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第七十五話 俺のことがますます好きになる二人

「わたしとしては、恋人どうしとして好きだと言ってほしかったですけど」


夏音ちゃんはちょっと頬を膨らませている。


「でもいいんです。後、十年後には結婚しているんですから」


「け、結婚って? いとこどうしなのに?」


弥寿子ちゃんは厳しい表情になり始める。


「いとこどうしなら結婚できるんですよ。幼い頃から愛を育んできた二人が、恋愛へと発展し、結婚する。素敵な話じゃないですか」


「愛を育むって、それはいとことしての愛じゃないですか。第一、先輩自体あなたのことをいとことして好きだと言っているじゃないですか」


「それが恋へと変わっていくんです。居駒さんと言いましたよね。あなたの言う通り残念ながら、今はまだ森海さんは恋の対象としてわたしを見てくれません。でもまだまだこれからです。どんどん自分を磨いていって、わたしのことを恋してもらえるようになります」


「わたしだって、先輩のことが好きなんです。あなたや浜水先輩のように、幼馴染ではないですけど、先輩のことを想う気持ちは、一番強く持っています。先輩と結婚するのはわたしの方です」


「わたしの方が森海さんのことを想っています」


「いいえ、わたしの方こそ森海さんのことを想っています」


二人はしばらく対峙していたが、やがて俺の方を向き、


「森海さんは、誰と結婚したいと思っているんですか?」


「先輩は、わたしたち二人のどちらと結婚したいと思っているんですか?」


と聞いてきた。


二人とも真剣な表情。


「わたしと結婚したいですよね。幼馴染でもありますし」


「わたしですよね。今愛を育んでいて、これから恋人どうしになっていくんですから」


高校一年生まで女性に縁のなかった俺が、まさか二人から結婚について、迫られるとは思わなかった。


俺のことが好きなのはうれしい。しかし、恋の対象としているのは小由里ちゃんだし、結婚するのは、やはり小由里ちゃんとだ。


二人には申し訳ないが、これは言っておかないといけないだろう。


「二人ともありがとう。こんな俺のことなんか好きになってくれて」


俺は頭を下げた。


「何を言っているんですか。森海さん以上の人なんかいませんよ」


「その通りです。先輩以上の人なんかいません」


「俺のこと買いかぶってくれるのはありがたいけど、たいした人間じゃないよ。二人にはその内、俺なんか忘れちゃうような素敵な人がきっと現れる」


「もう、どうしてそういうことを言うんですか」


「そうですよ。先輩以上の人なんか、これから現れるはずがないじゃないですか」


二人とも少し涙目になっている。


「とにかく」


俺は一回言葉を切り、続ける。


「俺は好きな人がいる。二人が知っている通り、小由里ちゃんだ。特に弥寿子ちゃんには何回も言っていると思う。彼女とはいずれ結婚したいと思う。今はまだ恋人どうしにもなれていないけど、両想いになっていきたい。だから、ごめん。二人の想いには応えられない」


俺は二人に頭を下げる。


これで、弥寿子ちゃんとの、仲の良い友達としての関係が壊れるかもしれない。


今までも俺の小由里ちゃんに対する想いは言ったことはあったが、こう何回も言われるとさすがに嫌になってくるのではないかと思う。


また、今まで築いてきた、夏音ちゃんとの仲の良い、いとこどうしの関係も壊れてしまうかもしれない。


二人とも俺は好きだ。でも恋という段階に発展させるわけにはいかないだろう。


嫌われてもしょうがない。


しばらくの間、無言の時間が続く。


これで、二人からは嫌われただろうな。残念な気持ちで一杯だけど、しょうがない。


しかし、やがて、弥寿子ちゃんは俺の方を向き、


「先輩、これくらいでわたしはめげませんよ。何度先輩が、浜水先輩のことを好きだと言っても立ち上がります。その度にわたしはもっともっと先輩のことを好きになります」


と力を込めて言った。


夏音ちゃんはうつむいていたが、その言葉を聞くと、俺の方を向き、


「わたしもこれくらいではめげません。今は小由里さんのことが好きでも、絶対にわたしのことを好きになってもらいます」


そして、彼女は、弥寿子ちゃんの方を向き、


「居駒さん、あなたよりもわたしは森海さんのことが好きです。この想いで森海さんを恋人にしてみせます」


と言った。


弥寿子ちゃんはびっくりした様子だったが、


「あなたは、わたしよりも一緒にいた時間は長いようですが、恋は想いの深さで決まると思います。想いはあなたより上です」


と力強く言った。


夏音ちゃんと弥寿子ちゃんは、俺の方を向き、


「森海ちゃん、今は小由里さんのことを結婚相手にしたいと思っているかもしれませんけど、いずれわたしが結婚相手になります」


「わたしこそ先輩の結婚相手です」


と二人とも熱を込めて言う。


俺はただその言葉を聞くことしかできない。


嫌われるかもしれないと思ったのに……。二人ともかえって今まで以上に、俺に対する想いが強くなった気がする。


小由里ちゃんのことが好きで結婚相手にしたいと言っているのに、それにもかかわらず、二人とも俺のことを好きでいてくれているのだ。


その気持ちはありがたく受け取りたいと思う。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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