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第三十七話 あいさつからの関係

家に帰ってきた。


心の疲れがだんだん大きくなってきた。ベッドにうつ伏せになる。


今日のことはどう言ったらいいんだろう。


一番の目的だった仲直りだけは成功したと言える。


しかし、もう一つの大きな目的である告白はうまくいかなかった。


これは、結構つらい。どんどんそれはダメージとなってくる。


なぜ、


「好きです。付き合ってください」


と言えなかったんだろう。


ただ、今日の彼女の話からすると、どっちにしても無理だった可能性がある。


それでも言うべきだったのだろうか。


彼女は、


「今持っている好きという気持ちが恋に変わるようだったら、わたしの方からその想いを伝えるようにしたいと思っている」


と言ってくれた。


しかし、逆に俺のことをどんどん嫌いになっていく可能性だってある。


今日、小由里ちゃんに言われて思ったのだが、俺は確かに弥寿子ちゃんに少しずつ想いが傾き始めている。


小由里ちゃんは、


「二人の距離はだんだん近づいているんだと思う」


と言っていた。俺は彼女の前では違うと言っていたけど、そうではないと思う自分がいる。


小由里ちゃんは、そういったところを見て、俺に対する気持ちを強くしていくのを、彼女に遠慮している気がする。


考えすぎかもしれない。


しかし、昔から彼女は、人を思いやる気持ちが強い子だ。


彼女の気持ちに大きな影響があると言えると思う。


だとしたら、俺はこれからどうすればいいのか。


弥寿子ちゃんのことを、これを気にすっぱりと縁を切るか。


いや、そんなことはできない。彼女だって、俺のことを想ってくれている。


悲しむ姿を想像するだけでもつらい。


俺にとっても、この一か月近くの時間は、決して短いものではない。


今、彼女との関係がなくなったら、俺の方も空虚感を覚えるに違いない。


小由里ちゃんとの関係から、彼女とのおしゃべりを、楽しいものと思ってはいけない、と自分に言い聞かせているところはある。実際、最初は、面倒だと思っているところがあった。


でもいつの間にか待ち望んでいることも多くなっている。それだけ楽しい時だと思っているということだろう。


とはいえ、このままこの関係を続けていいものだろうか。


小由里ちゃんのことを考えれば、今すぐではなくても、いずれ関係は終わらせる方向に行くべきなんだろう。


しかし、心のどこかで、弥寿子ちゃんとの関係をずっと継続させていきたいと思っている自分がいる。


後輩・友達として今以上の関係にはしない。今の俺の選択肢はこれしかないのではないかと思う。


それにしても、こういうことで悩むことになろうとは思わなかった。


高校一年生までは。女の子とほとんど縁のなかった俺。


唯一と言っていい幼馴染の小由里ちゃんには嫌われて疎遠になったまま。


それ以来女の子に興味を持たないでいこうと思ってきた。高校二年生になってもそうしていこうと思っていた矢先……。


優七郎と鈴菜さんの仲睦まじい光景。これが俺の気持ちを百八十度変えた。


彼女がほしくてたまらなくなった。


でも誰だっていいわけじゃない。


今は疎遠になっているけど、仲直りして、小由里ちゃんと彼女になりたいと思った。


しかし、そこからが俺の思っていることとは、ずいぶん違ってきた。


モテるわけない、と思ってきたのに、後輩の弥寿子ちゃんが告白してきたのだ。


小由里ちゃんに告白する前に告白されたので、最初はいい気持ちはしなかった。でも関係は少しずつ深まり始めている。


そして、裕子先輩も俺への好意を強めつつある、俺に恋するのも時間の問題かもしれない。


俺のうぬぼれの可能性はないとはいえないが、まず間違いなさそう。


もちろん、今は誰とも付き合っていない。


でも誰かを選んだ場合、その他の人との関係をどうするのか。それが大きな問題となってくる。ちょっと前までは想像もつかなかった悩みだ。


もちろん小由里ちゃんを選べばいいのだろうが、俺は彼女との関係をこのまま進めていっていいのだろうかという気持ちがある。


彼女を恋人どうしになりたいと思っている一方で、幼馴染としての関係を維持したい、弥寿子ちゃんの悲しむ顔は見たくない、という思いがどうしても心の中にある。


女の子に好意を寄せられる、というのはうれしいことだと思っていた。実際うれしいことには違いない。


しかし、このままいくと三角関係どころか四角関係になってしまうかもしれない。


悩みの方がはるかに大きくなりそうな気がする。


今でさえこの三人もことで悩んできているのに、対応できるものだろうか。


優七郎がうらやましい。


鈴菜さん一筋だ。女の子に人気が結構あるのに、他の女の子には目もくれない。


俺も本来ああいう風になるはずだった。


鈴菜さんの方も優七郎に一途なのが大きいだろう。


俺と小由里ちゃんも、そういう関係になるはずだった。


幼馴染だったのだから、できないことはなかったと思う。


でも俺の対応のまずさで、俺は優七郎みたいには今のところなれていない。


今からそういう関係を構築し直すしかないのだけれど……。


とにかく、今は、今までの生活を維持するしかなさそうだ。


弥寿子ちゃんとは、親しい後輩・友達の関係として対応していこう。


裕子先輩とも今の関係を維持。


小由里ちゃんとは、あいさつを朝必ずすることから少しずつ関係を深めていく。


うまくいくかはわからないけど、これで対応していくしかないと思う。


とにかく小由里ちゃんとは、少しずつ、恋人どうしになる為の道を歩んでいきたい。


俺はそう思うと、ジュースを飲む為に台所へ向かった。

「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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