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第三十三話 森海ちゃんとの関係 (小由里サイド)

森海ちゃんは、今まで、彼女がいた様子はない。


中学校三年生の時も、高校一年生の時も、森海ちゃんに彼女がいるという、うわさは聞かなかった。それでホッとしていた自分がいる。


「嫌い」って言った相手なのに、なぜ彼のことをきにするんだろう。


やっぱり彼のことが好きなんだ、と思う。


でも、あの時のことは、心の傷として残っている。そんなことを思わずに彼の胸に飛び込んでいければいいんだけど。


それでも、ようやく心の傷は癒されてはきているけど、今のわたしから声をかけていくのは、まだ無理。


鈴菜ちゃんも、「これはまず海島くんが声をかけるのを待った方がよさそうね」と言っていたし……。


そういった矢先に……。


森海ちゃんが、女の子と手をつないでいたのだ。


わたしにとっては、驚天動地の出来事だった。


幼い頃以来、二人で手をつないだことなんてなかったのに。


相手は、わたしたちの中学校の後輩で、居駒さんという名前。


わたしは彼女のことは知らない。


でも結構かわいい子。モテそうだ。


森海ちゃんも、彼女のことが好きになってきているのだろうか。


そう思うと、心がどんどん熱くなってくる。いつもは穏やかなわたしの心が、制御できなくなっている。


どうして森海ちゃんは、わたしの嫌がることをするんだろう。せっかくもう少しで心の傷が癒えたかもしれないのに。


彼に対して、「嫌い」という気持ちが高まってくる。


これじゃいけない、という気持ちもある。「嫌い」って言ってしまったら。また彼との距離が遠くなってしまう。


そして、彼と同じ学校にいる意味が、これじゃなくなってしまう。


しかし、「嫌い」という感情を抑えることはできなかった。


そのまま「嫌い」という言葉を言ってしまうわたし。


だけど、その時、彼のこと好きなはずなのに、それでいいの、という気持ちが突然湧き上がってきた。


「好き」という言葉は、今は、はっきりとは言えない。「嫌い」という感情が強すぎる。でもこの複雑な気持ちは理解してほしい。


わたしは、なんとか「好き」という言葉を「嫌い」と「嫌い」の間にはさんだ。これが今のわたしの限界。


森海ちゃんがどう思ったか、それを考える余裕はなかった。


しかし、それから家に帰ってからも、自分の感情はなかなかコントロールできなかった。


わたしだって、森海ちゃんと手をつなぎたい、それなのにどうして後輩の人と……。


そう思うと、胸が張り裂けるような思い。


森海ちゃんがどんどん遠くなっていく……。


そう思わざるをえない。


気分を変えようと思って、ピアノを演奏し始める。


幼い頃は、ピアノ教室の先生に習っていた。そこまで好きというわけではなかったが、今でも趣味として、時々演奏をしている。


アニソンからクラシックまで、いろいろレパートリーを持っている。


いつもはつらいことがあっても、演奏していると忘れてしまうのだが、今日はうまくいかない。


どうしちゃったの、わたし。いつもはピアノがあれば息抜きでいるのに……。


翌日、心はまだうまくコントロールできないまま。


そんな中、部活がないので、家路につき、公園の入り口に差しかかった。


するとそこには。


森海ちゃん、森海ちゃんがいる。


わたしは、パニックを起こしてしまった。


なんで、ここにいるんだろう。まさかわたしをここで待っていたのでは。


彼は、わたしの前に出るなり、


「小由里ちゃん、は、話があるんだ」


と言う。


何を言おうとしているんだろう、と思った。しかし、その時には、もうこの場所を離れようという思いがあふれてきた。


自分でもなんでだろうと思う。


彼の言葉を聞くのがそんなに嫌なのか。


そんなことはない。わたしだって彼の声は聞きたい。聞かなければなにも始まらない。


しかし、わたしの心は今日もコントロールできない。


わたしの前で、手をつないでいた人の言うことなんて聞けない、そういう気持ちがどうしても優勢になってしまう。


結局、彼の言葉を聞かないまま走り去ってしまった。


帰ってからわたしは、猛烈な後悔に襲われた。


彼は、多分わたしと仲直りをしたかったはず。それ以外のことは考えにくい。


なのに、わたしは、聞く耳もたず、という対応を取ってしまった。


いくら彼につれなくされたとは言っても、話を聞かないのは、やっぱりよくないと思う。


でもまだ彼に対する気持ちに整理はついていない。


好きな男の子が、他の女の子と仲良くする姿を見せられて、何も感じない方がめずらしいと思う。


とは言ってもこのままじゃいけない。


明日また言ってくるかどうかはわからないけど、もし、言ってくるようだったら、今度はちゃんと聞かなくちゃ。


でも、もし、わたしへの告白だったらどうしょう。


その可能性もないことはない。


いや森海ちゃんのことだから、それはないか。仲直りしたい、って言うだけだろう。


それでも告白される可能性はある、対応は考えなければならない。


今は、もし、告白されたとしても、恋人としては難しいと思う。幼馴染という意識がどうしても強いし、わたしの心自体も、まだそこまではいっていない。


好きなのは間違いない。でも告白するなら、もう少し後にしてほしい。


とにかく明日。


わたしは、晩ご飯作りの手伝いをするべく、台所へと向かった。

「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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