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第五十三話 小由里ちゃんへのお願い

せめて、メールもしくはルインのやり取りだけでもしたい。


今回、お出かけすることを断念した以上は、それだけでもお願いしたい。


そう思うのだが、小由里ちゃんにその想いは届くのだろうか……。


「ル、ルイン……」


彼女は少し赤くなっているようだ。


「だ、だめかな? ほ、ほら、友達だったらしている人も多いっていうから。それに、俺達って、昔、メールのやり取りは少ししてたじゃない。俺達は幼馴染で、せっかく仲直りしたんだし、こ、これからもよろしくということで」


彼女のそのかわいい顔を見ていると、どうしてもうまく言葉を出すことができない。しゃべっている内に恥ずかしくなってきてしまう。


「お願いだ。またやり取りをさせてくれ」


頭も下げる。


「あ、頭までは下げなくいいわよ」


彼女は手を振って言う。


「や、やり取りしてくれるとうれしいんだけど」


彼女はさらに顔を赤くしながら、


「い、いいわよ」


と、ささやくような声で恥ずかしそうに言った。


「いいの?」


「うん。いいよ」


俺はその返事を聞いて、心が沸き上がるような気持ちになった。


「あ、ありがとう」


俺は彼女の手をとって踊り出したい気持ちになる。


そして、そのまま抱きしめたいとも思った。


しかし、まだそこまでの関係ではないので、なんとか気持ちを抑える。


でもいつの日にかは、彼女と抱き合いたいと思う。


しばらくの間は、お互い恥ずかしがり合い、言葉も交わすことができなかった俺達……。


「そ、そう言えば、長い間やり取りをしていなかったから、お互いのメアドとルインを確認しとこう」


やっと言葉が出てきた。


「そ、そうね」


お互いの連絡先を確認し合う。これでいつでも連絡し合える態勢は整った。


それが終わると、もう昼休み終了五分前。


「じゃあ、よろしくね」


「うん。よろしく」


そう言い合って、俺達は教室に戻っていった。




その日の放課後。


「どうだった?」


帰り際の教室、優七郎が声をかけてくる。


「ちょっと長くなるけどいいかなあ」


「ああ。今日も部活だから、そこまでの時間はないけど」


「それでいいなら」


俺達は体育館に行き、その傍で話をし始めた。ここからサッカー部の部室は近い。


「それが、結局お出かけには誘えなかったんだ。せっかくお前にアドバイスをもらったのにな」


「そうか。残念だな」


「ごめんな」


「いや、別に謝ることじゃないからいいよ。でもなんでなんだ? お前自身が、あれほど誘いたいと思ってたはずなのに」


「それが、彼女の笑顔を見ている内に、俺が誘って、もしそれが嫌だったら、その笑顔が壊れちゃうんじゃないかと思って。俺、彼女がつらい気持ちになるのが一番嫌だから」


「まあお前の気持ちもわからないではないよ。でも、これからどうするんだ? まだ二年ちょっとはあるっていっても、今日みたいにうじうじしていたら、あっという時間なんて経ってしまうと思うぞ。それこそ何もできないまま、あっという間に卒業だぞ」


「それはわかってはいるんだけど。誘うってことがこんなに難しいものだとは思わなかった。お前はすんなり誘えたのか?」


「誰を?」


と言いつつ顔を赤らめ始める優七郎。


「またまた。林町さんとに決まってるじゃないの」


「あ、ああ。まあ、俺も初めて誘う時は緊張したなあ。言葉に詰まっちゃたりしたよ」


「お前でもそうだったのか?」


「う、うん、まあな。お前にはいろいろ言ったけど、実際のところ、俺も誘いの言葉を言うまでは時間がかかった。俺達の場合、既に相思相愛にはなっていたけど、その後も毎日俺のことを怒ってたんで、一緒に出かける、ってことは結構ハードルが高かったんだよ。俺達の場合、一緒に出かける、ってことは、デートするってことだからな。それを考えるだけで心が沸き立ってくるし、彼女の顔を見ているとかわいすぎて何も言えなくなるし、やっぱり難しいことだ。お前の場合とは違うところはあるけど、気持ちはよくわかる」


「でもハードルが高くても、お前はちゃんと誘うことができた」


「そうだな。誘うまでは結構時間がかかった。もう最後は「一緒に出かけたいというこの想い、届いてください」の一心だった。それが通ったということかな」


「彼女の方はそれを聞いて、どう反応したの?」


「最初はすごいびっくりしてた。こんなわたしとデートしていいの? と言ってた。本人は、俺と相思相愛になった後も、毎日俺のことを怒ってたんで、誘ってくれるとは思わなかったらしい。でも喜んでくれて、OKしてくれて、ホッとしたよ。それで、デートすることになったんだ」


「なるほど、お前達ラブラブカップルでも、初デートまで時間がかかったのか。あれだけ心が通じ合っているように思えるのに」


「やはり、当時の俺達は、そこまで心が通じ合っていなかったんだろうな。それは思うよ」


「でも今は毎日ラブラブでいいじゃないか」


こういう話になると、どうしても優七郎と鈴菜さんの仲睦まじい姿が思い出されてきて、ふき出しそうになってしまう。


「まあそうだな、って、俺達は友達、友達。恋人どうしじゃないんだよ」


さらに顔を赤くして手を振る優七郎。


「まあまあ、いつもアツアツでいいなあ」


「い、いや、ちょっと仲がいいだけだから。そりゃ、好きな人だけど」


ああ、うらやましい。まあでも、俺も小由里ちゃんとアツアツの関係になれたらいいなあ。


俺は優七郎を見ながらつくづくそう思う。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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