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第四十二話 お出かけ前夜

家に帰り、晩ご飯を作る。


食材は、帰りにいつも行っているスーパーで買った。


今日は焼肉だ。ごはんと野菜も用意をしてある。


いつものことで、一人で作り、食べることには慣れている。しかし、女の子と一緒に食べることに対するあこがれは、この頃強くなってきた。


そして、女の子に料理を作ってもらうことについても、あこがれてきている。


そこで思うのは弥寿子ちゃんのこと。今一生懸命、料理の練習をしているということだ。


料理が上達してきたら、彼女に作ってもらうのもいいなあ、と思う。


いや、俺は何を言っているんだ。小由里ちゃんがいるのに、と思い直す。


そう言えば、小由里ちゃんは結構料理がうまいと聞いている。


彼女の料理は残念ながらまだ食べたことはない。もっと仲が良くなったら、彼女の手料理を食べたいと思っている。


今の状態ではそれがいつになるかわからないが、あこがれは持ち続けていきたい。


それにしても、弥寿子ちゃんの提案は、時間が経てば経つほど俺の心の中に染み渡ってくる。


女の子と出かける、どうしてもその言葉の響きに魅力を感じてしまう。


小由里ちゃんには申し訳ないのだが、その魅力を抑えて行くのはなかなか難しい。


ただ、それでも弥寿子ちゃんに心が傾斜していかないようにしたいとは思っている。


部活動の一環、友達としての行動だ。


それはきちんと心に定めておかなければならない。


優七郎には、「明日居駒さんと出かける」とだけルインで送った。


すると、返信がきて、


「ずいぶん急な話だな」


とびっくりした様子だった。


その後、少し電話で話をしたが、「彼女とは、映画の感想を言い合うのが中心」という話をしたこともあって、特に反対はしなかった。


ただ最後に、


「小由里ちゃんが本命なことだけは忘れない方がいい」


と言っていた。


この言葉は肝に命じておかなければならないだろう。




さて、もう十二時近くになり、俺は寝ようとしていた。


一通り、ネットでデートのことについて調べた。デ-トをするわけじゃないのに、デートのことを調べるのも、なんか違う気はした。しかし、女の子と行動することには違いないのだから、デ-トの仕方を調べる、ということでいいと思う。


とはいうものの、今日の今日だ。映画館以外に行きたい場所もあるわけじゃない。その他のところに行くとしても、その近くにあるレストランか喫茶店に入るぐらいしかなさそうだ。身だしなみのことも書いてはあったが、まあ、普段来ている服のまま行くしかないだろう。


そう思っていると、弥寿子ちゃんからルインが入っているのに気づいた。


こ、これは……。


「好きです、先輩。明日、よろしくお願いします」


と、そこには書いてあった。


こういうルインが来ることは、想像していなかったわけじゃないけど、やっぱり来ちゃったか……。


俺は恥ずかしい気持ちに襲われた。


「好き」ということを改めて書かれると、どうしても、うれしい気持ちになってしまうものだ。


しかし、返事を出すとなると話は別だ。


俺の方から「好きです」という返事をすることはできない。好意はだんだん大きくなってきているけれども、「好き」というところまでは到達していない。俺としては、恋人に対して「好き」と言う言葉を使いたい。


ではどういう言葉で返すのか。他の言葉が思いつかない。


俺は、返事ができる内容だったら返そうと思っていた。


例えば、アニメの話とか。漫画の話でももちろんいい。いつも話しているような内容であればこちらも返しやすい。


しかし、これでは返事のしようがない。「好き」と書いているのに全然関係のないことを書くわけにはいかない。


どうしたものか、と思った。


しかし、彼女の方も俺の反応を予想していたのだと思う。あらかじめ「返事は別にいいですから」と言っていた。


ということは、こちらからは、別に返事を出さなくてもいいということだ。


ならば、このままでいいか、と思う。


彼女の好意に甘える形で、そのまま返事をしないことにした。


まあ、万が一それで怒っても、明日会うんだし、そこで謝ればいいや。


そう思っていると、小由里ちゃんの顔が浮かんできた。


そうだ。仲直りしたんだから、小由里ちゃんにメールぐらいはしてもいいのでは。


しかし、メールをしたのはもう二年前が最後。中学校二年生以来していないままだ。


今いきなりメールしたりしたら、迷惑じゃないかなあ。それでまた俺のことが嫌いになっても困るしなあ。でもせっかく連絡先を知っているんだし、出したっていいのでは……。


つくづくこの二年という時間の重さを感じてくる。


あの時、面と向かって彼女に謝ることができなくても、メールで謝っていればよかったんだと思う。そうすれば、彼女の気持ちも変わったかもしれない。少なくとも、こんなに長い間、疎遠になることはなかったと思う。


なんでそんなことに気が付かなかったんだろう。俺もこういうところが情けないというか。


でもこれからは活用していきたい。いずれは、「好きです」というメールも送りたい気がする。


でも、今すぐというわけにはいかない。


一回彼女に確認した方がいいんだろうなあ。OKしてくれるかどうかはわからない。まあ、断る理由はないと思っているから、大丈夫だと思っているけど。いずれにしても、それからにしよう。


俺は、今日彼女にメールを送ることはあきらめることにした。


でも近いうちに必ず送りたい。そう思う。


とにかく明日、弥寿子ちゃんとの部活動だ。


そう思って俺は眠っていくのだった。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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