表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/104

第五十話 わたしのあこがれ(弥寿子サイド)

「ただいま」


わたしは今、森海先輩とのお出かけから帰ってきた。


手を洗うなどした後、リビングに入る。


「お帰りなさい。ずいぶん早かったわね。もう少し遅くなってもよかったのに」


お母さんがにやにやしながら言う。


「先輩が遅くなったらいけないっていうから」


「あら、しっかりしている先輩ね。でももしかしたら奥手なのかもしれないわ」


「お母さんたら……」


「こういう時は、弥寿子ちゃんの方からもっとアプローチした方がいいわよ」


「もう。別にいいでしょ」


気持ちはわかるのだが、ついつい口をとんがらせてしまう。


「今日の初デートを祝して、約束通り赤飯を炊いたわ」


食卓には、おいしそうな赤飯とおかずが並んでいる。いつもよりも豪華だ。


「ここまでしてくれなくてもいいのに」


「愛する娘が、大人への一歩を歩み出したんだもの。これくらいはしてあげないと」


「ちょっと恥ずかしいけど、ありがとう。お母さん」


「うんうん。じゃあ食べなさい」


「はーい」


わたしは、赤飯を食べ始める。おいしい。


一通り食べ終えると、そこからはお母さんの好奇心に満ちた質問の連続。


にやにやしながら聞いてくるから、恥ずかしくてたまらない。


いやあ、まいった。


「というわけで、今日は少し進んだかな。でも、まだ恋人には遠いかも」


「弥寿子ちゃんの想いは充分とどいたんじゃないかな」


「そうかなあ。そうだといいんだけど」


「この調子でいけば、夏前にはうちに来てくれるかな。娘をください、って言うかもね。そうしたら婚約ということになって、お互いが十八歳になったら結婚することになるわね。夢が膨らんでくるなあ……」


お母さんは、自分の世界に入ってしまっているようだ。


「そうなるといいんだけど、って、気が早すぎるわよ。まだまだこれから。でも少しあせっちゃうところはある。このままじゃ恋人どうしになれるのはいつになるんだろう、って」


それを聞いたお母さんは、まじめな顔になった。


「あせっちゃだめよ。とにかく弥寿子ちゃんの想いをその先輩に伝え続けなさい。そうすれば、きっといい方向になっていくわ」


「そうね。これからも努力していくわ」


「うん。それでいきなさい」


「じゃあ、そろそろ自分の部屋に行くね」


「もっと聞きたいのに……」


またにやにやした顔に戻っている。


「これでおしまい」


わたしは、なんとかお母さんのところから脱出して、自分の部屋に向かった。


わたしのこと応援してくれているのはうれしけど、ちょっと先輩との関係に興味を持ちすぎな気がする。やれやれ。


夜、先輩のことを思い出しながら、もの想いにふけっていた。


キスしたかったけど、それができるのは、まだまだ先の話かなあ……。


そう思っていると、瑠里子ちゃんからルインが入ってきた。


「今日どうだった?」


「うん。まあまあかな」


「まあまあ。ってことはあまり進展なし?」


「そうね。残念だけど」


「話が聞きたいから電話していい?」


「うん。いいよ」


彼女から電話がかかってくる。


「それで、どこまで進んだの? キスまでいった?」


「キ、キスだなんて、手をつないだくらいよ」


「手をつなぐのは、前からしてるって言ってたもんね。そうか。キスにあこがれているって前々から言ってたから、期待してたんだけどな」


「もちろん先輩とキスしたいと思ったけど、難しいよ」


「まあ、またチャンスはあると思うよ」


「そうだといいけど。ところで、そういう瑠里子ちゃんはそこまで進んでいるの?」


「わ、わたし? ごめん。実はそこまでいっていないんだ。人のことは言えないわね」


「そうなの? 瑠里子ちゃんだったら、その先までいってるんだと思ってた」


「まだ付き合い出してからそんなに経ってないし……ってそれは言い訳だよね。もちろん想いが深くなれば時間は関係なくなると思うけど、彼氏が結構奥手で、わたしが一生懸命誘惑してるのに、なかなかその気になってくれない。「好き」とは言ってくれるんだけど、なんでそれが行動にでないのかなあ、と思う。もう、なんでなの、って感じ」


「瑠里子ちゃんも苦労しているんだ」


「わたしも初めて男の子と付き合って、舞い上がっていたけど。現実は難しいものね。だけど、普通の男の子だったらもう少し積極的だと思うんだけどな」


「最初から積極的すぎる男の子も嫌な気がするけど、そうじゃない男の子も扱いづらいわよね」


「わかるでしょ、わたしの気持ち」


「うんうん。わかるわかる」


「で、わたしの話はいいから。弥寿子ちゃんも先輩を誘惑したんでしょ」


「うん。だけど、浜水先輩のことがどうしても頭にあるみたいで」


「それは困ったものね。こんなかわいい子が誘惑しているっていうのに」


「ちょっと自信がなくなってきちゃったところはあるんだ」


「何言ってるの。これくらいで。まだ先輩とは始まったばっかりでしょ」


「それはそうだけど」


「これからも先輩を誘ってお出かけして、どんどん誘惑していくといいわ。わたしだって、今はうまくいっていないけど、彼を誘惑し続けていれば、その内、絶対うまくいくと信じてる。だから弥寿子ちゃんも希望を持って」


「ありがとう」


「じゃあ、またね。おやすみ」


「おやすみ」


瑠里子ちゃんは、わたしよりずっと進んでいると思ったんだけど、違ったんだ。


彼女、外からはそう見えないけど、結構一途なところがある。それでも難しいところがあるんだな。


わたしも、もっと努力しなきゃ。瑠里子ちゃんも一生懸命努力しているんだから。


そうだ。ルインしておかなくちゃ。まだまだ先輩に送るということを思うだけでドキドキしちゃうし、返事をしなくてもいいですよ、と言ったのに、返事がなかったらどうしょうと思っちゃう。でも、マメに送ることが大事よね。


わたしは、今日、先輩に対して書く言葉について考え始めた。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


と思っていただきましたら、


下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。


ブックマークもいただけるとうれしいです。


よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ