところが残っている。


だけど、もう恋をし始める年頃になっているんだよなあ……。


そう思っていると、


「おにいちゃん、さっきの居駒さん、いい人ですよね」


と夏音ちゃんが言った。


「そうだな。一途で、それでいてまわりへの気配りも意外と出来ている。俺もいい人だと思っている」


「おにいちゃんは、彼女のことが好きなんですか?」


そう聞かれて、俺はどう答えようかちょっと迷う。


好き、という言葉にはいろいろな意味がある。


嫌いか好きかと言われて、どちらかと言えば好き、という場合でも好き、ということになるし、恋という意味での好きもある。


好意を持っているとは言えるのだが……。


「それはなかなか難しい質問だな。好きと言えば好きだ」


「わたしより好きですか?」


「また難しい質問をしてくるね」


「そんなに難しくはないと思うんですけど」


「二人とも好きだよ。友達として、そしていとことして」


「そうじゃなくて、どちらが恋人に近い『好き』なんですか? もちろん小由里さん以外で」


「小由里ちゃん以外でね……」


「どうなんですか?」


「そう言われてもね。どちらも大切な人だ。でも恋となると別問題になってしまう。俺にとっては、小由里ちゃんが恋する対象なんだ。今は二人とも俺にとっては、好きで大切な人だという答えにさせてくれ」


「おにいちゃん……。やっぱり小由里さんのことが一番になってしまうんだ……」


彼女は無言になる。


怒ったかな。まあ怒ったとしても無理はない。彼女は俺に恋してきていると言うのに、俺はその想いに応えることができないのだから……。


やがて彼女は、


「そうですよね。おにいちゃんならそう言うと思っていました」


と言った。


「俺のことが嫌になったかい?」


「そんなことはないです。むしろ、ますます闘志というんでしょうか、そういうものが湧いてきます。居駒さんも言っていたじゃないですか。絶対にあきらめないって。わたしだって、おにいちゃんが、いくら小由里さんのことが好きだったとしても、何度ただのいとこだと言われたとしても、おにいちゃんを振り向かせるまで、一生懸命努力します」


「夏音ちゃん……。でもどうしてそこまで俺のことを想ってくれるんだ。俺なんて夏音ちゃんの様な素敵な子に好かれるような人間には思えないんだけど」


「もうおにいちゃんたら。それはさっきから言っているでしょ。おにいちゃんほどの魅力のある人間はいないって。居駒さんも言っていたじゃないですか」


「二人ともその内、俺のことなんか想わなくなると思う。世の中には、俺より素晴らしい人は一杯いるんだ。そういう人を知ったら、夏音ちゃんもその人のことが好きになっちゃうと思う」


「もう。おにいちゃん、自分のことをそんなに低く思わないでください。なんでこう自分の魅力に気がつかないんだろう」


少しあきれたという感じの夏音ちゃん。


「居駒さんも、おにいちゃんの魅力を感じて好きになっている。小由里さんもおにいちゃんの魅力は充分わかっていると思う」


「そうかなあ。そうだといいんだけど」


「小由里さんがおにいちゃんのことを、恋人として好きになる時はそう遠くないかもしれない。そうなったら、わたしはもう勝ち目はなくなるかもしれない。でもそうなったとしても、わたしはおにいちゃんに振り向いてもらえるように努力します」


「面白い」


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