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第四十三話 お出かけ前夜 (弥寿子サイド)

明日は、先輩と初めてのお出かけ。わたしからすると、デート。


やだあ、デートっていうと、恥ずかしくなってしまう。


明日は、先輩とどこまで進むことができるのかな。キスまでいけるといいんだけど、ってそれは、まだ無理だよね。


まあ初めてだし、期待はしない方がいいとは思うけど。


でも、とにかくうれしくてしょうがない。にやにやが止まらない。


晩ご飯をお母さんと二人で食べていると、お母さんが、


「あら、弥寿子ちゃんどうしたの? いいことあった?」


と聞いてくる。


「いや、別に。なんでもないけど」


努めて平静を装うとするが、どうも口元がコントロールできない。


「そんなことないでしょ。こんなにうれしそうにしている弥寿子ちゃんを見るのは初めてだわ」


「今までだって、うれしいことぐらいあったわ」


「もちろんその表情もちゃんと覚えている。でも今日は特にうれしそうね。ねえ、なにがあったの」


「いや、なんでもないって」


「こんなにうれしいっていうことは、なんだろう?」


「だから別に普通だって」


「うーん、あ、そうか。弥寿子ちゃん、もしかして、デートするんじゃない?」


一挙に恥ずかしくなってきた。


わたしは、はしを置いてうつむく。


お母さんは、


「やっぱりそうなのね」


と言ってにっこりした。


「ち、違うわよ。デートじゃなくて、明日、映画を一緒に見にいくだけ」


恥ずかしいあまり、ついついデートとは違うなんて言ってしまった。


何を言っているんだろう。先輩にはそう言うようなことは言ったけど、それは先輩を説得する為。わたしとしてはデートのつもりでいるのに。


わたしがそう言うと、お母さんは、さらににやにやして、


「弥寿子ちゃん、それは普通デートと言うんじゃない? 別に恥ずかしがらなくてもいいのよ」


と言ってくる。


「そ、そうかもしれない」


お母さんは、やっぱりわたしのことをよくわかっている。


「で、相手の子はどんな子なの?」


「部の先輩。優しくて頼りがいのある人」


「よかったわね。きっと素敵な人なのね。そういう人とデ-トできるなんて。お母さんもうれしいわ。そのうち、家に連れてきなさいね。大歓迎するから」


「それはちょっと飛躍すぎかな」


「だって、デートするってことは恋人だってことでしょ。恋人ってことは、ゆくゆくはわたしたちの義理の息子になるんだし。ああ、今からいろいろ準備しなきゃね」


義理の息子になるということは、わたしと先輩が結婚するということだ。本当にそうなればいいんだけど。


それにしてもお母さん、うきうきしている。


「ぎ、義理の息子だなんて……。わたしたち、まだただの先輩後輩でしかないのに」


「そうなんだ。ちょっと残念ね。もうあと少しで恋人どうしになるくらい進んでいたんだと思ったんだけど」


「先輩、幼馴染の人のことが好きみたいで、なかなかわたしのことを振り向いてくれないの。それで、映画に誘うことにしたの」


「なるほどね。幼馴染の子がライバルなんだ。これはつらいわね」


お母さんは、まじめな顔になった。


「もちろん、わたしとしてはデートのつもり。楽しい時間を過ごして少しでも先輩の心がわたしに向けばいいな、と思ってる」


「その子と幼馴染の子が今どういう関係かわからないけど、その仲は普通に考えれば固いものだと思う。過ごした年数も、圧倒的に長いし。その子を弥寿子ちゃんのことを夢中にさせるには、時間がかかると思った方がいい」


「やっぱりそうよね。先輩、わたしと一緒にいる時も、その人のことを思っている時があるようだから」


「とにかく無理はしちゃだめよ。明日のデートですぐ勝負に決めに行ってはだめ。あんまりしつこくせまると、嫌がっちゃうものだから」


「お父さんもそうだったの?」


「そうよ。お父さんは、特に好きな人はいなかったので、弥寿子ちゃんの場合とは違うけど、奥手な人で。お母さんがしつこくせまりすぎたせいで、一回仲違いしちゃったの。その時は、もうこの人との関係は終わりだ、と思って大泣きしたわ」


「でも仲直りできた」


「そう。わたしも謝ったんだけど、お父さんも言い過ぎた、って言ってくれて。でも、その後もなかなかうまくいかなくて。もとの関係に修復するのは、結構時間がかかったわ」


「へーえ、そうだったんだ」


お父さんとお母さんのこういう話を聞くのは初めて。


二人は今でも仲がいいが、どちらかと言うと、お母さんの方がお父さんにアプローチをかけていることは多いと思っていた。交際していた時からそうだったのね。


「だから、じっくりと、その子の心をつかんでいくのよ。時には、けんかとかもあるかもしれないけど、弥寿子ちゃんが、その子に一途な心で行くことが大切よ」


「ありがとう。お母さん。わたし、一途な心でいくわ。それで、ゆくゆくは恋人どうしになりたい」


「じゃあ、明日は赤飯を焚いておこうか」


「なんで?」


「デートして、恋人どうしへの第一歩を歩み出した記念ということで。まあ一足飛びに恋人どうしになれたら、もっと祝いがいがあるけどね」


またにやにやしだすお母さん。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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