第五十六話 小由里ちゃんへの想いと弥寿子ちゃんとのやり取り
小由里ちゃんを女の子としてただ意識するだけでなく、好きな女の子として意識する。
これが、最近の俺の彼女に対する意識ということになる。
そうであるならば、逆に、もっと積極的になればいいのでは、と思う。
それこそ優七郎が言うように、「好き」と言って押しまくるという方法だ。
まあそこまでいかなくても、もっと好意を前面に押し出してもいいのでは、と思う。
しかし、今度は、幼馴染という意識がそれを抑制してしまうところがある。
俺が彼女に対して、そこまで積極的になれないのは、そういうところがあると思う。
小由里ちゃんを彼女にしたい、恋人にしたい、という気持ちはどんどん強くなってきているが、一方で、幼馴染のままで、仲直りした今の状態でいいのでは、という気持ちも根強くある。
多分、彼女も同じ気持ちではないか、と思う。
あの時、彼女が、俺の告白を受け入れなかったのは、弥寿子さんのこともあるけれど、恋人ではない幼馴染どうしでいたい、という気持ちが、俺みたいに根強くあるからのような気ががする。
では、これからどうしていくか。
今は、このルインでのやり取りを重ねて行って、彼女もだいぶ慣れてきた頃に、お出かけに誘うのが一番いいように思える。
俺自身も、緊張せずに自然と誘えるようにならなければならない。
ただ、意外だったのが、優七郎も最初鈴菜さんを誘った時は緊張したということだ。あれだけ、お互いをわかっているはずの二人が、と思うのだが、それだけ「一緒に出かける」ということは緊張するということなのだろう。まして、二人の場合はデートなのだから。
とはいえ、俺も次誘う頃には、デートとして誘うことになると思う。いや、そうなってほしい。
その時は、今日よりも緊張するかもしれない。「デートしたい」という言葉を出すのに苦労するかもしれない。
しかし、今それを考えてもしょうがないと思う。まだ残念ながら先の話だ。
俺はジュースを飲みに台所へと向かおうとした。
すると、今度は弥寿子ちゃんからルインが入ってきた。
「先輩、こんばんは。好きです。好きです。大好きです」
そうだ。弥寿子ちゃんもルインしてくるんだった。
俺は、また悩みの種が一つ増えたと思う。
ルインを二人の女の子をするということになる。
まだ二人は恋人ではないのだから、友達どうしとして、対応すればいいのかもしれない。友達であれば、そこまで気を使わないでいいのかもしれないと思う。
俺達は高校生なのだから、むしろ友達の間では気を使わずにやり取りをすべきなのだろう。
しかし、小由里ちゃんとは、いずれは恋人どうしになりたいと思っている。
そして、弥寿子ちゃんは俺に強い恋心を持っていて、俺も決して彼女のことは嫌いではなく、むしろ最近は彼女に心を動かされつつある。
その二人とルインをしていくのだ。
俺は今日、小由里ちゃんとルインをすることばかり考えて、彼女たち二人とすることになった時のことをよく考えていなかった。
今のところは、このまま続けていくしかないと思う。ただ、どちらかとの関係が恋人どうしにまで発展した場合は、もちろん改めて考える必要があると思う。
さて、返事だ。
どう書くか。それとも返事を出さないでおくか。
返事を全く出さないわけにはいかないだろう。でも「好き」って返すわけにもいかない。
そうだ、この「こんばんは」という言葉に対して返すことにしよう。そうすれば、彼女も納得してくれるに違いない。
そう思い、
「こんばんは」
と書いて送信した。
すると、すぐに、
「先輩、ありがとうございます」
「好きです。この返事だけでうれしいです」
と続けて返事がきた。
さすがに、ここのところには返事はできない。
弥寿子ちゃんの気持ちはわかるんだけど……。
高校一年生までは、ルイン自体ほとんどしなかった俺。女の子とすることに、あこがれていなかったわけではない。
まわりの人たちがしているという話も聞いていて、うらやましく思ったこともある。
出来たら楽しそうだなあ。と思ったこともある。
ただ、実際してみると、いろいろ気を使うことも多いなあ、と思った。
もちろん、やり取り自体は決して嫌いではないし、うれしいところもある。
弥寿子ちゃんの想いをこうして伝えられるのも、少しずつ慣れてきて、心のどこかでうれしいと思っている自分がいる。
いや、そう思ってはいけない、という自分もいる。その点は難しいところだ。
すると、
「おやすみなさい」
という言葉が入ってきた。
これに返事をするべきかは迷った。
しかし、これはあいさつなので、返事をしてもいいと思い、
「おやすみなさい」
と送信した。
その後すぐに、
「ありがとうございます。先輩、大好きです」
という返事が彼女からあった。
返事をしてよかったのかなあ、と一瞬思ったが、友達で後輩なんだから、これくらいいいだろう、と思い、自分を納得させた。
俺ももう少し弥寿子ちゃんにどう対応していくか考えていかないといけないなあ……。
そう思いながら、俺はジュースを飲みに台所へ向かった。
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