表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/104

第五十九話 居駒さんとわたし(小由里サイド)

森海ちゃんと、今日初めてルインのやり取りをした。


わたしは部屋で紅茶を飲みながら、じわじわと湧き上がってくるうれしさをかみしめていた。


ここまでくるまで、長い道のりだったと思う。


中学校二年生の時、森海ちゃんと仲違いしてしまってから、ほぼ二年。


その間は、森海ちゃんに話しかけることはできず、森海ちゃんの方もわたしに話しかけなくなり、二人の間の会話はほとんどなくなってしまった。


わたしも、決して彼との関係がこのままでいいとは思わなかった。


「嫌い」と言ったのは言いすぎたと思い、そのことを謝ろうとは思ったが、その勇気はなかなかでなかった。


幼馴染なんだから、もっと気軽に話せるはずなのに、と思う。しかし、それも時が経てば経つほど難しくなってくる。


すっかり疎遠となった二人の仲だったが、高校二年生になったわたしは、このままでは時間が経つばかりでどうにもならないと思い、なんとか海森ちゃんと仲直りしたいと思った。


そのことを鈴菜ちゃんに相談した。


鈴菜ちゃんのアドバイスに従い、森海ちゃんが声をかえてくるのを待つとともに、自分の持っている彼に対するこだわりをなくしていこうと努力していたのだけれど。


居駒さん。


彼女は、森海ちゃん一緒に仲良く歩いていた。しかも、ただ単に、女の子と一緒に歩いているのならいいのだけど、彼は仲良く歩いているばかりか、手を握り合って歩いていた。


これは、わたしに大きな衝撃を与えた。


わたし以外の人と仲良く手をつないでいるなんて……。


こんな感情がわたしにあるのか、と思うような、嫉妬心が沸き上がってきた。


中学校二年生の時にもあった感情だったが、今回の方が大きい。


こんな感情、持ってはいけない。いつもの穏やかなわたしに戻らなきゃ。


と思うのだが、どうにもコントロールが難しい。


森海ちゃんにも、なんでわたしの嫌がることをまたするの、と思った。


せっかく、仲直りしたかったのに。またこれで、二人の距離は遠くなってしまう。


そして、また彼に「嫌い」と言ってしまった……。


居駒さんは中学校の後輩で、


「まだ先輩の恋人ではないですけど、いずれ恋人どうしになってみせます」


と言っていた。


彼女は本気で彼の恋人になりたいと思っている。


それに対して、彼の方は。まだそこまでの気持ちになっていないようだが、このままだと彼女の攻勢によって心が動いてしまうかもしれない。


わたしも彼女の気持ちはわからないではない。


いや、むしろ、わたしが森海ちゃんの幼馴染ではなく、好意を寄せる存在でもなかったら、その一途な恋を応援していただろう。


わたしとしては、自分が森海ちゃんの恋人になりたい、という気持ちはもちろんある。


わたしは今まで、森海ちゃんの以外の人に恋したことはない。彼に寄せている好意も、他の人に持ったことはない。


中学校の頃も、わたしのことに好意を持っている人はいたようだし、高校になってからもそういう人はいたようだ、そういううわさは友達から聞いていた。


ただ、わたしに告白してくる人はいなかった。多分森海ちゃんに遠慮していたんだろうと思う。


告白してきた人がもしいたとしても、森海ちゃん以外の人に恋という感情は抱けないので、断るしかなく、それでよかったと思っている。


恋をするとしたら、森海ちゃん以外の人は考えることはできないと思う。


しかし、今のわたしは、彼女ほどの想いの強さはない。


森海ちゃんの恋人になるには、彼女のように、もっと彼を好きにならなければいけないのではないかと思う。


でもだからと言って、彼女がこのまま森海ちゃんの心を占めていってしまうのを、指をくわえて見ているわけにもいかないし……。


わたしは、その恋を応援したい気持ちと、彼女に対する嫉妬心がごちゃまぜになっていた。


その後、やっと仲直りはできた。


わたしも、「嫌い」と言ったことについて、謝ることができてよかったと思う。


しかし、この心の整理ができない状態が続いていたことと、幼馴染から恋人への変化に対する戸惑いもあって、彼とは連絡先の確認しかできなかった。


一方では、彼と恋人になりたいという気持ちはあるのに、なんでわたしはもう一歩進むことができなかったんだろうと思う。


彼の方はどうなんだろうか。わたしと恋人どうしになりたいと思っているとは思う。しかし、今日は、彼の方からのアプローチはなかった。


わたしの方からアプローチすべきではないかという気持ちもある。


しかし、やはりもう少し時間がほしい。


それにしても、なぜわたしは、森海ちゃんのことになると、こんなに心が乱れてしまうのだろう。いつもは、穏やかで、おしとやかで、優しい、とみんなから言われているのに……。


今日、ルインでのやり取りが始まった。


まだまだわたしの心が整理できない状態ではあるのだけど、でも彼との関係はこれで少し進むことができたと思う。


彼もわたしに好意を持っていると思う。お互いに好意を増していけば、恋人どうしになれるのではないかと思う。


ただ彼は、これから居駒さんとどうしていこうと思っているんだろう。


既に今の時点で、好意は結構持っていると思う。


恋というところまで行っていまうのだろうか。それとも仲の良い先輩後輩のまま行くのだろうか。


いや、彼女のことを意識しすぎてはいけない。もちろん、意識しないということはできないが、しすぎると、森海ちゃんへの想いにも影響が出てしまう。


まずわたし自身が、彼に対する想いをもっと強くしていかなければならない。


その為に、これからルインのやり取りをしていく。


わたしは紅茶を飲み終えると寝る準備をし始めた。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


と思っていただきましたら、


下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。


ブックマークもいただけるとうれしいです。


よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ