表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/104

第七十六話 ライバルどうしになる夏音ちゃんと弥寿子ちゃん

弥寿子ちゃんは夏音ちゃんの方を向く。


「夏音さんって言いましたよね」


「そうです。今の苗字は海林ですけど、やがて、海島になります」


夏音ちゃんは胸を張って言う。


「わたしこそ、先輩と同じ苗字になるんです」


弥寿子ちゃんも気合が入っている。


火花を散らして対峙する二人。


二人とも、穏やかになってほしい……。


そう願っていると、やがて、弥寿子ちゃんが、


「わたしたち、いいライバルになれそうな気がする」


と言って微笑み始めた。


夏音ちゃんも、


「わたしもそう思います」


とホッとした様子で微笑み始めた。


これで二人の間の厳しい関係も緩んでくるかなあ……。二人とも根は優しいから、いつまでも厳しい状態は続かないとは思うんだけど……。


「わたし、ここで先輩と出会ったので、本当はこのまま先輩と一緒にいたいです。でも、あなたも先輩と会うのは久しぶりなんでしょう?」


「三年ぶりです。この日を楽しみにしていました」


「久しぶりに会ったんですもんね。しかも好きな人と」


「はい。好きな人と会えて、出かけることができました。今日はそれだけでもうれしいです」


「そうだと思うわ。そんな、いとこどうしの二人のお出かけにわたしが一緒にいるわけにはいかないわよね」


弥寿子ちゃんは少し寂しそうな表情になる。


「久しぶりに好きな人と会えたんですもの。わたしが同じ立場でも二人の時間を楽しみたいと思う。だからわたしが言うのは何ですけど、今日は先輩と楽しんでください」


「居駒さん……」


夏音ちゃんは少し申し訳なさそうな表情をしている。弥寿子ちゃんの気持ちはわかるのだろう。


「でもいとことしてですよ。それは忘れないでくださいね、と言っても無理なのかもしれませんけど」


「そうですね。残念ながら。今日はまだいとこどうしということになりますね。でもその内両想いになって、いとこというところを越えていきます。次お会いする時は、いとことしてではなく、恋人として紹介させていただきますね」


「わたしの方こそ両想いになりますよ。次あなたに会った時は、先輩を恋人として紹介できるようになりますね」


「でも居駒さん、わたしはあなたのことは嫌いじゃないです。もちろん森海さんに対する想いはわたしの方が上ですけど、あなたの森海さんのことが好きだという気持ちは、わたしのも伝わってきます。気配りができるし、いい人だと思っています」


「わたしもあなたのことは嫌いじゃない。先輩に対する一途な想いは、わたしもすごいと思う。でも先輩に対する想いはわたしの方が上ですよ」


弥寿子ちゃんはそう言うと、微笑んだ。


夏音ちゃんも微笑む。


これで二人の間も、少しずつ穏やかな関係になっていきそうだ。


俺は少しホッとした気持ちになる。


弥寿子ちゃんは俺の方を向いた。


「今日は仕方ないです。わたしはもうここを離れます」


「それでいいの?」


「はい。今日はもともと本を買いに来たんで、この後本を買ったら帰ります」


また寂しい表情をする彼女。


俺はこの表情も苦手だ。彼女の悲しそうな表情、寂しそうな表情、できれば見たくない。


彼女の笑顔をずっと見ていたい……


俺は最近、そういうことを想うようになってきた。


これは、小由里ちゃんへの想いとはまた別のもの。恋というものに到達した想いではないと思っている。


とはいうものの、弥寿子ちゃんへの好意は、こうして彼女と会ったり、話している内に大きくなってきている。


「ごめんな」


俺はそう言うことしかできない。


彼女は、その言葉を聞くと、


「ごめんなさい。先輩に気をつかわせちゃったんですよね。わたし、先輩のそういう優しさも好きですよ」


と言って俺に頭を下げた。


「いや、優しくなんかないよ。逆に冷たい人間かもしれない」


「何を言っているんですか。わたしにとっては充分優しいですよ」


「そう言ってくれると、ありがたいな」


「でも今日はお二人のお出かけですけど、先輩と結婚するのはわたしです。また一緒にお出かけさせてください。今度はデートということでお願いします」


弥寿子ちゃんは、真剣な表情で言う。


俺はどう応えるべきなのか。


ゴールデンウィークの時は、部活動の一環という意味があり、「お出かけ」という形にできたが、あれから彼女とはもっと親しくなってきていると言っていい。


今度出かける時は、「デート」という形になってしまうと思う。


さすがにそれはできないと思っている。


しかし、一方で、彼女への好意も増しているところがあるので、それを受けてもいいじゃないか、という想いも心の底にある。


俺が黙っていると、


「ごめんなさい。ちょっと急ぎすぎましたね。先輩がその気になったらでいいですよ。でもわたし、先輩とまた一緒に出かけたいんです。またこの間みたいな楽しい思い出を作りたいです」


と言った。


こういう風に言われると、また弥寿子ちゃんと出かけたくなってしまう。


でも……。


「ごめん。気持ちはうれしいんだけど……。今日はその気持ちを受け止めるだけにさせてほしい」


「いいですよ。わたしは先輩のものなんですから。そう言ってもらえるだけうれしいです」


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


と思っていただきましたら、


下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。


ブックマークもいただけるとうれしいです。


よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ