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第五十二話 小由里ちゃんへのお誘い

昼休みがきた。


いつものパンと牛乳の昼食を終え、小由里ちゃんがいる教室に向かう。


向かう前、優七郎には、


「応援してるぞ」


と声をかけられた。


「まあとにかく行ってくる」


そう俺は応えて自分の教室を後にした。


彼女の教室へ行ってみると、彼女の方も昼食は終えたようだ。本を読んでいる。


さて、彼女にどう声をかけるべきか。


教室の中に入るべきか、外で待つべきか、悩むところ。


そうしていると、彼女が立ち上がり、こちらへ向かってくる。


これはチャンスだと思い、俺は彼女に声をかけた。


「小由里ちゃん、ちょっと時間いい?」


「どうしたの?」


「話があるんだけど」


「話って?」


「ここじゃちょっと話しにくいんで、屋上にいってもいいかなあ?」


彼女はちょっと考えていたが、


「うん、別にいいよ」


と言ってくれた。


俺と小由里ちゃんは、屋上へと向かった。


まず、第一関門を突破。教室からの誘い出しがうまくいかなければ、始まらないので、これがうまくできたことにホッとする。


扉を開け、屋上に入った。


屋上には人がちらほらいるので、俺たちはなるべく人がいない方へ行く。


俺と小由里ちゃんは向き合った。


す、素敵だ。


こうして見ると小由里ちゃんは、また一段とかわいくなっている。


胸がドキドキして、言葉が出てこない。


「森海くん、どうしたの? 呼び出したりなんかして」


小由里ちゃんが聞いてくる。


「あ、あの……」


言葉がなかなかでてこない。彼女の顔が魅力的すぎて、心を奪われてしまう。


無言の時間が少しあった後、


「なにか困っていることでもあるの?」


と彼女が心配そうに言った。


困っている。小由里ちゃんが魅力的すぎて困っているんだ。


「そ、そういうわけじゃないんだけど」


「せっかく仲直りしたんだし、困っていることがあったら、力になるわ」


心配そうな顔になる彼女。


俺は、「一緒に出かけたい」という言葉を言おうとする。


ところが、その言葉を言うことができない。


まず、「一緒」の「い」という言葉から言うことができないのだ。


俺と小由里さんは幼馴染なんだ。だから、お出かけぐらいするのはあたり前なんだ。


と思う。


しかし……。


幼い頃は、異性というものを意識しなかったから、気軽に遊べた。小学校までの俺達だったら、俺が彼女に、「お出かけしよう」と言っても、幼馴染だから特に心に負担もなく通った話だろう。


もし断られたとしても、それで「振られた」とか「嫌われた」とか、そういうことにはならない。異性としての意識ではなく、友達という意識だからだ。


もちろん、親の同伴なしでいけるところには限りはあっただろうが、少なくとも、お誘い自体に心の負担は感じることはなかったに違いない。


でも今の俺達は、思春期の中にある。今は若い男と女だ。その二人が出かけるということは、デート以外のなにもでもない。デートをするということは、二人が恋人どうし、もしくはそれに近い関係でなくてはいけないはず。


小由里さんは、そういう存在なのか? 仲直りしたばかりの、まだ友達関係でしかないのに、このまま誘っていいのだろうか?


という思いが俺の心の中を占めていく。


「困っていることがあるわけじゃないんだ」


「それならいいんだけど」


小由里さんは、ホッとした表情になる。


「『力になる』って言ってくれてありがとう」


「幼馴染ですもの。森海ちゃんと幼い頃から一緒にいるんですもの。それくらいは言ってあたり前よ」


そう言うと彼女は、微笑み始める。


「そうだよな。幼馴染だよな」


彼女の笑顔は素敵だ。


でもここで、俺が彼女を誘って、彼女がここで断った場合、その笑顔もしぼんでしまうだろう。


それに、幼馴染ということを強調しているようにも思える。


この間の告白した時もそうだったが、まだ俺に対する恋というところまでは意識が行っていないということだろう。


やっぱり誘うのはまだ無理か……。


優七郎には申し訳ないが、お出かけに誘うのは、もう少し時間が必要だ。


それならば、せめてメールやルインを彼女と出来るようにしたい。そうでなくては、せっかくここまで来てもらった意味がない。


しかし、これもまた難しい。


どうしてそういうやり取りをしたいの? と言われたら、どうするか。


仲直りしたので、これからは、少しずつ親しくしていきたい。その為にそうしたやり取りをしたい。


こう言えば納得してくれるだろうか。


こういうやり取りは、恋人どうしでなくても、ある程度仲のいい人どうしだったら、している人は多いと思うので、納得はしやすいと思う。


ただ、もちろん、どういう内容のものを送るかということで、次は悩まなくてはいけないだろう。


それはでも、今考えてもしょうがないことだ。


今はとにかく、やり取りを出来るようにすることのみに全力を集中させなければならない。


「小由里ちゃん。ごめん。話って言うのは」


どうしても緊張してしまうが、言わなければならない。


一回深呼吸をする。


そして、


「メールのやり取りか、ルインのやり取りをまたしたいんだけど、どうかな?」


と一挙に言う。


俺としては、一生懸命力を込めて言ったつもりだ。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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